普通の冒険者、いざ開戦のとき
暫しの休憩を挟み、それぞれのパーティーのタンク役に十分な防御魔法をかけ終えたところで、ロウガが全員に声をかける。
「では、そろそろグリフォンの奴をここに呼び寄せるが準備はいいか?」
その問いかけに返事はないが、全員が手にした武具を掲げて見せる。
言うまでもなく、準備は万端ということだ。
「よかろう。それでは……」
ロウガは懐から長い紐が付いた筒状の道具を取り出すと、勢いよく紐を引く。
すると、筒の先から「ヒュルルルルル……」という甲高い音を響かせながら光る玉が勢いよく飛び出し、上空で音を立てて爆発する。
以前使った信号弾と同じ性質の道具だが、今回はそれにより大きな音が鳴るための仕組みが施された特製の信号弾だ。
「ほれ、間もなくグリフォンの奴が来るぞ。総員、戦闘配置に付け!」
上空を指差しながら後ろへと下がるロウガと入れ替わるようにして、ウィルたちが防御魔法でうっすら光る盾を手に前に出る。
同時に上空に巨大な影が現れ、冒険者たちの間に緊張が走る。
「き、来た!」
「グリフォンが出たぞ!」
「いいか? 勝手に動くんじゃないぞ! 命令があるまで、何があっても動くなよ!」
「特に攻撃魔法は絶対に勝手をするんじゃないぞ!」
周囲が俄かに騒がしくなる中、ウィルは上空で停滞しているグリフォンを睨みながら大盾を構える。
「グリフォンは獲物を狙う時、上空から急降下して鋭い爪で攻撃してきます。最初は掛け声を合わせて全員の盾を一か所に集めて、確実に受け止めましょう」
「了解だ。ひよっこたち、気合を入れろよ!」
「わ、わかりました」
「やってやる。やってやるぞ」
ウィルを含めて四人のタンクたちは、互いに目を合わせて頷き合う。
「よし、それじゃあ、いっちょやりますか」
覚悟が決まったところで、プレートアーマーに身を包んだ冒険者が翡翠色のタワーシールドを手に前に出る。
右手で大盾を構え、左手に槌を手にしたプレートアーマーの冒険者は、
「オラオラ! 人間様の参上だ! かかってこいや鳥野郎!」
ガンガン、と派手な音を立ててグリフォンを挑発すると、
「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェ!!」
挑発が効いたのか、グリフォンが雄叫びを上げながら急降下をする。
「よしっ、来るぞ! 全員、気合入れろよ!」
「「「おうっ!」」」
プレートアーマーの冒険者の言葉に合わせて、ウィルたちは掛け声を上げながらそれぞれが持つ盾を一つに合わせる。
すると、それぞれの盾にかけられた援護魔法が相互干渉して、青白く光る一つの巨大な大盾になる。
「キエエエエエエエエエエエエエエエェェェェッ!!」
巨大な盾が完成すると同時に、急降下して来たグリフォンの日本の前脚の爪が激突し、大量の火花を散らす。
「ぐううぅ……」
「うぐっ!?」
「こ、こいつは……」
「ここで絶対に膝は付かないで! すぐに距離を取ってくちばしが来ます!」
顔をしかめるタンク役たちに励ましの声をかけながら、ウィルは隙間からグリフォンの様子を観察する。
ウィルたちを押し潰そうと体重をかけるグリフォンだったが、それが無理だと判断したのか、大きく羽ばたいて一度後退する。
「くちばしが来ます! 鉄の盾じゃ穴が開くので二人は下がって!」
「わ、わかった!」
「すみません、お任せします!」
装備が貧弱なルーキーたちが下がると、残るはウィルとプレートアーマーの冒険者だけになる。
「言うまでもないと思いますが、真正面から受けないようにして下さい」
「当然だな。ここは腕の見せ所だな」
「ええ、いきましょう!」
ウィルたちが前に出ると、グリフォンは一度大きく羽ばたいて顎を引くと、
「キエッ! キエッ! キエエエエエエエエエエエエエエエエェェェッ!!」
顔を上下に素早く動かして、くちばしで激しく突いてくる。
「よっ、ほっ、とわぁ!」
「ふっ……」
巨大な体躯の割に素早い動きで次々と繰り出されるくちばしによる攻撃を、ウィルたちは時折位置を入れ替えながら巧みに防御していく。
「よっと……ところでいつまで防御してればいいんだ?」
「すぐです。もうすぐ援護が……」
「ええ、いきますわよ!」
ウィルがちらと背後を気にすると同時に、距離が離れていても不思議と耳に届く涼やかな声が響く。
「ウィル、カウントスリーで道を開けなさい」
「……というわけです」
ウィルが確認するように目を向けると、プレートアーマーの冒険者は兜の奥でニヤリと笑って頷く。
「キエッ! キエッ……」
尚も執拗に続くくちばしによる攻撃を受けながらウィルたちは顎を引いてカウントダウンを開始する。
三……二……一……、
「「ゼロ!」」
声を合わせてウィルたちが左右それぞれに分かれて脱出すると、背後からグリフォン目掛けて矢が撃ち込まれる。




