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普通の冒険者の仲間は実は凄い人

 グリフォンが町を強襲したその日の夜、スモークウッドの町の冒険者ギルドで緊急の会合が開かれた。


「お前たち、夜遅くに集まってもらって悪いな」


 ログハウスを思わせる建物の吹き抜けのロビーの中心で、右目に大きな傷のある強面の男、冒険者ギルドのギルド長が集まった者たちを見て力強く頷く。


「大規模討伐クエストの発令から僅かな時間で、これだけの参加表明があって俺は嬉しいぜ」


 感極まったように鼻をすすったギルド長は、集まった冒険者たちの顔を見渡した後、これまでに調査でわかったことを話す。


「琥珀の森に住み着いたグリフォンは、他所で縄張り争いに負けて逃げてきた個体のようだ」


 冒険者ギルドの調べによると、種族同士の縄張り争いに負けたグリフォンは、スモークウッドの近くの山の奥で隠れて傷を癒していたそうだが、傷が癒えたところで新しい縄張りを作るために目を付けたのが琥珀の森だったという。


「これは俺たちからすれば由々しき事態だ」


 手にした資料をバシバシと叩きながら、ギルド長はグリフォンが琥珀の森に住み着くことで起きる事態に付いて話す。


「あいつが居座ることで街道がまともに使えなくなるのも問題だが、最大の問題はグリフォンの繫殖期だ」


 繫殖期が来れば、グリフォンが自身の縄張りを守るために狂暴化するのも問題だが、つがいができて子育てがはじまれば、餌の確保のために周囲一帯のあらゆる食物が狩り尽くされる危険があるということだ。


「実際、グリフォンの巣で退去を余儀なくされた村は枚挙にいとまがないからな。だから、何としても奴につがいができる前に駆除する必要があるわけだ」


 学者たちによると、もうグリフォンがいつ繫殖期に入ってもおかしくない時期に来ているので、冒険者ギルドとしては一刻の猶予もないと考えていた。


「そんなわけで、数日以内に琥珀の森に突貫したいと思っているが……実は今回のクエストには実に頼もしい仲間がいる」


 そう言ってギルド長は、入口近くにいるウィルたちを手で指し示す。


「知っている奴もいると思うが、今回集まった者の中に閃光のリーリエと、軍神ロウガがいるんだ」

「えっ、閃光ってあの銀髪エルフの? もしかしてと思ったけど、やっぱりそうなんだ」

「軍神って……作戦指揮を執らせれば百戦負けなしの狼人族(ろうじんぞく)だろ?」

「おいおい、これはもう勝ったも同然だろ」

「その二人って上から二番目の(シルバー)ランクって話だろ? やべぇ、銀ランクの冒険者なんて初めて見るかも……」


 ギルド長からの紹介に、冒険者たちのたくさんの視線がウィルの後ろに控えるリーリエとロウガに集まる。


「やれやれですわね」

「フム、この視線に晒されるのも久方ぶりじゃのう」


 無数の視線に晒されても平然と佇むリーリエとロウガを見て、最後方に控えるメイプルが隣のロゼに尋ねる。


「リ、リーリエさんとロウガさん……凄い人だとは思っていましたけど、二つ名持ちだったんですね」


 冒険者としては超一流の証である二つ名を聞いて、メイプルはキラキラとした目でリーリエたちを見る。


「そんな凄い人たちと一緒に冒険していたなんて……全然、知りませんでした」

「まあ、あたしたちにとっちゃ、ただの食いしん坊のエルフと獣人だからな。実際、二つ名が付いたのも二十年以上前らしいし、あたし等世代じゃ知らないのも仕方ないさ」

「……聞こえてますわよ」


 暗に年寄り呼ばわりされたことに、リーリエは振り返ってロゼを三白眼で睨む。


「二つ名なんて、あるだけで余計な仕事を押し付けられるロクなものじゃありませんわ」

「ハハハ、全くじゃな」


 リーリエの愚痴に賛同したロウガは、一歩前に出てよく通る声で冒険者たちに話しかける。


「皆の者、確かにワシもリーリエもかつては名を馳せた冒険者じゃが、既に半分は隠居した身じゃ。話がしたいなら、ワシ等のパーティーのリーダーであるウィルに相談してくれ」

「ロ、ロウガさん!?」

「何事も経験じゃよ」


 驚いて目を見開くウィルに、ロウガは大きく頷く。


「何、戦いのノウハウは既に十分教えてある。グリフォンの戦い方も、ある程度は固まっているのじゃろう?」

「それは……はい」


 ウィルが頷くと、周囲の冒険者たちの間から「おおっ!」という感嘆の声が上がる。


「ほう、なるほどね」


 ギルド長は夜になって生えてきた無精ひげを撫でながら、ロウガの推薦を受けたウィルを見てニヤリと笑う。


「それじゃあ若きリーダーよ。軍神の教えを受けたというその考え、披露してもらえるか?」

「は、はい、わかりました」


 周囲からの期待に満ちた目に圧されながらも、ウィルはしっかりと頷いて一歩前に出る。


「実は今日、町から立ち去るグリフォンの背中を見てあることに気付いたんです。そして、そこに勝機があると思うんです」


 そう前置きして、ウィルはグリフォン討伐の作戦を冒険者たちに話していった。

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