第4話:もふもふ vs ぎざぎざ! 召喚師のプライド(?)を賭けた戦い
「あ、あの……ザンガさん。このダンジョン、本当に僕も入って大丈夫ですか?」
僕は、初心者向けとは到底思えない、禍々しい紫の霧が漂う『暗黒の回廊』の入り口で震えていた。
隣には、相変わらずポムを小脇に抱えて満足げな表情のザンガ。
「安心しろ。お前の『癒やしの加護』があれば、前衛の俺たちは不老不死も同然だ」
「それは言い過ぎじゃ……」
『キュイッ!』
ポムが僕の肩の上で、やる気満々に胸(毛)を張る。ルルは僕のフードの中で、ぷるぷるとゼリーのように震えていた。
と、その時。奥から鋭い足音が響いてきた。
「ふん……。最近噂の『癒やし系召喚師』とやらか。期待外れだな」
暗闇の中から現れたのは、コハクとは正反対の、棘のついた漆黒のローブを纏った少女だった。
彼女の後ろには、銀色に輝く巨大な狼――『ライトニング・フェンリル』が、低く唸り声を上げながら控えている。
「私はシオン。誇り高き『魔獣召喚師』よ。あなたのような、ペットを連れておままごとをしている偽物と一緒にされたくないわ」
彼女が指をパチンと鳴らす。
すると、フェンリルの周囲にバチバチと青白い電撃が走り、洞窟の壁が削り取られた。
「ひいっ! す、すご……」
「……コハク、ビビるな。ポムを見ろ」
ザンガに言われて足元を見ると、ポムがトコトコとフェンリルの前まで歩み寄っていた。
「ちょっと! 危ないわよ! 私のガウルは気性が荒いんだから――」
シオンが制止しようとした、その瞬間。
『キュ〜♪』
ポムがフェンリルの鼻先に、自慢の「究極の綿毛」を「ぽふっ」と押し当てた。
静寂が流れる。
殺気立っていたはずのフェンリル――ガウルの耳が、ピクッと動く。
そして……。
『……クゥ〜ン』
あの大狼が、ポムの柔らかさに抗えず、その場にヘナヘナと座り込んでしまったのだ。
それどころか、お腹を見せて「もっと……もっともふもふさせて……」と言わんばかりに尻尾を振り始める。
「な、ななな……ガウル!? シャキッとしなさい! 威厳はどうしたのよ!!」
「あの……シオンさん? よかったら、ブラッシング、貸しましょうか?」
僕が予備のブラシを差し出すと、シオンは顔を真っ赤にして叫んだ。
「い、いらないわよ! ブラッシングなんて……そ、そんな軟弱なこと……っ!」
と言いつつ、彼女の目はポムの毛並みに釘付けになっている。
どうやら、このライバルさんも「もふもふ」の魅力には勝てそうにありません。




