転生魔法学園記5期
# =====================================
【転生魔法学園記】第五期
~世界魔法統括機関と新たな絆~
全24話 完全版
■5期新登場ヒロイン6人
・アルマ・クリスタルハート(17歳)
水晶魔法の使い手。透き通るような白銀の髪に、水晶のように透明な灰色の瞳。
物事を水晶に閉じ込めたり、水晶の中に記憶を封印したりできる珍しい魔法。
世界魔法統括機関の本部がある王都の出身で、機関の設立初日から事務スタッフとして採用された。
仕事は完璧にこなすが、感情を表に出すのが苦手。
ライトに「あなたの魔力を水晶に閉じ込めてみてもいいですか。こんなに複雑な魔力は初めてで」と言った。
・リリア・エバーグロウ(16歳)
成長魔法(生物の成長を促進・抑制する)の使い手。
新緑色の柔らかい髪に、優しい翠色の瞳。機関に研究員として採用された。
植物だけでなく人間の傷の回復も加速できるため、医療魔法の新分野として注目されている。
セラの植物魔法とは似て非なるもので、セラとはすぐに仲良くなった。
ライトに「あなたの傷が治るのが早すぎる。前世の魔力が影響しているんですか?」と言って研究を始めた。
・ファン・メイリン(16歳)
東方の国・花雲国出身の花魔法使い。
艶やかな黒髪を花で飾り、暖かな赤い瞳を持つ。
花の香り・花粉・花びらを魔法で操り、攻撃から癒しまで使える。
ユイやツキと同じ東方系だが、国が違うためそれぞれ文化が異なる。
料理も得意で、リナとはすぐに仲良くなった。
ライトに初めて会った時「花が、あなたに懐いています」と言った(セラと同じ台詞だと後で判明した)。
・エレノア・スターダスト(17歳)
流星魔法の使い手。深い紺色の髪に、輝く金色の瞳。
流れ星を操り、軌道・速度・衝突を制御する壮大な魔法。
普段はクールで少ない言葉で話すが、流星の話になると止まらなくなる。
ノアとは星繋がりで意気投合し、よく二人で夜空を観測している。
ライトに「あなたの魔力は流れ星に似ている。光り続けるために燃えている」と言った。
・サク・ハナミ(15歳)
花見魔法(桜の花びらを操る、非常に特化した珍しい魔法)の使い手。
淡いピンクの髪に、柔らかい桃色の瞳。東方系の顔立ち。
一見すると戦闘向きでないが、花びらの密度・速度・切れ味を極限まで高めると恐ろしい攻撃力になる。
普段はにこにこして穏やかだが、戦闘になると人が変わる。
ライトに「桜の花びらを受け止めてくれた人、初めてです」と言った(ライトが防護魔法で全部受け止めた)。
・ミレイユ・ヴァンクール(18歳)
風水魔法(地形・気流・環境全体を操る)の使い手。フランス風の名前と外見。
赤みがかった栗色の長い髪に、落ち着いた茶色の瞳。機関の環境部門主任として招聘された。
セラの植物部門とリリアの成長部門と合わせて「環境三部門」を構成する。
物腰が柔らかく優雅だが、仕事への熱意は誰にも負けない。
ライトに「この機関を一緒に作りましょう。あなたと私では、見ている世界の大きさが近い気がして」と言った。
=====================================
第一章 機関の夜明け
(第1話~第4話)
=====================================
◆第1話「世界魔法統括機関、開幕」
卒業から三ヶ月後。
王都の旧貴族邸を改装した建物に、「世界魔法統括機関」の看板が掲げられた。
ライトが正面扉を開けると——
「おはようございます。ライト・アシュトン代表」
水晶のような灰色の瞳の少女が、完璧な姿勢で立っていた。
「……アルマか」
「アルマ・クリスタルハートです。本日より事務主任として就任しました。よろしくお願いします」
「聞いていなかった」
「採用担当のアリアさんが決めました」
「……アリアか」
「今日の予定を確認します。午前中は各国代表との挨拶会、午後は施設の見学、夕方はフィア先生との医療部門の打ち合わせ、夜は……」
「待て。全部今日か」
「初日なので詰め込みました」
「誰が詰め込んだ」
「アリアさんです」
「……あとでアリアと話す」
「承知しました。では午前の準備に——」
「一つ聞く」
「何でしょう」
「お前はなぜここに来た。王都の出身なら他の選択肢もあっただろう」
アルマが少し間を置いた。
「……あなたの魔力の話を聞いて。前世三百年分の魔力を持つ魔法使いが、水晶に閉じ込められたらどうなるか知りたくて」
「研究目的か」
「半分は。もう半分は——この機関が面白そうだったので」
「それでいい。正直だ」
「……あと、水晶に閉じ込めてみてもいいですか、あなたの魔力を。こんなに複雑な魔力は初めてで」
「後でな」
「約束ですね」
「約束だ」
-----
午前の挨拶会が始まった。
続々と各部門の担当者が集まってきた。
ルナが護衛として後ろに立っている。カナが「私も来た!!」と言って太陽みたいに入ってきた。ノアが静かに隅の席に座った。
そこに見知らぬ顔が混じっていた。
新緑色の髪の少女が、ライトのそばに来て言った。
「リリア・エバーグロウといいます。成長魔法の研究員です。よろしくお願いします」
「成長魔法か。珍しい」
「はい! 植物も人間も動物も、生物の成長速度を操れます。医療への応用を研究していて。……あの、一つだけ確認していいですか」
「何だ」
「ライトさんの傷の回復速度、普通の人より三倍以上早いですよね」
「……なぜ知っている」
「成長魔法使いには、体の状態が分かるんです。今も少し肩に古傷がありますけど、魔力が自動修復してる。これ、前世の魔力の影響ですか?」
「……そうかもしれない」
「研究させてください!!」
「目的が研究だと最初から言え」
「もちろん純粋に仲良くなりたいという気持ちも……!」
「どちらが先だ」
「……(正直に)……五分五分です」
「そうか。研究は付き合う」
「やった!!」
-----
◆第2話「花魔法の少女と東方の絆」
機関の庭に、花が咲き乱れていた。
一夜にして庭が花園になっていた。
「……誰がした」
庭にしゃがんでいた少女が振り向いた。艶やかな黒髪に赤い瞳。
「ファン・メイリンといいます。花魔法が得意で……勝手に咲かせてしまいました。嫌でしたか?」
「嫌ではない。きれいだ」
「よかった!」
メイリンが立ち上がった。
「ユイさんとツキさんから紹介してもらいました。同じ東方の人間として、ここで働きたくて」
「花雲国から来たのか」
「はい! 花雲国は花魔法の本場で、私は一番得意な使い手として送り出されてもらいました」
「花で何ができる」
「攻撃・防御・治癒・情報収集……花粉で相手の状態を探ったり、花びらで包んで守ったり。あと、料理も!」
「料理も花魔法か」
「花びらを食材に使うのが花雲国の料理で! リナさんと意気投合しました! 今日一緒に料理しましょうって約束して!」
「そうか」
「……あの、一つだけ聞いていいですか」
「何だ」
「……花が、あなたに懐いています」
「植物に好かれる傾向がある」
「それは魔力が優しいからです。花は嘘をつかないので」
「セラに同じことを言われた」
「セラさんと同じ! じゃあ私たち、気が合いますね!」
「そうかもしれない」
「あと、もう一つ聞いていいですか」
「何だ」
「……好きになってもいいですか、あなたのことを。東方では”花が懐いた人は縁がある”という言葉があるので」
「……」
「東方の人間は直接的なので! ご容赦ください!」
「……好きにしろ」
「好きにします!!」
-----
◆第3話「流星使いの夜と新しい星」
夜、機関の屋上でライトが考え事をしていた。
「……珍しい。一人でいるのね」
声がした。振り向くと、深い紺色の髪の少女が屋上の端に立っていた。
「エレノア・スターダストか」
「知ってる。ノアから聞いた?」
「噂で。流星魔法の使い手だと」
「そう」
エレノアが空を見上げた。
「今夜は流星が多い。見てた?」
「仕事のことを考えていた」
「勿体ない。こんなに流れてるのに」
「お前は流星を見に来たのか」
「それが仕事だから。流星の軌道を読んで、制御する練習。でも今夜は……」
「今夜は?」
「……あなたと話したかった。ノアが”ライトは夜に屋上にいることがある”と言ったから」
「ノアが教えたか」
「友人として。嫌だった?」
「嫌ではない」
エレノアが流星を一つ、指でなぞるように動かした。流星の軌道がわずかに変わった。
「……すごい制御だ」
「これくらい普通。あなたの魔法の方がよほど複雑」
「流星魔法は規模が大きい。複雑さの種類が違う」
「……あなたの魔力は流れ星に似ている、と思った。最初に見た時」
「どの辺りが」
「光り続けるために燃えている。流れ星は大気圏で燃えながら光る。あなたの魔力も、何かを燃やしながら輝いてる気がした」
「……前世の記憶を燃料にしているのかもしれない」
「それだけじゃない気がする。今世の何かも」
「何だと思う」
「……みんなを守ろうとする気持ち、かな」
ライトは少し考えた。
「……鋭いな」
「流星を読んでたら、人の気持ちも少し読める気がするの。軌道には意志があるから」
「そうか」
「……また話していい? 夜に」
「来い」
「ありがとう。じゃあ——今夜は流星を一緒に見ましょう。仕事のことは明日考えて」
「……わかった」
二人は夜明けまで、流星を見ていた。
-----
◆第4話「桜の花びらと新人戦闘員」
機関の訓練場で、淡いピンクの髪の少女が一人練習していた。
花びらが舞い、それが高速で壁を削った。
「……上手い」
少女が振り向いた。桃色の瞳が丸くなった。
「ライト・アシュトン代表!?」
「サク・ハナミか。戦闘部門に配属されたと聞いた」
「はい! 花見魔法って地味に思われがちですけど、実は強いんです!」
「見れば分かる。花びらの制御精度が高い」
「本当ですか!! 嬉しいです! 大体みんな”桜の花びらで戦うの?“ってなるので!」
「特化型の魔法は侮られやすい。だが使いこなせば汎用型を超える」
「……そう言ってくれる人、初めてです」
「事実だから言った」
サクが少し考えて、花びらを一枚ライトに向けて飛ばした。
ライトが防護魔法で受け止めた。
「……受け止めてくれましたね」
「何のつもりだ」
「試しました。花びらを受け止める人、初めて見た。大体、避けるか、驚くか」
「防護魔法で受け止めるのが一番安全だ」
「……受け止めてくれたの、嬉しかったです」
「なぜ」
「……花びらを受け止めてくれるって、花見魔法を認めてくれてる気がして」
「認めている。強い魔法だ」
サクがにこっと笑った。普段の穏やかな笑顔だった。
「……好きになってもいいですか、代表のことを」
「……なぜそこに繋がる」
「花を大切にしてくれる人は、私も大切にしてくれると思うので」
「……その理屈は少し飛躍している」
「東方の人間は直接的なので(メイリンと同じ台詞)」
「東方の人間は直接的だな」
「そうなんです!」
-----
=====================================
第二章 機関の日々と新たな騒動
(第5話~第8話)
=====================================
◆第5話「ミレイユの風水と機関の試練」
機関に最後の新メンバーが到着した。
赤みがかった栗色の長い髪、落ち着いた茶色の瞳。優雅な立ち姿の女性だった。
「ミレイユ・ヴァンクールと申します。環境部門の主任として参りました。よろしく」
「聞いていた。風水魔法の使い手だ」
「はい。地形・気流・環境全体を整えるのが専門で。この機関の建物を拝見しましたが——少し気の流れが乱れています。整えてもよろしいですか」
「気の流れ?」
「風水の概念です。空間の魔力の流れを整えると、そこにいる人の状態が安定します。仕事の効率も上がる」
「実証できるか」
「今すぐ実証しましょう」
ミレイユが静かに魔法を発動した。
建物全体の空気が、ゆっくりと変わった。
少し後、アルマが「……何かすっきりした気がします」と言った。
リリアが「体の調子がいい!」と言った。
フロストが《空気が変わりましたな》と言った。
「……効果が出た」
「ありがとうございます。ただ——本来の効果を出すには、この建物の基礎部分に術式を組み込む必要があります」
「それをするには」
「代表であるあなたの許可と、少しだけあなたの魔力が必要です。中心となる魔力が強いほど、環境魔法の効果が持続します」
「わかった。いつでも来い」
「今夜はいかがですか」
「今夜でいい」
「……ありがとうございます。一つだけ、個人的なことを聞いてもよろしいですか」
「何だ」
「この機関を一緒に作りましょう、と言いたかった。あなたと私では、見ている世界の大きさが近い気がして」
「世界の大きさ?」
「……広い視野で物事を見る人と、小さな視野で見る人とでは、同じ景色を見ても違うものが見える。あなたは前世三百年と今世の両方で世界を見ている。私は風水で世界の流れを見ている。……同じくらい、遠くを見ている気がした」
「……面白い考え方だ」
「面白いと言ってくれる人が好きです」
「好きにしろ」
「……(微笑む)その言葉、よく使うのですね」
「便利だから」
「……私にも使ってくれてよかった」
-----
◆第6話「アルマの水晶と封じ込めた感情」
夜、アルマがライトに「約束の水晶実験をしてもいい?」と言ってきた。
「するか」
「はい。ただ……一つだけ確認を。水晶に魔力を封じると、魔力に含まれた感情の残滓も記録される場合があります。見られても構いませんか」
「構わない。俺は感情を隠さない」
「……そうなんですか」
「表情が乏しいのは別の話だ。感情は持っている」
「……では、始めます」
アルマが水晶を取り出した。透明な結晶が、ライトの魔力に反応してすぐに光り始めた。
「……! こんなに速く反応するのは初めて」
「前世の魔力が多いからだろう」
「魔力を少し流してください。ゆっくり」
ライトが魔力を流した。
水晶が七色に輝いた。
「……きれい。前世の記憶の色と、今世の色が混ざっている」
「見分けられるか」
「……前世の色は、深くて、広くて、でも少し冷たい。今世の色は——温かい。特にここ数年で急激に温かくなっている」
「そうか」
「……感情の残滓も少し見えます。今の、あなたの気持ちが」
「何が見える」
「……(少し赤くなる)……言っていいですか」
「言え」
「……“ここにいていい”という気持ちが、ある。今、この場所に、ここにいていいと思っている」
「……正確だ」
「……嬉しいです。水晶は嘘をつかないから、それが本当だと分かる」
「俺は嘘をつかないが」
「……知っています。でも、水晶で確かめると……より確かな気がして」
アルマが水晶を見た。七色に光ったまま、温かく輝いていた。
「……保管していいですか、これ」
「持っていけ」
「……ありがとうございます。大切にします」
「そうしろ」
「……あの」
「何だ」
「……私も、ここにいていいですか」
「いていい」
「……(水晶と同じくらい、透明に微笑む)」
-----
◆第7話「リリアの研究と回復魔法の秘密」(感動エピソード)
ある日、機関の医療部門で子供が運ばれてきた。
魔法の事故で重傷を負った七歳の子供だった。
フィアとリリアが対応した。
「……かなり深い傷です」とフィアが言った。
「回復を加速させます!」とリリアが言った。
リリアが成長魔法を発動した。
傷の回復が目に見えて速くなった。でも——途中で止まった。
「……なぜ止まる」とリリアが言った。
「魔力が足りないのか?」
「違う。傷の深さより、子供の体の魔力の器が小さすぎて、回復のエネルギーを受け取れない」
「俺の魔力を流せるか」とライトが言った。
「え?」
「お前の成長魔法に、俺の魔力を補助として加えれば器の制限を超えられる可能性がある」
「……理論上は、できるかも。でも、リスクが」
「何のリスクだ」
「……あなたの魔力が強すぎると、子供の体が耐えられない可能性がある」
「制御する。ちょうどいい量を計算してくれ」
「……計算します!」
リリアが成長魔法で子供の体の状態を読み取り、ライトが必要な量の魔力を精密に流した。
フィアが回復魔法で傷を塞いでいく。
三者の魔法が一点に集まった。
子供の傷が、少しずつ消えていった。
一時間後、子供が目を開けた。
「……なんとか」とフィアが言った。
「……回復しました!」とリリアが言った。
子供の母親が泣きながら礼を言った。
後で、リリアがライトに言った。
「……あなたと組んだら、今まで助けられなかった人を助けられる気がする」
「それがこの機関の目的だ」
「……私、この機関に来てよかったです。あなたに会えて、よかったです」
「こちらこそ」
「……それと」
「何だ」
「さっきの五分五分の話——今は九対一です」
「どちらが多い」
「……仲良くなりたい、の方が九です」
「そうか」
「……でも一の方の気持ちも、着実に育ってます。成長魔法使いだから、成長が速いです(笑う)」
「研究熱心だな」
「感情の成長も研究対象です!!」
-----
◆第8話「メイリンの料理と花雲の夜」
機関の食堂で、メイリンとリナが合同料理を作っていた。
「花雲国の花びら料理と、エルヴィアの魔法料理の融合!!」
「やってみましょう!!」
ライトが通りかかると二人が「試食してください!!」と言った。
一口食べた。
「……うまい」
「「やった!!!!」」
二人が抱き合って喜んだ。
「花の香りが料理に溶け込んでいる。魔力の馴染み方が自然だ」
「花魔法は香りを操れるので! リナさんの魔力制御と合わせたら相乗効果で!」
「来月の機関の食堂メニューに加える。アルマに申請しろ」
「「はい!!」」
-----
夜、メイリンが一人で庭の花の手入れをしていた。
「どうした。こんな時間に」
「……夜の花が好きで。夜だけ咲く花があるんです。月見草とか、夜来香とか」
「知っている」
「前世の記憶で?」
「前世で東方の植物を研究した。花雲国にも行った」
「本当に!?」
「百五十年前だが」
「……百五十年前の花雲国……今と全然違う! どんなでしたか!?」
「今より花が多かった。街全体が花の中にあった」
「……それは花魔法使いが多かった時代です。今は減ってきていて」
「なぜ減った」
「……実用的な戦闘魔法の方が評価されるようになって、花魔法は”飾り”だと思われて。私は悔しくて、花魔法が一番強いと証明したくて、ここに来ました」
「証明できる」
「……本当に?」
「さっきの料理を見たか。花魔法は戦闘だけじゃない。生活を豊かにする魔法だ。それも強さだ」
「……ライトさん」
「何だ」
「……花雲国で聞いた言葉があります。“花を愛でる人は、美しいものが分かる人”という言葉」
「どういう意味だ」
「……あなたは、花魔法の美しさが分かる人です。だから——好きになりました。花雲流で、直接的に」
「そうか」
「……返事は?」
「大切だ。それは本当だ」
「……(花が一斉に咲く)」
「……何をした」
「嬉しいと花が咲くんです。制御できなくて」
「そうか」
「……見苦しくてすみません」
「きれいだ」
「……(また花が咲く)言わないでください、止まらなくなるので!」
-----
=====================================
第三章 ラッキースケベ・機関編
(第9話~第12話)
=====================================
◆第9話「水晶実験室の大崩壊」
アルマが新しい実験をしていた。
「……大型水晶への大量魔力封入実験です。成功すれば機関の魔力供給源になります」
「俺の魔力を使うのか」
「はい。一番密度が高いので。準備はいいですか」
「いい」
実験が始まった。
ライトが魔力を流し込むと、水晶が急速に輝き始めた。
「……想定より反応が——」
水晶が限界を超えた。
爆発とは違う。水晶が全方向に光を放射した。
実験室が眩しい光に包まれた。
「目を閉じろ!」
「はい!」
ライトが防護魔法を展開したが、光の反射で部屋の水晶装飾が全部共鳴して、棚の水晶が全部床に落ちた。
ライトとアルマが床に転がった。
「……大丈夫か」
「……大丈夫です。でも——」
光が収まった。
アルマがライトの上に倒れていた。
「…………」
「…………」
「……水晶の破片で怪我はないですか」とアルマが言った。
「ない。お前は?」
「……ないです。ただ、この体勢が」
「……そうだな」
「……魔力を流し込みすぎました。次は量を半分にします」
「次の実験の話をするのか、今」
「……気まずいので仕事の話をしています」
「そうか」
「……(かなり赤い)……起きますね」
「そうしろ」
「……あの」
「何だ」
「……水晶に記録されています。今の状況が」
「水晶は全部割れただろう」
「……一個だけ無事で。私のポケットの中の、一番小さいやつが」
「……そうか」
「……記録、消しますか?」
「消すかどうかはお前が決めろ」
「……(しばらく考える)……消しません」
「なぜ」
「……大切な記録なので」
-----
◆第10話「花びらの嵐と全員巻き込み事件」
機関の訓練場で、サクが戦闘訓練をしていた。
花びらが嵐のように舞う中、ライトが通りかかった。
「調子はどうだ」
「すごくいいです! 今日は花びらの回転速度を上げる練習をしていて!」
「どのくらい速くなった」
「見ててください!」
サクが全力で花びらを展開した。
三百枚の花びらが竜巻のように舞い上がった。
「……これは」
「すごいでしょ!?」
「竜巻になっている。制御できているか」
「できてます!……あ」
「あ?」
「……風が——」
花びらの竜巻が、気流を巻き込んで予期せぬ方向に広がり始めた。
訓練場のドアが開いて、アルマが書類を持って入ってきた。
「代表、今日のスケジュールを——きゃっ!」
花びらが書類を直撃した。書類が全部舞い上がった。
そこにリリアが走って入ってきた。
「書類を——わわわ!」
リリアも花びらの渦に巻き込まれた。
さらにメイリンが入ってきた。
「何の騒ぎですか——あ、花びら! これは私の得意分野!」
メイリンが花魔法で対抗しようとしたが、サクの花びらとメイリンの花びらが混ざって、さらに大きな渦になった。
「「「きゃーーー!!!」」」
三人が花びらの渦の中でくるくると回り始めた。
ライトが制御魔法で全部止めた。
花びらが一斉に床に落ちた。
三人が同時に、ライトに向かって倒れてきた。
ライトが三人を同時に支えた。
「…………」
「…………」
「…………」
「……三人同時は初めてだ」とライトが言った。
「「「す、すみません!!!!」」」
三人が一斉に顔を赤くして離れた。
書類が全部花びらまみれになっていた。
アルマが冷静に「書き直します……」と言った。
-----
◆第11話「流星雨の夜と密着観測」
エレノアが「今夜は百年に一度の流星雨だ」と言ってきた。
「機関の屋上で観測させてほしい。広い場所が要る」
「いいが、一人か」
「……一人じゃ足りない。手が必要で」
「どんな手が」
「流星雨は密度が高くて、全部の軌道を一人で制御するのは難しい。どれか地上に落ちると大変なことになる」
「それは機関の問題だ。全員を動員する」
「でも、あなたに一番お願いしたい。古代の魔力なら、一人で半分を担当できる」
「わかった」
-----
夜、機関の屋上に全員が集まった。
流星雨が始まった。
それは圧倒的だった。
夜空が流れ星で埋まった。
「……始まる。手伝って」とエレノアが言った。
「任せろ」
エレノアが軌道制御を始め、ライトが補助した。
流星が次々と安全な軌道に誘導されていく。
集中している間に、一つが想定外の動きをした。
「右!」
「見えてる!」
二人が同時に動いた。
体がぶつかった。
エレノアがライトの腕の中に入った状態で、二人が同時に魔法を発動した。
流星が安全な軌道に変わった。
「……成功した」
「……うん」
二人がお互いを見た。かなり近い距離だった。
「……(流星が背景に流れている)」
「……(流星が流れている)」
「……離れるか」とライトが言った。
「……もう少しだけ待って。残りの流星を数えてる」
「……わかった」
「……十七、十八、十九——(数えながらしばらく動かない)」
「……」
「……二十四。全部安全な軌道に入った」
「そうか」
「……ありがとう。一人じゃ絶対できなかった」
「俺もやりがいがあった」
「……あなたと流星を制御するの、思った以上に楽しかった」
「そうか」
「……また一緒にやりたい」
「いつでも来い」
「……(少し赤い)……あと、一つだけ言う」
「何だ」
「……近かったのは、あなたが嫌じゃなかった。少し、嬉しかった」
「……俺も悪くなかった」
「……(微笑む)珍しい正直さ」
「お前が言うから言った」
「……(またほんのり赤い)……ありがとう」
-----
◆第12話「ミレイユの風水と夜のふたり」
深夜、機関の地下で風水術式の組み込み作業をしていた。
「……あと少しです。ここに魔力を流してください」
ライトが魔力を地下の術式に流し込んだ。
建物全体が、微かに温かくなった。
「……完成しました」とミレイユが言った。
「これで建物の魔力の流れが整うのか」
「はい。ここにいる全員の状態が、じわじわとよくなっていきます。気づかないくらいゆっくりですが」
「地道な魔法だ」
「環境魔法はそういうものです。派手ではないですが、確かに効く」
「クレアの魔道具に似ているな」
「あら、そうかもしれません」
ミレイユが立ち上がろうとして、長い髪が術式の杭に引っかかった。
「……っ」
「どうした」
「……髪が引っかかってしまって。抜けない」
「見せろ」
ライトがミレイユの髪に引っかかった杭を丁寧に外した。
その間、ミレイユはライトの手が近い距離にいた。
「……ありがとうございます」
「長い髪は作業中は束ねた方がいい」
「そうですね。でも——」
「でも?」
「……あなたに外してもらえたので、今日はよかったです(小声)」
「……聞こえた」
「……聞こえていましたか(真っ赤)」
「聞こえた」
「……(さらに赤い)……言い直しませんが、後悔もしていません」
「そうか」
「……この機関で働けて、よかったと思っています。あなたと一緒に作れて」
「こちらこそ」
「……「こちらこそ」と言ってくれるんですね、いつも」
「本当のことだから言う」
「……(優雅に微笑む)……あなたは、誰にも嘘をつかない」
「それが俺だ」
「……素敵なことだと思います。本当に」
=====================================
第四章 各国の危機と機関の真価
(第13話~第16話)
=====================================
◆第13話「東方三国の異変」
機関に緊急の報告が届いた。
白蓮国・月白国・花雲国——東方三国で同時に「魔力の根が枯れる」現象が起きていた。
「……セラ、状況は分かるか」とライトが言った。
「……植物ネットワークで確認しています。東方三国の地下の魔力根が、急速に細くなっています」
「原因は」
「……分からないです。前回の封印の外側の現象とは違う気がして」
「ユイ、ツキ、メイリン——三国の状況を詳しく教えてくれ」
「白蓮国から定期報告が来ています」とユイが言った。「山の魔力が弱くなってはいるが、前回とは異なるパターンで」
「月白国も同様です」とツキが言った。
「花雲国からは、花の開花数が激減していると連絡が来ています」とメイリンが言った。
ライトは全員を見た。
「エレノア、空から東方を観測できるか」
「流星の軌道変化を見れば、その地域の魔力密度の変化が分かる。やってみる」
「ライラ、占いで」
「……すでに見てます。東方三国の地下に、何かある。新しいものじゃない。古い何か」
「古い何か?」
「……前世のあなたが知っているかもしれない。三国が交差する地点——花雲国の中心部に、何か眠っている」
「……花雲国の中心か」とライトが考えた。
前世の記憶を探った。
(百五十年前に花雲国を訪れた時……中心部には古代の術式が……)
「……前世で、花雲国の中心部に古代の封印を見た記憶がある。当時は無害だったが」
「また封印ですか」とエリスが言った。
「前回とは別のものだ。前世の俺が作ったわけでもない。もっと古い」
「いくつ前の前世です?」とカナが言った。
「前世は一度しかない。だが前世のアルバートが記録していた、さらに古い時代の記録がある」
「……それを調べる必要があるわね」とレイアが言った。
「東方に行く。全員ではなく、東方に縁のある者と、古代魔法に詳しい者だけ」
「私が行く」とユイが言った。
「私も」とツキが言った。
「もちろん!」とメイリンが言った。
「メルと俺で古代記録を調べる。エレノアは空からの観測を続けてくれ。サクは花雲国の現地情報を」
「任せてください!」とサクが言った。
-----
◆第14話「花雲国の中心と三千年前の封印」
花雲国の中心部に到着した。
そこは古い神殿の跡だった。
「……これは」とライトが言った。
「神殿跡です」とメイリンが言った。「花雲国の伝説では、三千年前の”花の神”が眠っている場所と言われています」
「花の神?」
「……伝説の存在で。世界の植物魔力を管理していたという」
「その存在が眠っているとすれば、三千年分の魔力が蓄積されている」
「……それが今、漏れ始めている?」とセラが言った。
「逆だ。漏れているのではなく——吸い込んでいる。三国の魔力根が細くなっているのは、この神殿に魔力が吸われているから」
「なぜ今になって」
「……目覚めようとしているのかもしれない。長い眠りの後に、周囲の魔力を吸収して」
メルが古代文書を広げた。
「……ライト、この文字、読める? 三千年前の花雲国の古代語で」
「読める。前世で研究した」
「……“花の神は三千年後に目覚める。その時、三国の魔力を糧として——”……後が見えない」
「”——咲き誇る”、か”——世界を枯らす”か」
「……どちらだ」とユイが言った。
「分からない。確認するには、神殿の核心部に入るしかない」
「……行きましょう」とメイリンが言った。「花雲国の人間として、私が先に立ちます」
「危険かもしれない」
「知っています。でも、花雲国の問題は、私が向き合います」
-----
◆第15話「花の神との対話」(感動エピソード)
神殿の核心部は花に満ちていた。
三千年分の花が、魔力で保存されたまま咲き誇っていた。
中心に、淡い光の柱があった。
「……これが花の神の眠りか」
光の柱が揺れた。
声が聞こえた。古代語で。
「……“目覚める”、と言っている」とライトが訳した。
「敵意は?」とユイが言った。
「……ない。ただ、長い眠りから目覚める感覚が、周囲の魔力を引き寄せてしまっている。意図的ではない」
「……では、三国の魔力を吸っているのは、花の神の意志じゃない?」とセラが言った。
「そうだ。眠りが浅くなって、無意識に魔力を引き寄せている。それが三国に影響している」
「どうすれば止まる?」
「……目覚めさせるか、もっと深く眠らせるか」
「目覚めたら何が起きる」
「分からない。三千年前の存在の目覚めは、現代魔法の知識の外だ」
メイリンが前に出た。
「……話しかけてみます」
「古代語は分かるか」
「花魔法は花の言語で話します。花の神なら、花の言語で伝わるかもしれない」
「やってみろ」
メイリンが膝をついて、花魔法を発動した。
花びらが光の柱に向かって舞い、複雑なパターンを描いた。
しばらくして、光の柱が答えた。
「……何と言っている」とライトが聞いた。
「……(泣きそうになりながら)……“ずっと眠っていたから、寂しかった”と言っています」
その言葉が、その場の全員に響いた。
「三千年、一人だったのか」とライトが呟いた。
「……はい。誰も会いに来なかったって」
「……分かる気がする」とライトが言った。
三百年、一人だった前世の記憶が、ほんの少し重なった。
「メイリン、伝えてくれるか。もう一人じゃないと」
「……伝えます」
メイリンが花びらで言葉を送った。
光の柱が静かになった。
三国の魔力が、ゆっくりと戻り始めた。
「……眠りが安定した」とセラが言った。「根が回復してきた!」
「……目覚めさせるのではなく、安心させた、ということか」とライトが言った。
「孤独じゃないと分かれば、無理に目覚めなくてよかった、と」
「……ライトさん」とメイリンが振り向いた。目が赤かった。
「どうした」
「……あなたが”分かる気がする”と言った。寂しかった、という言葉に」
「前世の記憶が重なった」
「……今世は、違うんですよね」
「今世は違う」
「……よかったです。本当に」
メイリンがまた花びらを光の柱に送った。
「……何を言っている」
「……“これからは定期的に会いに来る”と伝えています。花雲国を代表して」
「そうか」
「……あなたも来てくれますか。花の神が、“あの人ももう一度来てほしい”と言ったので」
「……三千年前の存在に気に入られたか」
「……魔力が優しい人は、神様にも好かれるんです」
-----
◆第16話「ラナの凱旋と地上の恋」(感動エピソード)
東方から帰還した夜、ラナが屋上に来た。
「……おかえり」
「ただいま」
「……空から追いかけてたよ。見えた?」
「見えた。花雲国の上空で旋回していただろう」
「……うん。心配で。地上でみんなが動いてる時に、空から守れることがあれば、と思って」
「助かった。エレノアと合わせた情報が判断に役立った」
「……本当に?」
「本当だ」
「……よかった。役に立てた」
「役立った」
ラナが少し間を置いた。
「……ライト」
「何だ」
「……今回、みんなが地上で動いてる時、私は空にいた。地上に降りて一緒に動きたいと思った」
「降りてよかったのか」
「……その時々で、空の方が役立てることもある。でも——地上にいたいという気持ちが、ちゃんとあった」
「それは大きな変化だ」
「……あなたがいる地上が好きだから、私も地上が好きになれた。それは本当です」
「そうか」
「……一つだけ言っていいですか」
「何だ」
「……好きです。空より、あなたがいる地上が好きで、あなたが好き」
「……大切だ。お前が地上に降りてきてくれて、よかった」
「……(泣きそうになる)……地上に降りてきてよかった。あなたに会えたから」
「そうだ」
「……これからも、ここにいていい?」
「いていい。いつでも」
ラナが翼を広げた。夜風が吹いた。
でも今夜は、飛び立たなかった。
地上に立ったまま、夜空を見上げた。
=====================================
第五章 機関の成長と心の距離
(第17話~第20話)
=====================================
◆第17話「アルマの記録と水晶の告白」
三ヶ月が経ち、機関が軌道に乗ってきた。
アルマが毎日、機関のあらゆる出来事を水晶に記録していた。
「……また記録しているのか」
「はい。機関の歴史として残します」
「俺のことも記録しているか」
「……もちろん。一番多く記録されています」
「なぜ」
「……一番記録したい人だから(即答)」
「そうか」
「……あなたの判断の変化、魔力の成長、表情の変化——全部記録しています」
「表情に変化があったか」
「……あります。入った頃より、笑顔が増えました。学園の時より、さらに増えた」
「そうか」
「……笑顔の種類も増えました。機関の仕事が充実している時の顔、誰かに感謝される時の顔、誰かと話す時の顔」
「分析しているのか」
「……好きな人の記録は自然と詳しくなります」
「聞こえている」
「……聞こえていますよ。わざと言っています」
「……そうか」
「……(初めて少し笑う)驚きませんか」
「前から分かっていた」
「……また”分かっていた”ですか」
「気づかない方が難しかった」
「……(水晶に今の会話を記録しながら)……これも、記録します」
「好きにしろ」
「……好きにします。……あなたへの気持ちも、この水晶に入っています」
「そうか」
「……いつかまた、あなたの魔力を水晶に封じてください。今度は感情も一緒に入れて」
「……わかった」
「……約束ですよ」
「約束だ」
-----
◆第18話「ルビーの初勝利と黎明の誓い」(感動エピソード)
機関内での模擬戦で、ルビーがキアに勝った。
「やった!!!!やった!!!!!!」
「……負けた。やっぱりまだまだだ」とキアが言った。
「強くなりましたよキアさんも!! でも今日は私が勝った!!」
ライトが見ていた。
「ルビー、よくやった」
「ライトさん見ててくれてたんですか!?」
「全部見ていた」
「……黎明魔法の精度、上がりましたか」
「上がった。師匠の系統を超えた部分がある」
「……師匠を超えた?」
「魔法の系統は継承しながら成長する。お前は師匠から継いで、さらに上に行った。それは本当だ」
ルビーの目が潤んだ。
「……お母さんも、超えてるかな」
「お前の黎明魔法の色は、お母さんの色も含まれている。一緒に超えたんだ」
「……(泣く)また泣いてる」
「泣いていい」
「……もうやだ、あなたといると泣き虫になる」
「感情が正直なんだ。それは悪いことじゃない」
「……(泣きながら笑う)……ありがとうございます。大好きです、ライトさん」
「知っている」
「……今日は知ってるだけじゃなくて返事を聞きたいです!!」
「……俺も、大切だ」
「……(また泣く)もう!! 泣き止まないじゃないですか!!!」
「それがお前だ」
「……(笑いながら泣く)……ありがとう。本当に、ありがとうございます」
「お母さんが喜んでいると思う」
「……(号泣)もうやだほんとに!!!! 泣き止めない!!!!」
-----
◆第19話「セシリアとクレアの合作完成」(感動エピソード)
セシリアとクレアが「前世理論超え」の合作を完成させた。
「……完成しました」とセシリアが言った。
「完成しました!!」とクレアが言った。
「見せろ」
二人が発動した魔道具は——魔力を物質に変換して、さらにその物質を別の魔力に変換することで、永久機関に近い魔力供給システムを作り出していた。
「……これは」
「前世の錬金理論と、私の魔道具理論を組み合わせた新理論です!」とクレアが言った。
「前世の理論を百年超えています!」とセシリアが言った。
「……確かに、俺の理論にはなかった発想だ」
「「やった!!!!」」二人が抱き合った。
「ライトさんの前世理論を超えました!!」
「……正直に言う」
「「何ですか!?」」
「俺の前世理論は、一人で考えた。お前たちは二人で考えた。二人分の頭脳なら超えられると思っていた」
「……知ってたんですか」
「知っていた。だから二人を合わせた」
「「……(固まる)」」
「クレア、一人でやっていたら限界があった。セシリア、一人でやっていたら限界があった。二人で合わせたから超えられた。それが今日の結果だ」
「……(クレアが泣き始めた)」
「ちょ、クレアさん!?」
「なんか……嬉しくて……ライトさんがずっと信じてくれてた気がして……!!」
「(セシリアも少し目が赤い)……私も……」
「二人とも泣くな。次の研究があるだろう」
「「あります!!(涙)」」
-----
◆第20話「ヴィオラとライトの時間」
機関の屋上で、ヴィオラが夕陽を見ていた。
「……ヴィオラ」
「……ライト。見てた?」
「今来た」
「……夕陽がきれいだから、時間を少しだけゆっくりにしてた」
「そうか」
「……一緒に見る?」
「ああ」
二人で夕陽を見た。
「……ライト」
「何だ」
「……聞いていいですか」
「どうぞ」
「……前世と今世を合わせて、一番大切なことって何だと思う?」
「……難しい問いだな」
「……のんびり考えてくれていい」
しばらくの沈黙。
「……“誰かと一緒に何かを見ること”だと思う」とライトが言った。
「どういう意味?」
「前世では、一人で全部見ていた。魔法も、世界も、空も。今世では、誰かと一緒に見ている。同じものを見ていても、全然違う」
「……一緒に見ると、どう違う?」
「……豊かになる」
「……(静かに微笑む)……私も、あなたと一緒に見る時間が好きです」
「そうか」
「……これからも、一緒に見てもいいですか」
「いい」
「……(時間魔法で夕陽を少しだけ長くする)……もう少しだけ、この時間を」
「好きにしろ」
「……(小声)好きにしてます。あなたのそばで」
「聞こえた」
「……聞こえてください」
「そうか」
夕陽が、ゆっくりと沈んでいった。
=====================================
第六章 世界の端の約束
(第21話~第24話)
=====================================
◆第21話「一年後の全員集合」
機関が設立されて一年が経った。
記念に、全員が機関に集まった。
学園時代のメンバー+機関の新メンバー。
食堂にはリナとメイリンの合作料理が並んだ。
「全員分、作りました!!」とリナが言った。
「東方料理と西方料理の融合版です!!」とメイリンが言った。
「リナさん、花びら料理うまくできましたよ!」
「メイリンさんのおかげです!!」
レナが「六枚のトレーは今日は七枚にする」と言った。
「増えている」
「記念日だから」
「七枚食べ切れるか」
「食べ切ります。一年分の食欲があります」
-----
アリアが挨拶した。
「一年間、お疲れ様でした♪ 機関は軌道に乗りました♪ これも皆さんのおかげ♪」
「アリア、今日は本物の笑顔で言っているか」と全員が聞いた。
「……本物です(少し赤い)。本当に、ありがとう」
「珍しい」
「練習しました。一年かけて」
-----
シャルが光の蝶々を飛ばした。
「先生! 機関の一周年おめでとうございます!」
「ありがとう」
「……先生はまだ先生ですよ。どこにいても、ずっと」
「そうしろ」
「……(泣きそう)……来てよかった。みんなに会えてよかった」
-----
◆第22話「それぞれの恋と、ライトの答え」
一年記念の夜、全員での食事が終わった後。
ライトが庭に出ると、一人ずつやってきた。
-----
最初にシャルが来た。
「……先生」
「何だ」
「……一つだけ言っていいですか」
「どうぞ」
「……学園の時から、ずっと好きでした。先生として、だけじゃなく」
「……知っていた」
「……知ってたんですね」
「最初から」
「……(泣く)先生はずるい」
「なぜ」
「……全部分かってて、待っていたでしょう」
「お前が自分で言えるまで、待っていた」
「……(もっと泣く)……ずるい……でも、ありがとう。待っていてくれて」
「こちらこそ。言ってくれてありがとう」
-----
次にレイアが来た。
「……卒業式に言うと言っていたことを、ちゃんと言う」
「聞いている」
「……好きだ。ずっと。ライバルとして、だけじゃない」
「……知っていた」
「……(少し怒る)なぜ毎回知っているんだ」
「お前が分かりやすいからだ」
「……(真っ赤)……それは恥ずかしい」
「正直だということだ」
「……ライト。あなたは、どう思う」
「……俺も、大切だ。全員が。でも——お前とエリスとシャルは、特別に大切だ」
「……全員、大切で、その中で特別が複数いるのか」
「そうだ。正直に言う」
「……(少し笑う)……正直なのはあなたらしい。……それでいい。今は」
「……そうか」
「……いつかはちゃんと、一人を選んでほしいと思っている。でも今は——みんなと一緒にいるあなたが幸せそうだから、それでいい」
「……ありがとう」
「……こちらこそ」
-----
エリスが来た。
「……何年越しだろう、ちゃんと話すの」
「長かったな」
「……あなたに好きだと言ってから、ちゃんとした返事をもらえていない」
「……そうだな」
「……いつか、ちゃんと答えてほしい。一人を選ぶ時に」
「……その時は必ず答える」
「……約束?」
「約束だ」
「……(少し泣く)……やっと約束してくれた。ありがとう」
「こちらこそ」
「……あなたって本当に、最後に”こちらこそ”を言うのね」
「俺の方が感謝することが多いからだ」
「……(また泣く)……もう!! そういうことを言うから!!」
「本当のことだ」
「……(泣きながら笑う)……知ってる。だから困る」
-----
◆第23話「ラッキースケベ最終章・機関の大事件」
一周年記念の翌朝、機関で大事件が起きた。
クレアとセシリアの合作装置が誤作動した。
「「なぜ!!!!」」
装置が建物全体の重力を一時的に乱した。
全員が宙に浮いた。
「また!!」とベルが言った(重力魔法使いとして責任を感じた)。
「私じゃないです今回は!!」
「クレアとセシリアの装置です!!」とアルマが空中で書類を押さえながら言った。
「直します!!」とクレアが言った。
「直します!!」とセシリアが言った。
ライトが重力制御で全員を安全に下ろし始めた。
一人ひとり、順番に地面に下ろしていく。
最後の一人がパールだった。
「……ライトさん! 助けてください!!」
「今行く」
空中でパールを支えて下ろした。
「……ありがとうございます! でも!」
「でも?」
「……また抱えてもらってる!!」
「安全に下ろすには必要だった」
「……わかってます!! でもこの距離が!!」
「離れるか」
「……(少しだけ間)……いいです(小声)」
「聞こえた」
「……今日は聞こえてもいいです!!!」
-----
装置が直った後、クレアが全員に謝った。
「……本当に申し訳ありませんでした!!」
「「申し訳ありませんでした!!」」とセシリアも続いた。
「怪我はなかったか」とライトが全員を確認した。
「……なかったです。でも」とアルマが言った。
「何だ」
「……水晶に記録されました。全員が空中に浮いた瞬間が。特にライトさんが全員を下ろしている場面が」
「消すか?」
「……消しません。機関の歴史として」
「そうか」
「……あと、個人の記録としても保管します」
「好きにしろ」
「……(微笑む)好きにします」
-----
◆第24話「世界の端の約束・全員の答え」(最終話・大感動エピソード)
一年記念の翌日。
機関の庭に、全員が集まった。
学園の桜の木ではない。でも、庭に咲いたメイリンとサクの花の中で、全員が集まった。
-----
フロストがライトの肩に止まった。
《ご主人様》
「何だ」
《五年ぶりに聞きます。今世は——幸せでございますか》
ライトはしばらく考えた。
前世では三百年、孤独だった。
今世では学園で四年、機関で一年——五年で、こんなにも多くの人と出会った。
「……前世で手に入らなかった全てを、今世で手に入れた。それ以上のものも手に入れた」
《それ以上のもの、でございますか》
「前世では想像もしなかったものだ」
《何でしょう》
「……みんなが俺を必要としてくれること。そしてみんなを、俺が必要としていること」
《双方向でございますな》
「前世は一方通行だった。俺が世界を守るだけで、誰も俺を守らなかった。今世は——俺が守り、みんなが守ってくれる」
《それが幸せ、でございますか》
「それを幸せと呼ぶのだと、今世で知った。前世では知らなかったことだ」
《よございました》
「……お前も、ありがとう。ずっとそばにいてくれた。前世も今世も」
《それが私の幸せでございます》
「そうか」
-----
全員がライトを見ていた。
「何だ」とライトが言った。
「……先生」とシャルが言った。
「何だ」
「……みんなで、ここにいます。学園の桜の木の下じゃないけど——でもここに、みんないます」
「そうだな」
「……それが答えだと思います。先生がここにいること。みんながここにいること。それが全部の答えで」
「……そうだな」
「……泣いてもいいですか」
「好きにしろ」
シャルが泣いた。
レイアが「素直じゃない人が珍しく素直なことを言った」と言った。
「誰のことだ」
「あなたのことよ」
「……そうか」
エリスが「約束、覚えてるわよ。いつかちゃんと答えてね」と言った。
「覚えている」
「……楽しみに待ってる」
-----
カナが太陽魔法を展開した。庭が昼より明るくなった。
「みんなに光を!!」
「眩しい」
「太陽は眩しいものです!!」
-----
ノアが星を昼に映した。
「……星が言っている。これは始まりの始まりだと」
「どういう意味だ」
「……学園が始まりで、機関が次の始まりで——この先にも、始まりが続くと」
「そうか」
「……あなたのそばで、続きを見ていい?」
「来い」
「……(銀の瞳が静かに輝く)」
-----
ミントが演奏を始めた。
「今日の音を、また記録します! みんなの魔力の音、一年で全部変わったので!」
「どう変わった」
「……全員が、温かくなりました。去年より全員の音が温かい。中心にいるライトさんの音が一番変わりました」
「どう変わった」
「……豊かになりました。一年前より、ずっと」
-----
イヴが静かに歌った。
今日の歌は、去年の海の夜より、さらに明るかった。
「……制御できてる?」とライトが聞いた。
「……できてる。あなたがそばにいるから」
「そうか」
「……一生、そばにいてほしい。声の制御のために、じゃなくて」
「……わかった」
「……(かすかに囁く)本当に?」
「本当だ」
「……(囁き魔法が思わず発動して、全員が少しだけ笑顔になる)」
「……制御できてるか?」
「……半分は意図的です」
「そうか」
-----
サクが花びらを舞わせた。
「みんなに桜の花びらを!」
「花の神様も喜んでいます!」とメイリンが言った。
「本当か」
「……花魔法で感じられます。花雲国から、喜びの気配が」
「そうか」
「……一緒に伝えに行きますか、いつか」
「そうしよう」
「……(花が一斉に咲く)……また咲いてしまいました」
「今日は好きにしていい」
「……(もっと咲く)」
-----
エレノアが流星を一本、夜空に走らせた。
「……一年前に比べて、軌道制御が上手くなったでしょ」
「上手くなった。明らかに」
「……あなたと練習したから」
「そうだな」
「……また流星を、一緒に見ましょう。今夜も、来年も、ずっと」
「そうしよう」
「……(金色の瞳が輝く)……ありがとう。流れ星みたいな人」
「俺が?」
「……光り続けているから」
-----
アルマが水晶を取り出した。
「……記録しています。今日の全部を」
「そうか」
「……あなたの今の顔が、今まで記録した中で一番穏やかです」
「そうか」
「……大切にします、これからも。あなたの記録を」
「頼む」
「……あと」
「何だ」
「……次に水晶実験をする時、今度は私の魔力も入れてください。あなたと私の魔力が混ざった水晶を作りたい」
「……わかった」
「……約束ですよ」
「約束だ」
-----
リリアが「一年間のあなたの体の変化を記録しました!!」と言った。
「研究か」
「……半分は。もう半分は、あなたの隣にいたかったから、口実にしてました」
「正直だな」
「……九対一が、今は一対九になりました」
「どちらが多い」
「……(真っ赤)……仲良くなりたいより、好きな方が大きくなりました。成長が速くて自分でも驚いてます」
「そうか」
「……(笑う)「そうか」だけですか」
「大切だ。それは本当だ」
「……(もっと真っ赤)……ありがとうございます」
-----
ミレイユが機関全体を見渡した。
「……風の流れが、一年前より穏やかになりました」
「建物のか」
「……人の心の風水も、です。ここにいるみんなの気持ちが、一年で整ってきた。それはあなたが中心にいるからです」
「俺が中心か」
「……この機関の、ある意味で心臓です。あなたが豊かだから、全体が豊かになる」
「俺は何もしていない」
「……そんなことはありません。あなたが一つ一つ丁寧に向き合ってきたから、全員がここにいる」
「……そうか」
「……これからも、一緒に作りましょう。世界を。机が近いうちは特に」
「……机が近いのか」
「……環境部門と代表室が隣なので。よく聞こえます、代表室の声が」
「そうか。何かまずいことを言っていたか」
「……まずいことは何も。ただ、独り言が増えました、あなた。人が増えてから」
「……気づいていなかった」
「……(微笑む)素敵な独り言でしたよ。いつも」
-----
ファン・メイリンが花びらを全員に送った。
「花雲国から、感謝を込めて!」
「今年もお世話になりました!」
「世話になったのは俺の方だ」
「……(花が咲く)嬉しいと咲くので、許してください!」
「今日は好きに咲かせろ」
「……(爆発的に咲く)今日は止まらないかもしれません!!」
-----
サク・ハナミが桜の花びらを夜空に散らした。
「春じゃないけど、お祝いに!」
「きれいだ」
「……受け止めてくれますか」
「何を」
「……花びらと、気持ちを」
「どちらも受け止める」
「……(にこっと笑う)……ありがとうございます。あなたにとって”どちらも”がある人間で嬉しいです」
-----
全員が庭に集まった。
花が咲き、星が輝き、流星が走り、音楽が流れ、蝶々が舞い、光が溢れた。
ライトが全員を見た。
前世では一人で三百年守った世界を、今世では全員と一緒に守っている。
前世では一人で見上げた空を、今世では全員と見ている。
「……前世の俺に、一つだけ伝えたいことがある」
「何ですか?」とシャルが聞いた。
「……待っていれば、こうなる。一人でいなくていい、と」
「……(シャルが泣く)」
「……(レイアが静かに目を閉じる)」
「……(エリスが少し笑う)」
「……(全員が何かを感じている)」
《よいことをおっしゃいましたな、ご主人様》
「そうか」
《前世のご主人様に届きましたでしょうか》
「……届いたと思う。今の俺が、その答えだから」
花びらが舞った。
星が流れた。
音楽が止まなかった。
全員が、笑っていた。
ライトも——笑っていた。
-----
これが終わりではない。
機関はまだ始まったばかり。
世界はまだ広い。
でも——今、ここで、全員がいる。
それが、世界最強の魔法使いが、前世と今世を合わせて——
ようやく、完全に理解したことだった。
一人では、幸せになれない。
誰かと一緒に——初めて幸せになれる。
それが、転生という奇跡が教えてくれた、最後の真実だった。
-----
了
=====================================
登場人物一覧(5期完全版)
=====================================
【主人公】
・ライト・アシュトン(19→20歳)
世界魔法統括機関・初代代表。
前世では三百年一人だった世界最強が、今世五年で二十数人と共に世界を守っている。
笑顔が自然になった。独り言が増えた(ミレイユ談)。
【5期新登場ヒロイン】
・アルマ・クリスタルハート(17→18歳)
機関の事務主任。全ての出来事を水晶に記録し続けている。
初めて笑顔が増えた——ライトの前でだけ。
・リリア・エバーグロウ(16→17歳)
機関の成長魔法研究員。医療魔法の新分野を開拓。
“好き”の感情が研究より速く成長した(本人調べ)。
・ファン・メイリン(16→17歳)
機関の花魔法・食文化部門。リナと合作料理を日々開発。
嬉しいと花が咲く体質は、今後も続く。
・エレノア・スターダスト(17→18歳)
機関の流星魔法・宇宙観測部門。ノアと並んで夜空を読む。
ライトと流星を制御した夜を、一番大切な記憶にしている。
・サク・ハナミ(15→16歳)
機関の戦闘部門・花見魔法特化。花びらで戦う最強の乙女。
ライトが花びらを受け止めてくれた日から、ずっと好き。
・ミレイユ・ヴァンクール(18→19歳)
機関の環境部門主任。代表室の隣から、いつもライトの気配を感じている。
机が近いのは計算通り(本人は認めない)。
【使い魔】
・フロスト
五年目の「幸せですか」への答えが、今までで一番長く、一番豊かだった。
これからも、ずっと、ご主人様のそばにいる。
# =====================================
END
【転生魔法学園記】第五期 全24話 完全版




