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blue  作者: カビチ
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turned milk

 少女と並んで湖畔を歩いたと言うには語弊があって、正確には殺人鬼に古傷をナイフでえぐり取られてありありと目撃させられたために並んで湖畔を歩くことに了承せざるを得なかった。殺人鬼はこの身体を教会の裏で拾ったと云う。三つ編みを蓄えロザリオと短剣を手に持ち生を空の向こうに預けようとしていたその少女は今や絶望の色に輝き真逆の信仰物に蹂躙されている、哀れ。生活排水に汚染され底の見えないほど濁ったその湖には生命のひとつも存在していないようだった。まるできみみたいだと恐るべき少女は微笑を向けながら俺の手を引いて歩く、歩き続ける。空気に触れて汗が酸化し始めた髪の毛が顔にかかって鼻についた。早くこの汚い街から出て行きたい、逃げても逃げても、殺人鬼は俺の足跡を辿ってくるのだろうけれど。昼の一時、田舎町の火災を見た。大勢がバケツを手渡して次々と消火に勤しみあの湖から汲んできた聖水が炎へ降りかかる。ところで俺は肉親を家ごと炎で燃やされたから、殺人鬼は俺をここへ連れてきたのだろう。沈む意識の中からどうにか今掴めるものを手繰り寄せた。今朝は同居している悪魔が牛乳のいくつか入った箱を持ってソファに置いた。これはもう駄目になってしまったから庭へ撒いてしまおうと宣う。すでに病気が始まっていた俺は無性に腹が立ってそいつを部屋から追い出す。やけになって外へ出るとこの少女と出会ってしまう。何もかも上手くいかないのは自然のせいなのだろうか。液体に潜む哀れなこどもたちにすら恋しさを覚える。一度生まれてしまえば無くなり難い我々の呼吸を脅かす生命群。それでもそこに存在し続けるしかない、意志を手放してさえ、この手に引かれるがまま歩いていくほか俺に何ができたっていうんだ?

 だから俺はミルクが無秩序に発酵するのを待つ。経過した時間によって植え込まれた雑菌が俺の身体を流れることについて期待する。部屋でただ一人になった夕方六時の鐘の音を聴きながら酸っぱいミルクを飲むためにドアノブを回す。

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