彩夏と日帰り旅行
彩夏の友達は旅行に行ってお土産を買ってきてくれるけど、彩夏は泊まりの旅行には行ってない。理由は愛美と朝輝が県外への遠出はしたことが無いからグズった場合の不安もあるからだ。ただ、母さんが自分の息抜きも兼ねて遊びに連れ出すこともある、宿題の絵日記を見ると毎日楽しい様子が書かれているけど本心ではどうなのか心配な部分だ。そこで俺は彩夏と日帰り旅行をする事に、場所はちょっと遠いけど牧場だ。遊園地にしてやれよ、と思われても仕方無いチョイスだけど遊園地だと泊まりが必要だから勘弁してくれ。
「おにいちゃん、準備出来たよ!」
「おし!そんじゃ行くか。 雪華悪いな、この穴埋めは今度必ず」
「ううん。彩夏ちゃんを楽しませてあげて、あたしも少し心配だったから」
雪華も誘ったけど「たまには兄妹二人で楽しんできて。彩夏ちゃんが旅行に行けてないのは可哀想だから」と言ってくれたのだ。
時間は朝の8時前。通勤時間帯なので電車の混雑が心配だったけど、無事に特急の乗り換え駅に到着する。職場が多くあると思われる方向とは逆だったのが幸いしたかもな。
「あやちゃん、ここから特急で行くんだけど朝ご飯がまだだから駅弁食べながら乗ってようか」
「うん」
「じゃあ、どれ食べたい?」
電車内で駅弁を食べながら行くことにして、特急ホーム内の売店で駅弁を四個購入する。え?数がおかしいって?俺が三個食べるんだよ!駅弁は量が少ないんだから当然だろ。
少し奮発して指定席に座った俺達は早速駅弁を食べることにした。
「あやちゃん、美味しい?」
「うん。おにいちゃんのこのオカズも食べてみていい?」
「いいぞ!自分の分が食べれなくてもお兄ちゃんが食べてあげるから、好きなの食べな。ただし、ごはんはちゃんと食べるんだぞ」
「は〜い」
俺が知る限りでは初めての駅弁を嬉しそうに食べる彩夏。全部違う種類にしてあるので、様々なオカズに目を輝かせている。
窓側に座る彩夏は外の景色を楽しんでいる。俺も駅弁を食べ終えて、ゴミを片付け終わり、ゆったりしていると下車駅のアナウンスが流れる。
「あやちゃん、次の駅で降りるよ」
「は〜い」
忘れ物が無いか確認して、特急から降りる。駅の改札を出て、ロータリーのバス停で目的地に行くバスに乗る。そのバスで終点まで行けば目的地の牧場だ。
入場料を支払い牧場に入る。
「あやちゃん、疲れてない?」
「大丈夫。電車もバスも座ってたから」
「じゃあ、見てまわろうか!」
「うん!」
この牧場には引退競争馬も何頭か在籍しているらしく、そっち方面は人気のようだけどそれ以外は間近で動物を見れる。
牛や羊を見て楽しむ彩夏にある場所に行くことを伝える。それはポニーの乗馬体験の場所だ、ここに来る事を決めた時に予約しておいたのだ。
乗馬体験場所でスマホの画面を見せて確認してもらい、体験スタート。
俺は柵の外側から彩夏を撮影する。最初はおっかなびっくりだった彩夏も「おにいちゃーん」と片手で呼べるようになった。ただ、その時間は短く体験終了の時間となってしまったけれど。
「どうだった?」
「すごかったよ!もうね、すごかったの!お馬さんも可愛いかった!」
「そっかそっか。良かったな!」
「うん!」
感情だけで彩夏にとっていい体験になったのが伝わるな、連れてきて良かった。
その後もウサギやヒヨコとかと触れ合い、名物のソフトクリームを食べたりしながら過ごして。
「あやちゃん、そろそろ帰ろうか。駅前で遅くなったけどご飯食べて帰ろうね」
「わかった。ねえ、また来たいなあ」
「そうだね。今度は皆で来たいね」
「うん!あみちゃんやあっくんにも見せてあげたい」
妹達を想う優しい彩夏の頭を撫でながら笑う。
駅前に戻って、彩夏がファミレスで注文したのはチーズインハンバーグ定食。さっきまで動物を見てたけど、それはそれ、これはこれ、なのだろう。そう言う俺もステーキ定食だけどな。
帰りの特急車内では寝ていた彩夏だけど、それ以外は起きていてくれたので、スムーズに帰宅する。まあ、彩夏のおんぶ位平気だけどね。
両親に今日の出来事を楽しそうに話す彩夏に何かを感じたのか、冬休みに宿泊旅行の計画を俺が知るのはまだ先の話。




