普通の冒険者と暴走しがちな若者
「キエェッ!?」
これまでとは違う反応を見せる冒険者たちを見て、グリフォンは戸惑ったように一歩後退りする。
さらにそこへ、
「そう簡単に逃がさなくってよ!」
リーリエの凛とした声が響いたかと思うと、飛来してきた矢がグリフォンの右目を穿つ。
「ギジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ!」
片目を失ったグリフォンが大きくのけ反ると、そこへ冒険者たちが殺到して次々と攻撃を加えていく。
「ふむ……これで勝負ありじゃな」
一時はどうなるかと思ったが、ルーキーたちの勇気を振り絞った行動から戦局が大きく動いたことに、ロウガは感慨深げに頷く。
「やはりいつの世も、時代を動かすのは新たな可能性じゃな」
まだ止めまでには至っていないので、後はどうやって決着をつけるべきか?
そんなことを思うロウガの視線に、前へと飛び出す複数の影が映る。
それは、これまで裏方に徹していて、たいした活躍をしていない後衛担当の冒険者たちだった。
「お、おい……」
予定にない行動をする冒険者に、ロウガは狼狽えながら尋ねる。
「お主たち、一体どうしたんじゃ?」
「ロウガさん、見ていて下さい!」
「このクエストの決着を、俺たちの魔法でつけてみせますよ」
そう言って三人の魔法使いたちは、横並びになってそれぞれの杖を構える。
「皆さん、グリフォンに止めを刺しますからどいて下さい!」
「黒焦げになっても知りませんですからね!」
それぞれが火球を生み出しながら、三人の魔法使いたちは一斉にグリフォンに杖を向ける。
「い、いかん! お前たち、止めるのじゃ!」
三人の魔法使いを慌てて止めようとするロウガであったが、
「「「いっけええええええええええええええええええええぇぇぇ!」」」
既に自分たちが英雄になると思い込んでいる三人の魔法使いたちは、ロウガの忠告を無視して火球を発射する。
「うおっ!?」
「危なっ! 皆、逃げろおおおおおおぉぉぉ!」
「後ろの馬鹿が暴走したぞ! 全員、退避だあああああぁぁぁ!」
背後からやって来る三つの火球に、グリフォンに責め立てていた冒険者たちは蜘蛛の子を散らすように慌てて逃げ出す。
火球はそのままグリフォンへと吸い込まれていき、大爆発を起こす。
「うおおぉぉ!」
「熱っ、あちちち……」
「あ、危なかった……」
殆ど不意打ちに近い攻撃であったが、素早い声掛けもあって幸いにも冒険者たちは火球が着弾するより早く退避することに成功する。
「やった! 今度こそやったぞ!」
「俺たちがやったんだ!」
「ヘヘッ、これで次の査定で昇級間違いなしだぜ」
もうもうと立ち込める煙で視界は全く利かないのだが、三人の魔法使いは既に勝利を確信したようにはしゃぐ。
「あ、ああ……」
だが、かつてグリフォンと戦った経験のあるロウガは肌で感じていた。
あの程度の攻撃ではグリフォンを倒すことはできない、と。
「お前たち、まだ気を抜く出ない! グリフォンはまだ倒れておらぬぞ!」
「な、何だって!?」
「まだ生きているのか?」
ロウガが必死に叫ぶと、冒険者たちが再び戦闘態勢に入る。
だが、問題はそれだけではなかった。
「グリフォンが逃げるぞ! 急いで奴を……奴を取り押さえるのじゃ!」
ロウガが叫ぶと同時に、煙の中から巨大な影が飛び出すのが見える。
それは炎の魔法によって網が焼き切れ、両方の羽が自由になって再び空を飛ぶ力を得たグリフォンだった。
右目を失い、全身に火傷を負って片側の足から血を流しながらも、空の王者たるグリフォンはまだ倒れない。
「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェ!!」
グリフォンは捨て台詞を吐くように冒険者たちに向かって吠えると、背を向けて大空へと飛び立っていく。
「クッ、しまった!」
「逃がすな! 走って追いかけるんだ!」
既に手の届かないところまで行ってしまったグリフォンを、冒険者たちは追撃しようとするが、
「お、おい、あれ……」
ある異変に気付いた冒険者の一人が、グリフォンの足元を指差す。
「誰かがグリフォンの羽に残った網に取り付いてるぞ!」
「あの一瞬で行動できる奴なんていたのか?」
「だ、誰だ?」
冒険者たちがグリフォンの足元へと注視する中、
「ま、まさか……」
嫌な予感がしたメイプルが、飛び立つグリフォン見て顔を青くさせる。
「に、兄さん!?」
悲痛な叫び声を上げるメイプルの目に、グリフォンと一緒にみるみる上層していくウィルの姿があった。




