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新任教師の緊張

始業式の日に、代理で来た先生の仕業(?)によって、担任が明かされていなかった3年4組。

次の日にその担任が発表されて以来、担任が担当している初の授業の時間となった。

担任はまだ若くて、すこし気弱で病弱そうな印象もあるが、儚げで綺麗な感じがする男の先生だった。

はじめての転勤ということもあって、色々と準備に手間取ってしまっていたらしく、ホームルーム等も結構散々な結果であった。

最初のホームルームの名誉挽回とばかりに気合を入れて来たのかわからないが、手には一体の可愛らしいフィギュアを持って教室へと入ってきた。

そんなちょっと頑張る方向性を間違えてしまったような担任を見た隆は、爆笑寸前だった。

そして、そのフィギュアを教卓の上に置いて、小さな声で『頑張るよ』と呟いた瞬間に、隆は堪えきれずに吹き出してしまった。その隆の爆笑を皮切りに、クラスの生徒達が次々に爆笑の波へと飲み込まれていく。


「こ、こら! 授業中なんだからし、静かにしてください!」

「先生っ。それは無理な相談ですよっ」


必死に笑いを堪えながら一人の生徒が答える。隆も心の中で『そりゃそうだ』と相槌を打った。


「うぅー。先生はこの子がいないと緊張がほぐれないんです! 勘弁してください!」

「どうしてカメリアちゃんなんですか?」


担任の悲痛な叫びを聞いた直後に、隆の横に座っている一花が質問した。

その質問に担任や隆だけではなく、クラス中の笑いが収まって視線が一花に集まった。


「おい、委員長? カメ・・・なんだって?」

「カメリアちゃんよ。知らないの? あんなに有名なアニメのキャラじゃないの」

「いや、当たり前のように言われても」

「・・・それはどういう意味で聞いてるんですか?」


担任が一花の言葉の意味を探るように問いかける。


「そのまんまの意味です。どうして主人公の本命のヒロインではなくて、微妙に影に埋もれそうな脇役なんですか?」

「カ、カメリアちゃんは脇役じゃないよ!」

「そんなに叫ばんでも」

「カメリアちゃんは主人公にとても優しいんです! だからあんなに主人公のことを影から優しく見守ってあげるような言葉を投げかけているんです!」


その言葉にクラス一同は思った。


『この先生・・・オタクか』と。


そんな担任のカメリアちゃんの良いところをまとめたようなセリフを聞いた一花は以前変わらぬテンションで担任に話しかけた。


「そうですか。それは先生に悪いことを言ってしまいました。すみません」

「いえ、好きなキャラのことを分かってくれればそれでいいんです」

「あ、ごめんなさい。授業の続きをお願いします」

「あ、そうでしたね。では教科書のー」




授業が終わって、スムーズに進んだ事に満足したのか、上機嫌で教室を出ていく先生を見送ると、隆は隣にいる一花に話しかける。


「おい、委員長。お前もオタクだったのか?」

「オタクって程じゃないわよ。ただあの先生がすごく緊張していたからその緊張を和らげてあげようかと思って、フィギュアの話をしただけ。内心は笑いをこらえるので精一杯だったのは秘密よ」

「なんだよ。お前超人じゃねぇか」

「超人って大げさよ。でもこのことは木下君に言ってもいいわよ。私の意外な一面を見れて高評価をもらえるはずだわ」


なにを根拠に高評価をもらえると言っているのかはわからないが、エヘンと胸を張って自慢気味に言う一花であった。

そんな高評価に繋がるようなことを隆が言うわけないのに。哀れなり一花。


「じゃあ5時間目の委員会決めでは、ちゃんとクラス委員長に推薦してやるから安心しろよ」

「誰が好き好んで委員長なんかやるのよ」

「たしか拓馬はやるとか言ってたけどなー」

「ちゃんと推薦してよね。私立候補するから応援してね!」


身を乗り出して隆に応援を求めてくる一花。

噂をすればなんとやら。ちょうど聞いていたかのようなタイミングで拓馬がやってきた。


「隆ー教科書貸してくれー」

「何?」

「政経」

「お前置き勉だろ?」

「まさか3年でも政経があるとは思わなくて持ってきてなかったんだよ。・・・ってなんだよ市原。気持ち悪い目で見んな」

「木下君も委員長やるってホント?」

「委員長?」


なんのことか分からずに拓馬が隆の顔を見ると、隆がニヤケそうな顔を必死に抑えていた。

それを見て拓馬は理解した。


「あぁ。委員長ね。やるやる。内申点上げようかと思ってさ。やるよ。超やるよ」

「・・・なんか嘘くさいわね」

「いやいやいや。全然嘘臭くないよ。超本気だし。本気と書いてやる気満々だし」

「お前もう少し嘘付くの上手くなれよな」


バレバレな嘘でごまかそうとしていた拓馬。

実は拓馬が委員長をやるなんて言うのは全くのデタラメで、一花が委員長になったら、委員長というあだ名がしっくりくるなー程度に考えた隆がでっち上げた嘘なのです。


「相沢君。最低ね」

「別に最低じゃないだろ。委員長なら委員長っぽいから委員長になったら委員長として堂々と委員長らしく振る舞えるぞ?」

「そんな委員長委員長って言って洗脳するのやめてもらえる?」

「私だってそんなに軽い女じゃないのよ? もっと愛と愛に生きる女なんだからね」

「どうして二回言ったんだよ」


軽くつっこむ隆。

そして拓馬がテポドン級の言葉を一花に投げつけた。


「俺、市原が委員長してるところ見てみたいなー」

「もう・・・木下君に言われたら断れないじゃないの。わかったわよ。その代わり今度デートしてね!」

「あ、隆。教科書」

「ほいよ」

「サンキュー。じゃっ!」


教科書を手にスタコラサッサーな拓馬。そんな拓馬を高速で追いかけていく一花であった。


そして5時間目のホームルームで行われた委員会决めでは、一花が自選票と他薦票の全てを獲得して満場一致で委員長となることが決定した。

大きな要因は、あの担任との会話の裏話を隆が拓馬にではなくクラスメイト全員に知らせたことであったのは、一花が知ることは無かった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると発狂します。


何かとひどいキャラを出しちゃいました。

可愛がってください。

一花さん。マジ一花さん。


次回もお楽しみに!

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