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OREZAN――種族が「???」な俺、ステータス改竄で神を超える  作者: VIKASH


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14 神の三択




 静寂が、遅れて現実に追いついた。


 瓦礫が崩れ、風が動き出し、冒険者たちは何事もなかったかのように周囲を見渡す。


 だが零には分かっていた。


 世界は、ほんのわずかに“歪んだ”。


「上位層へ報告……か」


 零は空を見上げる。


 雲は穏やかだ。空は青い。何も変わらない。


 だが、観測の圧が増している。


 見られている。


 値踏みされている。


「零」


 レイリアが袖を掴む。


「今の干渉……あなた、無事なの?」


「問題ない」


 即答だった。


 だが、わずかに指先が震えている。


 世界の外側は、冷たい。


 演算と確率だけが支配する層。


 そこに触れた感覚が、まだ神経に残っていた。


「俺は外側に座標をずらしただけだ。

 内部の法則は適用されない」


「それが一番危険なのよ」


 レイリアは低く言う。


「内部にいない存在は、“修正”じゃなくて“排除”される」


 零は黙る。


 事実だ。


 管理者は演算装置。


 だがその上位にいる観測者は、意思を持つ。


 意思は、恐れを持つ。


 恐れは、排除を選ぶ。


「来るな」


 零は静かに言う。


「来るなら俺だけに来い」


「……それ、平和主義?」


「巻き込まない主義だ」


 レイリアは小さく笑う。


 その表情がある限り、零は暴走しない。


 だからこそ彼女は動けたのだ。


 観測停止の中で、ただ一人。


「ねえ、零」


「なんだ」


「あなた、あのとき見えたんでしょう。もっと上」


 零は肯定も否定もしない。


 代わりに言う。


「この世界は四層構造じゃない」


「……何層?」


「少なくとも七。

 いや、可変だ」


 レイリアの瞳が鋭くなる。


「それって」


「観測者は固定じゃない。世代交代制だ」


 四つの国に一人ずつ、象徴がいるように。


 神もまた、世代交代する。


 ならば。


「頂点も、永遠じゃない」


 零は確信する。


 世界は閉じていない。


 更新される。


 ならば神もまた、交代できる。


「零」


 レイリアの声が真剣になる。


「あなた、何を考えてるの」


「争わない方法」


 即答。


「上位層が干渉する理由は二つ。

 秩序維持と、逸脱の排除」


「うん」


「なら、俺が“秩序”になればいい」


 レイリアが息を止める。


「……それ、神になるって意味?」


「違う」


 零は首を振る。


「神を終わらせる」


 その言葉に、空気が張り詰める。


「支配の頂点がある限り、下層は常に観測される」


「でも、それを壊したら」


「壊さない」


 零の瞳は冷静だ。


「移行させる」


 中央集権型観測から、分散型観測へ。


 一極支配から、多点干渉へ。


 誰もが“少しだけ”神に近い世界。


「それが、革命?」


「ああ」


 破壊ではない。


 再設計だ。


 そのときだった。


 空が、わずかに白く染まる。


 今度は停止ではない。


 同期だ。


 世界全体が、同時に何かを受信する。


 声が響く。


 巨大で、透明で、感情の薄い声。


「外部干渉個体、零=アルセモニウス」


 冒険者たちは気づかない。


 だが零とレイリアには明確に届く。


「上位観測会議にて審議開始」


 複数の視線。


 多重の意思。


 七つ以上。


「選択肢を提示する」


 空間に三つの光が浮かぶ。


「一、内部存在へ再定義。能力制限の上、存続許可」


「二、外部層へ強制昇格。管理補助存在として採用」


「三、完全削除」


 レイリアが零を見る。


「……どれも最悪ね」


「いや」


 零は光を見つめる。


「選択肢がある時点で、交渉可能だ」


 上位層は迷っている。


 零は脅威だが、有用でもある。


 だから“審議”。


「回答を要求する」


 世界が待つ。


 零はゆっくりと息を吸う。


「第四案を提示する」


 沈黙。


 観測圧が強まる。


「中央管理の廃止。権限分散化。上位層の縮小」


 ざわめきのようなノイズが走る。


「不許可。管理なき世界は崩壊確率上昇」


「上昇するだけだ。確定じゃない」


「人類は未熟」


「それを決めるのは、お前たちか?」


 静かだが、強い声。


「俺は神にならない」


 レイリアが息を呑む。


「だが、神を一人にもしない」


 光が揺らぐ。


 上位層の演算が乱れる。


「零=アルセモニウス」


 声がわずかに感情を帯びる。


「それは革命行為と認定する」


「構わない」


 零は答える。


「でもこれは戦争じゃない」


 拳を握る。


「これは、引き継ぎだ」


 世界の主導権を。


 管理から選択へ。


「最終通告」


 光が収束する。


「外部層昇格を受諾せよ。さもなくば削除」


 レイリアが囁く。


「零、拒否したら」


「ああ。戦闘だ」


 だが零は笑う。


「平和主義ってのはな」


 空を見上げる。


「最初に殴らないだけで、殴り返さないとは言ってない」


 観測圧が極限まで高まる。


 七層の向こうから、何かが降りてくる。


 今度は管理者ではない。


 真の上位存在。


 だが零は一歩も引かない。


「誰も俺を定義できない」


 その言葉と同時に。


 零の背後に、淡い光が広がる。


 それは神格ではない。


 可能性だ。


 分散する未来の光。


 観測者たちが、初めて“躊躇”する。


 そして。


 世界のどこかで、確率が傾いた。


 革命の芽が、確かに発芽する。


 戦いは序章。


 だが選択は、もう始まっている。


 零は静かに告げる。


「俺は、世界を作り直す」


 破壊ではなく。


 奪取でもなく。


 継承でもなく。


 再設計として。


 空の向こうで、上位観測層が初めて“沈黙”した。


 それは拒絶か。


 あるいは――


 承認か。


 まだ、誰にも分からない。






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