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短編

三題噺 「帰国子女」 「天然」 「テニス」

作者: 安藤言葉

いつも部活に行くとき、君のことを想う。


今、わたしがこれをやれているのは全部、きみのおかげだよね。



「はじめまして、アメリカからきました」


中二の春ごろ、わたしはとある中学校に転校してきた。


日本語はしゃべれたけど、いろいろ不安だった。


友達できるかな?勉強はついていけるかな?いじめられないかな?



そんなときだったね、きみが最初に話しかけてくれたのは。


「プ、プリーズ、ビカー、ムア、マイ、フレンド?」


ぷっ!おっかし!ぜんぜん片言じゃないwww


自己紹介のとき、日本語で話していたでしょ?


きみの天然っぷりを見ると思わず顔が緩んで、心配事もふっとんだ。


それからいっぱいお話ししてすぐに仲良くなったね。



少しすると部活に入らなくてはいけなくなった。


いろいろな部活を回っていたけど、わたしは特にやりたいこともなかった


し、なにもやりたくないなぁ、なんて思ってたっけ。



最後、テニス部を見に行ったとき、きみがいたね。


必死にがんばってたね。何回も転んで砂まみれになりながらも。


正直とてもかっこ悪かった。


でもどうしてだろう。わたしはテニス部に入ることを決めた。



今を思えば、あのときにテニスにひたむきなきみに恋をしちゃったんだ。



「あのさ、練習つきあってもらってもいいかな?」


何回こういって二人っきりで練習したんだろう?


日が暮れるまで部活をやってから、よくコートをとって練習という名のデ


ートをしていた。


もっともきみは天然というか、鈍感だったから本当に練習に付き合ってる


だけだったんだろうけど。



毎日毎日練習して、最後の夏。


「ぜったい全国行こーな!!」


そんなことできないよとおもいながらもうなずいた。


笑ってきみを試合に送り出した。



それがわたしの聞いた、別れの言葉だった。



彼は、あんなに強かったのにあっさり負けてしまった。


わたしまで泣けてきた。


あの時なんで慰めに行かなかったのだろう?


次があるよって言わなかったんだろう?


わたしはきみになにもできなかった。




そして君は転校した。


どこだったかな?とっても遠い県に。




ある日、家に帰るとおくりものが来ていた。



ラケットだった。


新品でぴかぴかだったけど、ラケットの側面にこう書いてあった。





「ぜったい全国行こーな!!」





あれから二年。きみとはそれ以来なんの連絡も取ってないけど、あのラケ


ットはずっとつかってるよ。


それで毎日部活をがんばっているんだ。


ぜったい全国に行って、伝えられなかったこの想い、今度はぜったい伝え


るんだ。


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