ガサガサに行こう
「じゃあ母さん行ってきます」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい。二人共気をつけてね」
「いってらっしゃ〜い」
母さんと彩夏に見送られて雪華と一緒に家を出る。今日は磯遊びをするために海へと行く。本当は潮が大きく引く大潮前後が良かったんだけど、雪華が待ち切れないとの事で急遽行くことになった。
干潮の時間は昼過ぎなので、朝飯を食べて俺が愛美と朝輝を保育園に送ってからの出発です。
「ひろ君との磯遊びは久々だからすごく楽しみ」
「そう言っても、小学校時代の両家合同の旅行でしか海には行ってないんだけどな」
「んもう。楽しみな気持ちを壊さないで」
「ごめん、ごめん。で、改めて今日の予定だけど干潮が昼過ぎだからそれまでは潮溜りでガサガサ。潮が満ちてきたら近くの防波堤に移動して釣りに変更。18時頃に帰宅する」
「わかった。昼食は防波堤近くの定食屋で食べるんだよね?」
「うん。海の近くだから海鮮丼を頼みたい気持ちはあるだろうけど、海鮮天ぷら定食が絶品なんだよ。雪華に是非食べて欲しいな」
「いいね、いいね。ところで釣った魚は今日の夜ご飯に出すの?」
「いや。釣りする時間が短いから釣れた場合は明日になるよ」
「roger että」
そんな話しをしながらも電車を乗り継ぎ、バスに乗り換え前回の穴釣りした場所より先に行く。
「やっと着いたな。楽しみな場所に行くのは体内時間としては長く感じるよな」
「そうだよね。家を出発して3時間経ってないのに体感では半日位の移動時間だったよ」
「まあ、それも終わりだ」
そう言いつつ眼前の磯場を見る。
いい感じに潮も引いているし、風もあまり無いから採集するには最高だ。
「じゃあ早速移動しながら採集して行こうぜ」
前回の穴釣り同様、釣り用の長靴に履き替えた俺達は伸縮形のタモ網を二つづつ持ちながら移動する。
「ひろ君、この辺ガサってみない?」
「そうだな。じゃあ雪華はここで網を構えていてくれ、俺が追い込むから」
岩の隙間とかにも網を入れつつ追い込んでいく、そして雪華の網と合流してお互いの網を上げる。
「どう?」
「アゴハゼとメジナの幼魚ばかりだな。移動しよう」
「うん」
捕まえた魚を全てリリースして移動する。
「雪華。チョウチョウウオを発見した!」
「え?どこ?」
「ホラ、あそこ」
岩の隙間をチロチロと出入りしている。
「ヤツがいるってことは他の種類がいる可能性も高いからガサってみよう」
「うん。さっきと違ってドキドキするよ」
「じゃあ、雪華はここで網を構えていてくれ」
先程と同じように岩の隙間とかにも網を入れつつ入念に追い込んでいく。そして網同士が合流したら上げる、と。
「よっしゃあ。チョウチョウウオが入ってるぞ!ひとまず網の中の魚を全部バケツに入れよう」
バケツに入れて採集魚を確認する。
「雪華見ろよ、俺達の思い出の魚のカゴカキダイも採れたぜ」
「本当だ。あれ?あの頭が青いのは何?メジナやニザダイじゃないよね?」
「おお、ネズスズメダイだ。幼魚特有の模様なんだよ」
「キレイだね」
「だな。でも、成長すると消えてネズミ色しただけの魚になるし、性格もキツくなるけど持ち帰るか?」
「考えさせてくれる?一応キープで」
「わかった」
ちょっと深めの潮溜りで雪華が網で何かを捕まえようと奮闘している。俺に頼るまでは危険が無いかを確認しながら見守ることにした。自分だけで採れた時の喜びがあるから尊重したい。
奮闘することしばらくして。
「採れたどー」
歓声を上げる雪華。
「おめでとう!何を採ったんだ?」
「フフフ。驚くがいいコレよ!」
そう言って網の中を見せてくる。
「スゲえ。ハタタテダイじゃないか!」
「どうよ。頑張ったご褒美欲しいな」
「足場が悪いから、夜のいつもの時間にな」
「んもう」
こうして、夜に雪華にキスする事が決まった。
「実はね、イシダイの幼魚もいるのよ」
「お宝溜りだな!一人で頑張ってみるか?」
「ううん。一緒に捕まえよ」
追い込める潮溜りでは無いので、二人で協力しながら互いの網に誘導しつつ捕まえることに成功する。
「雪華。そろそろ潮が満ちてくるから移動しよう」
「わかった。採集したのでいっぱいだけど、釣りはどうするの?」
「雪華はどうしたい?」
「ひろ君が大変なら次でもいいよ。今日で終わりじゃないからさ」
「じゃあ、お言葉に甘えて昼飯食べたら帰ろうか。今度は砂浜でのキス釣りを予定しているからさ」
「うん。夏休みはまだまだあるんだし、目一杯楽しもうね!」
「おうよ!」
この日は釣りは無しにして帰宅することにした。
ただし、防波堤近くの定食屋には移動して海鮮天ぷら定食のごはん大盛はしっかりと食べてからだけどな。
帰宅した俺は採集した魚達を薬浴させたりと飼育に向けての作業をした。雪華キープのネズスズメダイも持ち帰ってきたぞ。まあ性格がキツくなり始めたらイシダイとかのいる水槽に入れれば問題無いしな。
そうそう、ガサガサついでにショウジンガニも捕まえたんだよ。身を食べるカニでは無いんだけど味噌汁にすると旨味が出てプチ贅沢な味噌汁になるんだ。
雪華へのご褒美キスは短いキスを何度も繰り返すキスを要求されて色々と大変だったよ。




