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普通の冒険者と怪鳥の戦い

「――ッ!?」


 飛来する矢の存在に気付いたグリフォンが慌てて翼を広げて飛び立とうとするが、それより早く開いた胸に矢が次々と突き刺さる。

 だが、体を覆う分厚い羽毛に阻まれたのか、矢は命中したものの、出血するような傷を負った様子はない。


「キケエエエエエェェ!」


 それでも多少の効果はあったのか、グリフォンはさらに撃ち込まれる矢を嫌がるように体を左右に振る。



「よし、グリフォンの野郎に隙ができたぞ!」


 矢を払うことに固執するグリフォンを見て好機と見たのか、左の茂みからロゼたち前衛の戦士たちが飛び出してくる。


 その中でも他の者より体躯が大きいバーバリアンのロゼは、誰よりも早くグリフォンへと迫って手にした斧で切りかかる。


「一番槍もらった!」


 威勢のいい掛け声を上げながらロゼが斧を振るうが、グリフォンは大きく羽ばたいて長いかぎ爪で斧を弾く。


「チッ! こしゃくな……」

「おいおい、姉ちゃん、出過ぎだぜ」

「後は俺たちに任せな!」


 斧を弾かれ、大きくのけ反ったロゼと入れ替わるように、二名の男性がグリフォンへと襲い掛かる。


 だが、


「キエエエエエエエエエエエエエエェェェ!」


 二人が攻撃を仕掛けるより先に、グリフォンは大きくいなないて翼を大きく羽ばたかせて浮き上がる。


「チッ!」

「待て! 逃げるな!」


 攻撃ができなくなった二人が武器を振り回しながら怒声を上げるが、グリフォンは尚も羽ばたいて冒険者たちを嘲笑うように安全な空へと逃げていく。


 このままでは、みすみす獲物を逃してクエスト失敗となってしまう。


 ……そう思われたが、


「よしっ!」


 逃げ始めたグリフォンを見て、ウィルは焦るどころか笑みを浮かべる。

 何故ならこれまでのグリフォンの動きが、全てウィルの予想通りだったからだ。


 ウィルはグリフォンの位置を確認しながら振り返ると、大きな声で呼びかける。


「ロウガさん、お願いします!」

「ほい来た。お前たち、今じゃ!」


 後ろに控えていたロウガが指示を出すと、周囲からボン、と小さな爆発音が響いてグリフォンの真上に巨大な影が差す。


「――ッ!?」


 異変に気付いたグリフォンが視線を上へと向けるが、それより早く怪鳥を影が襲う。


「キシャアアアアアアアアアアアアアァァァ!」


 グリフォンが奇声を上げながら向かってきたものを迎撃しようとするが、怪鳥より大きなそれは巨体にのしかかり、広げられた翼に絡まっていく。


 それは網目状に編まれた巨大な糸の束、ロウガがランドに頼んで一晩で作ってもらった巨大な網だった。


 それが二つ、グリフォンの左の翼の動きを封じるように複雑に絡まると、空中でバランスを失った怪鳥は飛ぶ力を失って落ちて来る。



 グリフォンが地響きを上げて墜落すると同時に、ウィルは大声で冒険者たちに指示を出す。


「今です! この機を逃さず、一気に勝負を決めましょう!」


 ウィルの声に、裏で待機していた冒険者たちが一斉に動き出す。


「よっしゃ、ここからが本番だぜ!」

「いけるぞ! 俺たちでグリフォンを倒すんだ!」

「安全な距離を保つことだけは忘れるな。絶対に無理はするな!」

「それと、魔法使いは味方の同士討ちだけは気をつけろよ! 手は足りてるから、攻撃魔法は止めて援護を中心に頼む!」


 血気盛んな若手の冒険者たちが暴走しないように、ベテランが釘を刺しながら前へ出る。


「よし、お前たち射程外から貫け!」


 長槍を手にした冒険者の号令で、前衛を担当する者たちが次々にジタバタともがいているグリフォンに攻撃を仕掛けていく。


「はあっ!」


 掛け声を上げながら繰り出された長槍は、グリフォンの胸部を貫いて傷口から血が噴き出す。


「よし、お前たちも続け!」

「はい!」

「やってやる、やってやるぞ!」


 ベテランの冒険者の言葉に、彼と同じく長物を手にしたルーキーたちが続く。



「ギシャアアアアアアァァァ!」


 柄の長い武器で次々と串刺しにされたグリフォンが、奇声を上げて勢いよく立ち上がる。

 体を震わせて刺さった槍を吹き飛ばし、憤怒の表情で自分を傷付けた冒険者たちを睨む。


「どれ、ここで一つ足止めじゃ!」


 立ち上がったグリフォンが反転攻勢へと出そうなタイミングで、魔法の詠唱を終えたロウガが地面に両手を付いて魔法を発動させる。


 すると、地面から木の根がボコボコと音を立てながら生えて来て、飛び出そうとしたグリフォンを拘束していく。


「グリフォン相手じゃやや力不足かもしれぬが、これで少しは時間が稼げるはずじゃ」

「ヘヘッ、オッサン。ナイスだぜ!」


 ロウガの援護を見て、ロングソードを手にしたまだあどけなさが残る少年が飛び出す。


「得物が短いから出遅れたけど、ここからは俺の時間だぜ!」

「おい、馬鹿! 一人で突出するな!」


 勝手に動き出す少年にベテランの冒険者から制止の声がかけられるが、絶好の獲物を前に経験の浅い若手が自分を抑えることができるはずもなかった。


「もらったぁ!」


 少年は走った勢いも併せてグリフォンへと切りかかるが、振り下ろした剣は怪鳥の巨大な羽に当たって弾かれる。


「……えっ?」


 避けられない相手に向かって放った渾身の一撃がまさかの不発に終わったことに、少年が唖然と自分の手にした剣を見る。


 今回のクエストのために新調したロングソードは、その威力を発揮することなく、半ばから真っ二つに折れていた。

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