雪華の両親
雪華と彩夏と俺の三人はダイニングテーブルで午前の勉強中。保育園が休園中の愛美と朝輝はお盆休み中の父さんと一緒にリビングでブロック遊び。母さんもテレビを見ながらまったりしている、そんな時間に玄関チャイムが鳴った。
母さんがインターホンカメラで確認すると雪華の両親が来たようだ。
「「おじゃまします」」
上がってきた雪華の両親を初めて見る愛美と朝輝は少し警戒して俺の足にしがみついている。
「あやちゃん、こちら雪華お姉ちゃんのお父さんとお母さんなんだ。悪いけど、和室で愛美と朝輝の面倒を見ててくれる?何かあったら呼んでいいから」
「うん。わかった」
愛美と朝輝にも頭を撫でながら雪華お姉ちゃんのパパとママだから心配しなくて平気なことを伝える。
三人揃って「こんにちは」と挨拶してから和室へと向かった。
リビングにいる全員に麦茶を入れたグラスを持っていき、俺も座る。
「広也君、久しぶりだね」
「お久しぶりです。幸司さん、雪江さん」
雪華のお父さんが石嶺幸司さん、お母さんが石嶺雪江さんだ。雪華とのビデオ通話の時に挨拶することはあっても実際に会って話しをするのは引っ越し以来となる。
「日帰りとは言っていたけど、泊まっていけばいいんじゃないか?」
父さんが提案している。雪江さんは雪華と一緒に雪華の自室へと向かった、生活状況をチェックするためだろう。
「実はこの後に旅行することになっているんだ、だからまた改めて泊まりに来るよ」
「なら仕方ないか。それにしてもよく予約とれたな」
そんな父さんの言葉と共に、母さんも含めて旅行先の話題へと移っていくのだった。
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現在雪華はバイト先へと行っている。店長に幸司さんの会社に提出する書類を記入してもらうためだ。俺はここで雪華にあった出来事を二人に聞くことにした。
「幸司さん、雪江さん、単刀直入に聞きますけど引っ越し先で雪華に何かあったんですか?」
俺の父さん母さんを含めた四人が驚いた表情で俺を見る。
「どうして、そう思うの?」
「言葉に表すのは難しいんですけど、ホッとした顔をすることがあるんです。小学生時代に俺がいることの安心感があった時のような」
質問してきた雪江さんに答える。
「なるほどな。広也君には念の為に知っておいて貰おうかな」
幸司さんが話してくれた内容によると、中三になったタイミングで来た転校生に雪華は告白された。もちろん雪華は俺がいるので断ったのだが、逆恨みした転校生に嘘を吹聴されて孤立したそうだ。その転校生が洋服モデルをしていることもあり、学年全体が転校生の言いなりだったらしい。
幸司さん曰く「事務所にも所属していない広告モデルだよ、その会社のホームページや新聞の折込チラシ程度の露出のね。ただ、学校内という狭い環境では効果があって雪華は不登校になったのさ」
そうして不登校になった雪華を心配した両親からある提案をした、それが俺との同居だ。俺と暮らせることになった雪華は明るさを取り戻していった。俺と同じ高校への進学でなくても同居が約束されたから。でも雪華は俺と同じ高校を目指して自宅で勉強した、テスト時期は保健室登校で受けたそうだ。
「今日の雪華を見て、この同居は間違いでなかったと確信したわ。広也君、いつも雪華と寄り添ってくれてありがとう」
そう言ってくる雪江さんに俺は力強く言う。
「安心して下さい!俺はいつでも雪華の味方です。この同居を提案してくれた二人のためにも大切にしていきますので」
「よろしく頼んだよ」
「はい!」
そう言って幸司さんとガッチリ握手を交わす。
「ただいま〜」
雪華の向こうでの出来事を聞いた少し後に雪華がバイト先から帰ってきた。
「じゃあ、お昼にしようか」
父さんのその言葉で昼飯にすることにした。彩夏達には悪いけど、俺達の後に食事にしてもらう。彩夏達の昼飯メニューはミートソーススパゲティだ。
彩夏達以外の昼飯は父さん達が雪華両親の行く旅行先で盛り上がっている時に作っておいた。
「実は昨日、雪華と釣りに行ったんです。これは雪華が釣ったので是非」
そう言っておかずを並べていく。気になる内容はアジのたたき、カゴカキダイとキュウセン(べラの一種)の刺身、ショウジンガニで出汁をとった味噌汁で具材はキュウセンと長ネギ、となっております!
「おお!豪華だな」
「本当に。旅館のお食事みたい」
雪華の両親も嬉しそうだな。味も確かなので堪能して欲しい!
おっと、心配しなくても晩飯で彩夏達は同じメニューを食べるからな。
時間は夕方前になり、雪華の両親が旅行先へと向かうことになった。
「「おじゃましました」」
「「「「行ってらっしゃい」」」」
雪華の両親を玄関で見送る。
幸司さんと雪江さんと色々話しが出来てよかった、これからも雪華を大切にしていかないとな。そんな事を思いながら眠りについた。




