普通の冒険者と北方の心温まる料理
三体のホトの木から全ての実を回収したウィルたちは、宣言通り広場で昼食を食べることにした。
「さて、今日のご飯は何かな」
いつも通り火を熾す準備をしながら、ロゼは楽しそうにウィルに尋ねる。
「なあ、リーダー。今日のお昼って……」
「うん、ロゼがリクエストしてくれたものを用意したよ」
「やった!」
自分の好きなものが出て来ると聞いて、ロゼはウキウキした様子で手早く火を熾す。
「さあ、火がついたぜ。リーダー、早くしてくれよ」
「ハハハ、わかってるよ」
焚き火の前を譲ってもらったウィルは、腰を落として料理の準備をする。
「といっても、今日はもう殆ど下ごしらえは終わっているんだけどね」
そう言いながら、ウィルは切り分けられた食材を次々と出していく。
「それじゃあ、俺は野菜を茹でていくから、ロゼはメインの調理をお願いできる?」
「ああ、任された」
鍋を用意してウィルが野菜を下茹でしていく間に、ロゼはスキレットにニンニクを擦りつけて香りをつけ、白ワインを入れて火にかける。
白ワインのアルコールを飛ばしたところで片栗粉をまぶしたチーズを中に入れ、グツグツと煮えてきたところで塩コショウで味を調える。
「よし、これで完成。後はこれに持ってきたパンや干し肉、茹でた野菜を着けて食べるんだ」
「こっちもできたよ」
「おっ、サンキュー」
色鮮やかに茹でられた野菜の中からロゼはツヤツヤと輝くブロッコリーにフォークを突き刺すと、グツグツと煮えているチーズと絡めて掲げる。
「ほら、こいつがあたしの故郷の料理、チーズフォンデュだ」
チーズでコーティングされたブロッコリーを掲げたロゼは、恥ずかしそうに頬を掻きながらチーズフォンデュを作ろうとした理由を話す。
「ここ最近、リーリエだけじゃなくロウガまで故郷の料理を出してきたからな。だからあたしも、皆に故郷の料理を食べてもらいたいと思ったんだ」
そう言ってロゼは、ブロッコリーをメイプルに差し出す。
「ほら、あたしが作れる数少ない料理の一つだ。味は保証するから食べてみてくれ」
「あっ、はい。いただきます」
熱いから注意するようにというロゼの忠告に従い、メイプルはしっかりと冷ましてからブロッコリーを頬張る。
「はふっ……はふっ……」
しっかり冷ましたつもりでもまだ熱かったのか、メイプルは必死に口内に空気を送りながら顔を大きく動かして嚥下する。
「……うん、とってもおいしいです。お野菜にチーズのコクと白ワインの香りが加わって、何より体がとっても温まります」
「だろ? あたしの故郷では、特に寒い日にこれを食べて皆で温まるんだ」
幸せそうに笑うメイプルを見て満足そうに頷いたロゼは、もう我慢できないといった様子の仲間たちにチーズの入ったスキレットを差し出す。
「ほら、皆も食べてくれよ」
「勿論ですわ。未知の料理となれば、試さずにはいられませんわ」
「全くじゃ。ワシはこっちのソーセージでいただこうかの」
リーリエはパンを、ロウガはソーセージにチーズを絡めてそれぞれ口に放る。
「はふっ、はふっ……これは確かに体が温まりますわね」
「うむ、ほのかに感じる酸味と塩気がソーセージとの相性抜群じゃな。こりゃ、ぜひとも用意された食材を全種類試してみたくなるな」
「ま、負けませんわよ!」
用意された食材は十分あるのだが、ロウガとリーリエは我先にと争うように食材をチーズに絡めて食べていく。
「やれやれ、相変わらずだな」
食べることになると見境がなくなる。
そんな仲間たちに呆れながらも、ロゼは別で用意していた食材をウィルに差し出す。
「リーダー、あたしのわがままを聞いてくれてありがとうな」
「どういたしまして、皆も喜んでくれたし何よりだ」
幸せそうに料理を食べる仲間たちを見ながら、ウィルは赤々と色付いたニンジンにチーズを絡めて食べる。
「……うん、おいしい。体だけじゃなく、心まで温まりそうだよ」
「ヘヘッ、リーダーにそう言ってもらえると照れるな」
ロゼは恥ずかしそうに頬を掻くと、干し肉にチーズを絡めて頬張る。
「……本当、作ってよかったぜ」
作った料理をおいしく食べてもらえる喜びを噛み締めながら、ロゼも仲間たちと一緒にチーズフォンデュを堪能していった。




