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友里恵と黒タイツ(後編)

ロッテリアで友好を深めていた隆と名波と一花と友里恵。拓馬はその様子を見ながらドギマギしていた。

拓馬自身がユリのファンな訳ではないのだが、それなりに応援していた有名人が目の前に現れると、普段使っていない頭が更に使い物にならないレベルまで真っ白になってしまい、もうどうしようもなかった。

拓馬は頭の中で色々と考えていた。


①サインをもらう

しかしサインをもらっても、俊哉に渡すときに何て言って渡せばいいのか?

『これ途中で拾ったんだー』・・・これはダメだ。意味がわからない。

『たまたまサイン色紙だけ見つけてさー』・・・どこに行けば売ってるんだよ。

『実は本人と知り合いの子がいてさー』・・・・・・これが一番ダメだろ。


②握手してもらう

これも別にファンでもない自分がしてもらったところで大したことがない。


③大好きな黒タイツトークで盛り上がる。

これが一番ダメだろ。


「・・・ん? 黒タイツ?」


ふと気がついてお誕生日席ならぬ、即席の5人目の椅子に腰掛けている友里恵の足を見ようとして、机の下へとからだを潜り込ませる。


「きゃっ!」

「ちょっと!」

「拓馬!」


友里恵、一花、名波がそれぞれ拓馬へと悲鳴を上げた。それを見た向かいの席の隆が、机の下から拓馬を蹴り付ける。ケガをしないように、つま先ではなく足の裏で頭を蹴っています。

そのまま机の下に顔を出して、拓馬へと声をかける。


「いてっ! 何するんだよ!」

「それはこっちのセリフだ! お前こそ何してんだよ!」

「いや、ユリちゃんって黒タイツ履いてたかなぁって思って」

「はぁ・・・こんな時にまで黒タイツかよ・・・お前がユリだって認識出来たんならそりゃ黒タイツ履いてるにきま、って・・・アレ?」


拓馬にスカートの中を覗かれたと思って立ち上がっている友里恵の足を見た隆は驚愕した。

友里恵は黒タイツを履いていなかったのである。

これは一大事だと思い、そのまま机の下に避難している拓馬と一緒に隣の机へと避難する。

そして小声での作戦会議が開かれた。


「おい。ユリのやつ履いてねーぞ」

「お、俺、今度こそ恋に落ちたのかなぁ?」

「そんなわけあるか。ってゆーか芸能人はやめておけ。いろいろとめんどくさいぞ」

「大丈夫。俺の理想のタイプは『黒タイツの似合う人』だから」

「俺にもそんな時代があったよ。好きなタイプは『大人しくて疲れない人』だったけど、今じゃ名波と付き合ってるからな」

「つまり理想と現実は違うと」

「そーゆーことだ」

「二人で何コソコソしてるの?」


急に席を離れた二人が気になったのか、名波が拓馬と隆の元へとやってきた。


「なんでもねぇよ。大人しく向こうでガールズトークでもしてろ」

「なにそれー。委員長も友里恵ちゃんも待ってるよ?」


そう言われて、拓馬と隆が向こうの二人のほうを見ると、笑顔で手を振っている友里恵と真剣な眼差しで拓馬を見つめる一花の姿があった。

どうやら二人ともさっきのことは気にしてないようです。


「さっきのことなら大丈夫。ちゃんと私が説明しておいたから」

「なんて説明したんだ?」

「拓馬が黒タイツフェチだって話したら、友里恵ちゃんも納得してくれたよ」


・・・アウトですね。このあとに待っているのは、友里恵から拓馬への尋問ショーですね。

少し重い空気を纏った拓馬と隆が名波に引っ張られて席へ戻ると、さっそく予想していたことが始まった。


「木下君ってさ、黒タイツフェチなんだって? どこに萌えるの?」

「こう足首がキュッっとしてるところとか、太ももが細い人なんか見るとちょっグッっと来るかな」

「要は足の細い人が好きってこと?」

「うーん・・・それとはまたちょっと違うんだよなー。なんていうの? 黒タイツを履いてるだけで10点満点中3点はあげられるかんじ?」

「へぇー。最近見た一番の黒タイツの足はどんなの?」

「最近だとやっぱり名波の足が一番かなー」


拓馬自身もびっくりするぐらい、黒タイツの話がスムーズに進んでいます。愛の力ですね。ベクトルが少々違いますが。

そして名波の足を見ようとした友里恵が机の下にからだを入れようとしたが、寸前で一花に取り押さえられていた。


「黒木さん。ごめんなさい。友里恵ってば昔からずっとこんな調子で、アイドルなんてやってるけど、中身はおっさんそのものなの」

「私はおっさんじゃないよ!」

「私は別に気にしてないよ。拓馬も同じ感じだから慣れてるし」

「俺が一緒ってどういうことだよ」


中身がおっさん同盟がそれぞれ文句を言っているが、無視して話を続ける一花と名波。


「友里恵ってば、アイドルに応募したのも、かわいい子が近くで見れるからっていう理由で応募したみたいで・・・」

「別にいいじゃん。でも最近忙しくてディスカッション以外の可愛い子と会ってないから黒木さんがとても新鮮で新鮮でゲヘヘヘ」

「最後ヨダレ出てるぞ」

「でも変態度なら拓馬も負けてないよ。いっつも黒タイツのことしか考えてないもん」

「そこで俺を引き合いに出すなよ。本人の前で失礼だろうが」


拓馬と友里恵は何か通じるものがあったらしく、アイコンタクトを交わして意思疎通を図った。


『今度黒タイツを履いてきてください』と拓馬。

『今度は黒木さんの足をペロペロしたい』と友里恵。


素晴らしいアイコンタクトのスレ違いですね。


「あ、そういえば、木下君の弟さんが私のファンなんだっけ?」

「そうそう。ユリちゃんに会うためだけに同じ高校行ってるんだわ」

「あらま。今度会ったら挨拶してみよっと。サインとかいる?」

「マジで? そんなにホイホイ書いちゃっていいもんなの?」

「別に私のサインだからねー。一花の友達のサインだよーって思ったらそうでもないでしょ?」

「たしかに。友達の友達のサインとかもらっても仕方ないもんな」

「じゃあなんか紙とペン持ってない?」

「あら、こんなところにサイン色紙とマジックが」


完全なる棒読みでカバンからサイン色紙とマジックを取り出した一花。


「なんで持ってるんだよ」

「木下君が喜ぶことならなんでもするわ」

「別に俺が喜ぶんじゃなくて俊哉が喜ぶだけだけどな」

「まぁまぁ。恋人同士の喧嘩はまた私が帰ってからやってくださいな」


そう言いながら、慣れた手つきでサインをシュルルルと書いていく友里恵。

それをもらった拓馬は一言つぶやく。


「サインってなんて書いてるのかわかんねーよな」

「そこはご愛嬌と言うことで。さてと、私そろそろ行こうかな」

「もう行っちゃうの?」

「うん。明日から東京で仕事なんだ」

「そっか。また戻ってきたら遊ぼうね」

「うん。連絡する。木下君達もまた遊んでね」

「おう。一緒に黒タイツトークしようや」

「頑張れよ」

「ユリちゃん、応援してるからねー!」

「おう!」


そう言って、食べきれなかったポテトとジュースを持って駐車場に止めてある車へと戻っていき、アイドルとしてのユリに戻っていく友里恵だった。











「俊哉ー。いるかー?」


家に帰った拓馬は俊哉の部屋に向かい、ドアの前で声をかけた。


「何? 今ユリちゃんで忙しいんだけど」

「そのユリちゃんから俊哉にお土産があるんだけどなー」


のそのそと歩いてきた俊哉がドアを開けると、もらったサイン色紙を目の前にかざしてやった。


「は? サイン? 誰の・・・ってユリちゃんのサインじゃん! どうしたんだよコレ!」

「本人に貰ったんだ。俊哉のことを話したら書いてくれてさ」

「マジかよー! なんで俺呼んでくれなかったん!?」


そんなこんなで俊哉からの質問攻めにあいながらも、ユリのサインを俊哉に渡すことが出来た拓馬であった。

あれこれと考えるよりもまず行動ですね。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると発狂します。


拓馬くんが何か忘れているような・・・

長くてすみません。


次回もお楽しみに!

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