カメリアちゃんと金剛力士像
カメリアちゃんとは、金髪美少女魔法使いの中学一年生のアニメキャラです。アニメ『魔女っ子ウィッチーズ』にて8人目の魔法使いとして出演中です。
「えー。なので、ここの数式をこのイコールのあとに代入することによってXの値が導き出されることは、2年生の時にやったのを覚えてますか?」
「覚えてませーん」
隆と一花のクラスの4組の担任が担当している数学の時間だ。
前回の一花のパーフェクトフォローが炸裂した授業は、一年を通しての数学の進め方と担任への質問で終わってしまったので、今日は2年の時にどこまで進んだかのチェックを兼ねて、復習しながらの授業となっている。しかし一部の頭の悪いアピールをしている生徒のおかげで、亀の歩み寄りも遅い授業ペースとなっている。
今年は受験生として自覚がある隆は、そんなアホな生徒に構っているよりも、授業を進めたほうが効率的だと思っているのだが、あえて黙っている。
今日も前回のように、教卓の隅っこにはカメリアちゃんが可愛らしく立っているのだが、チロチロとそのカメリアちゃんを視界に入れながら授業を進めている担任の姿は、『男』らしいよりも『オタク』らしかった。まさにオタクの鏡である。
そんな中、隆は一つの決意を胸に授業を受けていた。
今、隆のカバンの中には、前にクリスマスプレゼントを選んだ変な店で買った金剛力士像のフィギュア(1/14サイズ)が眠っていた。さすがあの店というべきなのだろうか、お値段なんと500円!! しかもちゃんと金色の塗装がしてあるのです。もう意味がわかりません。
そんなフィギュアをどうするのか?
もうわかりますよね。
そのタイミングを伺いながら授業に臨んでいるのです。
しかし待てども待てども、担任がカメリアちゃんから目を離す隙がありません。
ほとんど秒間でチロチロ確認しているので、入れ替えるまでの隙がありません。
どうしたらいいものかと考えていると、ついにチャンスがやってきました。
「せんせー。俺の問題だけ何回やっても同じ答えにならないんスけどー」
「そんなバカな。どこかで計算ミスしてるんじゃないですか?」
そう言って、教卓を離れてその生徒の元へと歩み寄る担任。
今がチャンスとばかりに、机の横にかけているカバンに手を突っ込み、中から金剛力士像を手探りで取り出すと、瞬時にカメリアちゃんを素手で掴み取り、金剛力士像とチェンジ!
その瞬間、その光景を見ていたクラスメイト達の何人かが吹き出した。
一仕事終えたかのような顔でふぅーと息をついて横を見ると、隣の席の一花が何か言いたそうな顔で隆を見ていた。
「・・・何?」
「相沢君。気を付けたほうがいいわよ・・・」
「何に?」
「じきに分かるわ」
なにやら意味深な言葉を残して前を向く一花。
隆は不思議に思いつつも、何事もなかったかのように振舞うために、ノートに書き込みを始めた。
「やっぱり計算間違いじゃないですか。みなさんも計算間違えには気を付けてくださいねー。ケアレスミス一つで点数に差が・・・」
教卓に戻ってきた担任が、カメリアちゃんが金色のいかつい顔をしたおじさんに変わっているのに気づいて動きを止めた。
「ここにカメリアちゃんいませんでしたか?」
「さっき出ていった」
「俺最初から見てないぞ?」
「愛想尽かされたんじゃねーの?」
「小さいおじさんが来てたの見たよー」
クラスメイトが次々に適当なことを言う。しかしそんな冗談は担任の耳に届いていなかったようで、顔面蒼白で、今にも倒れそうな顔で教卓に両手をついた。もともと儚げなイメージがあったので、顔面蒼白ということばがよく似合っていた。
「あ、あ、あ・・・僕のカメリアちゃんが・・・皆さん知りませんか・・・僕はカメリアちゃんが居ないと・・・ううぅ・・・」
今にも泣き出しそうな担任。ざわざわと小声で会話をするクラスメイト達。
「おい。なんで泣いてるんだ?」
「あれだよ。嫁がいなくなったら泣くだろよ」
「そんなもんなのかよ」
「ちょっと泣いてる姿もかっこよくない?」
「私何かに目覚めそう・・・」
口々に言うクラスメイト達。
さすがの隆も、罪悪感を感じてしまったらしく、一花に声をかける。
「委員長、なんとかならないのか?」
「だから気を付けてねって言ったじゃないの」
「まさかこんなことになるなんて思わねぇだろ」
「私は予測範囲内よ?」
「いいから助けてくれ」
「はいはい。貸し一つね。じゃあカメリアちゃんを貸して」
一花に貸しを作るのは気が引けたが、背に腹は変えられないので担任に見つからないように鞄の中からカメリアちゃんを取り出すと、バレないように一花に渡す隆。
「先生」
「はい・・・」
「カメリアちゃんならさっき先生が教卓にぶつかったときに私の机の上に落ちてきましたよ」
そう言って、嘘全開で担任にカメリアちゃんを差し出す一花。
蒼白だった担任の顔がみるみる血気を取り戻していき、パァっと明るい笑顔が生まれた。
「カメリアちゃん! あぁ市原さん! ありがとうございます! 市原さんはカメリアちゃんの命の恩人です!」
カメリアちゃんを一花の手から受け取る瞬間に、一花が隆にアイコンタクトを送った。その意をキチンと受け取った隆が、教卓の上に置かれていた金剛力士像のフィギュアを回収した。
「あぁ、愛しのカメリアちゃん! 落ちたことにも気づかないなんて僕はとんだお馬鹿さんだよ!」
「先生。自分をあまり責めないでください。誰でもミスはするものです。カメリアちゃんならそう言うと思います」
「市原さん・・・。そうですよね。僕頑張ります! ・・・アレ? そういえばここに金色のおっさんがいたような・・・」
「「「「気のせいです!」」」」
クラスメイト全員でが声をそろえて言った。初めてクラスの空気が一つになった瞬間だった。
その後、担任に何かあった場合には一花にお願いをするというのが、4組での裏ルールとなった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
感想とかあれば書いていただけると発光してきます。
前書きで、カメリアちゃんの説明をいれてます。
もちろん空想のアニメです。
風邪はほとんど治りました。ご迷惑並びにご心配をおかけして申し訳ございません。
まさか緊急時用ストックを使うことになるとは思いませんでした。
皆様も風邪に気を付けてくださいね。
では次回もお楽しみに!