普通の冒険者の頑張りに、奮い立つ者たち
「ウィル!」
前に出るウィルに、背後からリーリエの声が飛んでくる。
「わたくしが援護しますから、あなたは存分に舞いなさい」
「はい、ありがとうございます」
リーリエの頼もしい言葉に感謝しながら、ウィルは一人でグリフォンの前に立つ。
「さあ、来い!」
「キエエエエエエエエエエエエエエェェッ!」
ウィルの声に応えるように、グリフォンは右の翼を振って再び羽の礫を飛ばす。
「それはもう読めてる!」
まとめて飛んできた複数の羽をウィルは冷静に盾で受け止め、盾で半身を隠しながらグリフォンへ接敵する。
「キエッ!?」
羽を跳ね除けて突撃してくるウィルを見て、グリフォンが迎撃態勢を取ろうと自由に動かせる右の翼を大きく広げる。
すると、
「隙だらけでしてよ!」
木の上からリーリエの声が聞こえ、グリフォンの首筋に二本の矢が突き刺さる。
「――キシャッ!?」
突然の不意打ちに、グリフォンの動きが僅かに止まる。
「ウィル、男を見せなさい!」
「はああああぁぁぁ!」
リーリエの期待に応えるように、ウィルは気合の雄叫びを上げながらハルバードを振るう。
走る勢いも乗せた強烈な一撃は、グリフォンの首を落とすべく銀閃を描きながら目標へと吸い込まれていき、鈍い音を立ててグリフォンの首を捉える。
「やったか!?」
首への致命的な一撃の直撃に、冒険者たちの間から歓声が上がる。
だが、ハルバードはグリフォンの首を捉えたものの、両断するまでには至らず、刃が少し埋まったところで止まっていた。
「クッ……硬い」
断ち切れなかったことに歯噛みするウィルの目に、グリフォンが首元を血で赤く染めながらジロリと睨むのが映る。
「――っ!?」
グリフォンの視線に、危機感を覚えたウィルは咄嗟にハルバードを引こうとするが、
「ぬ、抜けない……」
いくら力を込めても、グリフォンの首に埋まった戦斧はびくともしない。
「キエエエエエエエエエエエエエエェェェェ!」
それどころか、グリフォンが威嚇するように立ち上がると、ハルバードを巡る綱引きに負けてウィルの体が前に大きく崩れる。
「し、しまった!」
もっと早く武器を捨てるべきだとウィルが後悔するが、時すでに遅し。
倒れたウィルを踏み潰そうと、グリフォンは大きく振り上げた足を容赦なく振り下ろす。
「ま、まだだ!」
このままやられるわけにはいかないと、ウィルが盾を構えると同時に、
「や、やらせない!」
「俺たちだって、冒険者なんだ!」
頼りになる先輩の離脱に、先程まで怯えて縮こまっていた二人の盾役の冒険者がウィルの前に立ちはだかって、二枚の盾でグリフォンの足を受け止める。
「うぐぅぅ……」
「ウィルさん、早く下がって!」
「あ、ああ、わかった」
苦悶の表情を浮かべて叫ぶ声に、ウィルは素早く立ち上がって後方へ下がる。
「よし、よくやった。ひよっこども!」
ウィルが安全な場所まで退避すると、腕の傷を回復してもらったロゼが入れ替わるように前へ出て来る。
「喰らいやがれ!」
盾役の二人を攻撃しようとするグリフォンの足に向かって、ロゼが斧を思いきり叩き付ける。
次の瞬間、甲高い音と激しい火花を散らしながらロゼの斧とグリフォンのかぎ爪が激突する。
そのまま鍔迫り合いへと発展するかと思われたが、
「この……いい加減、倒れやがれえええええええええぇぇぇぇぇ!」
ロゼが咆哮しながらさらに斧を押し込むと、グリフォンの三本あるかぎ爪の一つが切り裂かれて宙を舞う。
「キシャアアアアアアアアアアアアアァァァ!」
これまでとは違う確かな一撃を受けたグリフォンが、血をまき散らしながら激しくのたうち回る。
「どうだ!」
グリフォンの返り血で顔の半分を真っ赤に染めたロゼは、獰猛に笑って大声で叫ぶ。
「お前たち、今こそ冒険者魂を見せる時だろ! 突撃だああああああああぁぁぁ!!」
「行くぞ! ここが勝負の時だ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!」
「俺たちで、グリフォンを倒すんだああああぁぁぁ!」
ロゼが斧をグリフォンへと突きつけると、冒険者たちが鬨の声を上げながら怪鳥へと一斉に襲い掛かる。
「――ッ!?」
迫る冒険者たちに、グリフォンは再び羽の礫を放って牽制する。
「うがっ!」
「ぐううぅぅ……」
広範囲に及ぶ容赦のない攻撃に、直撃を受けた冒険者たちの足が止まりかける。
だが、
「……ここで、止まってられるかよ!」
「タンクたちの頑張りを、無駄にするなああああぁぁ!」
「ああ、ここであのバケモノを駆逐するんだ!」
ウィルたちの活躍、そしてロゼの鼓舞に刺激を受けた冒険者たちはすぐさま立ち上がると、再びグリフォンへと肉薄する。




