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身長制限

名波と玄関までの廊下を歩いていた隆は、玄関近くの自販機の前で見覚えのある後ろ姿を見つけた。

見覚えがあるとは言っても一回か二回しか見たことがないので、正確には『きっとあいつだろう』という後ろ姿を見つけた。


「おい、ちびっ子」

「あっ! 相沢先輩に名波先輩! 今から帰るんですかっ?」

「美緒ちゃんは今日も元気いっぱいだねー」

「元気が取り柄ですから!」

「お前から元気取ったら何が残るんだよ」

「多分・・・うるさいところですかね!」

「なんだこいつ・・・」


しっかりと自分の性質を自覚していた美緒の意外な答えに、隆は驚いた。


「隆。あんまりイジメたらダメだよ?」

「イジメてねぇじゃん」

「噂通りで名波先輩は優しいですね!」

「噂通り?」

「はいっ! 名波先輩は1年生の間でも人気が高くて、聖母のようだと言われています!」

「聖母だってよ。よかったな。黒木マリアさん」

「誰よそれ。聖母って言われてもあんまりピンと来ないから嬉しくないー」

「いいじゃん。聖母だぞ? 聖なる母だぞ? 俺なんかイタズラ王子だぞ?」


隆は自分の不評を晒して名波に『聖母』というあだ名を付けようという魂胆である。

そんな隆を見て、美緒が思い出したかのように隆に向かって声を張り上げる。いちいち声がデカイ。


「ちゃんと相沢先輩も人気ありますよ!」

「俺も?」

「はいっ! 相沢先輩は男子の間で人気があって、イタズラのテクニックとか、名波先輩を落とすときに使ったテクニックを学びたいとか男子が言っていたのを聞いたことがあります!」

「なんだよそれ」

「やったね! テクニシャン隆!」

「それ嫌だなー。って、お前何してたんだよ」


話が大幅に逸れていたのを思い出した隆が話の軸を戻した。


「ジュース買おうと思って一番上のアレが欲しかったんですけど、いざお金入れたら届かなくて困ってたんです!」


よく見るとお金は入れた後みたいで、あとはボタンを押すだけだった。

そして美緒が指さしている一番上のジュースのボタンを隆が押してやると、ガコンと下からジュースが出てきた。美緒が取り出したのは、青いスポーツドリンクだった。


「ありがとうございます! ・・・ってこれじゃないです! この隣のです!」

「はぁ? めんどくせー・・・ どれちょっと待ってろ」


そう言って自分の財布を後ろポケットから取り出すと、ジュースの金額分だけ入れてさっき押したジュースの隣のボタンを押した。ガコンと音がして、隆が取り出したのは赤い炭酸飲料水。


「ほれ。交換だ」


その行動に驚いたらしく、少し声のボリュームが小さくなった美緒がお礼を言う。


「あ、ありがとうございます。意外と相沢先輩も優しいんですね」

「俺が間違えたからな」

「隆は実は優しいんだよ。ちょっと照れてるだけなんだって」


美緒の耳元で小さく言うと、また少し驚いたような顔を見せる美緒。

名波と同じように声を小さくして話しかける。


「アレ、照れてるんですか?」

「そう思ったらなんか可愛いでしょ?」


二人でクスクスと笑っているのを見て、隆が交換したスポーツドリンクを開けながら不思議そうに見ていた。

そして隆と名波は帰る方向が途中まで同じという美緒と一緒に帰ることにした。


「ホントにお前ちっこいよな。何センチだ?」

「昨日の身体測定で138センチでした!」

「140ねーのかよ! 名波は?」

「私? 153センチ」

「ふーん。ちっこいのかどうかわからんな」

「まぁちょっと低いぐらいだと思うよ」

「名波先輩はそのぐらいが一番可愛いと思います!」

「あらまぁ! 嬉しいこと言ってくれるじゃないの!」


近所のおばちゃんが褒められた時のような喜び方をする名波。

ちなみに隆は175センチぐらいで、拓馬が172ぐらい。一花が165ぐらいあります。もっとちなみにですが、有紀は160ぐらいです。


「そういえばなんであんな届かないところのジュース買おうと思ったんだよ。届かないのわかるだろ」

「人は挑戦したくなる時があるんです!」

「何かっこいいこと言ってんだ」

「実は今日なら届くかなーとか思ったんですけど、やっぱり無理だったんです!」

「今日ならって、まだ入学して何日も経ってないだろうが」

「家の近くにも同じような高さの自販機があるんです!」

「そーゆーことな。まぁあの高さの飲み物はまだちびっこには早いってことだったんだろうよ」

「身長格差社会ってやつですね!」


そんな話をしながら、新入生である美緒と親交を深めながら帰る隆と名波であった。

しばらく歩くと、美緒が二人のほうを向いて立ち止まった。


「ではうちはこっちなので!」

「えっ? こっちって・・・」

「はい! こっちです! 今日は一緒に帰っていただいてありがとうございました! ではまた学校で! さようならー!」


そう言って、美緒は両側に大量の木々が覆いかぶさっているような細い路地へと走り去っていった。

その方向を見ながら隆と名波は立ち尽くす。


「ここって道だったんだね」

「俺も初めて知った」

「美緒ちゃんちってどんなところに立ってるのかなぁ?」

「アレじゃね? ジブリみたいな感じで森と同化してるような家に住んでんだよ」

「気になるわー」


そんなことを話しつつも、あーでもないこーでもないと二人で仲良く駅までの道を話しながら歩いて帰るのであった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると発狂します。


美緒ちゃんの身長の話でした。


次回もお楽しみに!

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