普通の冒険者、戦後処理について話し合う
それからしばらくして、逃げたグリフォンを追いかけていた冒険者たちが、怪鳥の死体を前に立ち尽くすウィルを見つける。
「リーダー!」
体の大きさを活かして一気にウィルの隣に並んだロゼは、心配そうに彼の体を確認する。
「体は……だ、大丈夫なのか?」
「えっ? あっ、うん……何とか大丈夫。皆がかけてくれた防御バフのお陰でね」
「そ、そうか……よかった」
ウィルの体を一通り確認して、本当に大事ないことを確認したロゼは心から安堵したように嘆息すると、ぐったりと動かないグリフォンへ目を向ける。
「やったのか?」
「ああ、どうにかね」
返り血で全身を濡らしたウィルは、動かなくなったグリフォンを見て小さく嘆息する。
「グリフォンのやつ、最後に命乞いをしてきたよ」
「そうか……」
ロゼはウィルの隣に立つと、虚ろな目のグリフォンを見る。
「散々好き勝手生きて来て、最後だけみっともなく命乞いするとか……まるで人間みたいじゃないか」
「ハハハ、そういった意味では人も魔物も大きく変わらないのかもね」
「まあ、だとしてもあたしたちが分かり合える日が来るなんて思わないけどな」
「そう……だね」
ロゼの言うことは尤もだし、人と魔物が手と手を取り合う未来なんて想像もつかない。
「だけどね……」
極限まで弱り、必死に命乞いをするグリフォンを見てしまったウィルとしては、そんなあり得ない未来を思わず考えずにいられなかった。
「いや、よそう……」
ウィルはゆっくりかぶりを振ると、グリフォンの死体に背を向ける。
グリフォンのように大きな魔物が生きていくためには、それだけ多くの資源が必要になるのだ。
水も食べ物も無限に湧き出て来るわけではない以上、限りある資源を賭けて争うしかないのだ。
「帰ろう。そしてクエストの報告をしよう」
自分のやるべきことはやったと、ウィルは仲間たちに声をかける。
クエスト終了の報告までが冒険者の仕事だ。
そう思って撤収の旨を全員に伝えようとするが、
「ちょっと待つのじゃ!」
少し遅れてやって来たロウガが、帰るのはまだ早いと待ったをかける。
「グリフォンの死体をこのままにしてはいかんぞ」
「あっ、そうですね」
グリフォンの討伐というクエストは達成したが、冒険者としての仕事はこれだけじゃない。
「疲れて忘れてましたけど、大切な仕事が残ってましたね」
倒した魔物を解体して、有効な素材を剥ぎ取るという仕事がある。
冒険者の主な報酬はクエスト達成の報酬だが、それ以外にも倒した魔物から剥ぎ取った素材も大きな収入源だ。
毛や皮は勿論、血肉や骨、場合によっては内臓すらも価値があったりする。
それにグリフォンのような大きな魔物は、死骸をそのまま残すと腐って腐ると大量のウジ虫やハエが発生するだけでなく、病気の発生源になることもある。
「ですが、問題は剝ぎ取った素材をどう分けるかですよね」
いつもなら素材は全て売って得たお金を仲間内で等分で分けるので、問題になったことはないが、今回は如何せん人数が多い。
「とりあえずそれは後で考えるとして、少しでも運びやすくするために解体しますか?」
「いやいや、何を言っておるのじゃ」
ウィルの提案を、ロウガが顔の前でチッチッと指を左右に振りながら否定する。
「グリフォンの死体は、持って帰るのが基本なのじゃ」
「えっ、持って帰る……んですか?」
「ああ、そうか。ウィルは知らんのじゃな?」
目を真ん丸に見開いて驚くウィルに、ロウガはニヤリと笑ってとっておきの情報を話す。
「グリフォンの肉はな……格別にうまいんじゃぞ」
「……えっ?」
「だから解体はワシ等のような素人がやるんじゃなくて、町の肉屋に頼むのじゃ」
「じゃ、じゃあ……」
「そういうことじゃ、肉が腐らん内に早く町に運ぶぞ」
そう言ってロウガは手を叩きながら、冒険者たちにグリフォンの死体を運ぶから手伝うようにと矢継ぎ早に指示を出していった。




