開店二日目(後編)
開店直後に完売してしまった商品がある。
現在、店内にはお客さんがいないので、ある事を思いついた俺はしばらくの間は昌史だけで対応してもらうことにする。
「お疲れ様です。姉御先生ちょっといいですか?」
「おう。開店待ちの人は終わったのか?」
「はい、無事に。今は店内にお客さんがいないので、二人は事務所待機で大丈夫だと思います」
「わかった。じゃあ一旦、鳳来と明槻さんに来てもらおう。で、内宮の用件は?」
「その前に鳳来さんと明槻さんに来てもらいますね。手狭感があるので」
「わかった」
という事で、鳳来さんと明槻さんが事務所待機になったので呼びにいく。
「「お疲れ様です」」
姉御先生「開店早々お疲れ様。売れ行きはどうだい?」
明槻「順調かと。シュークリームとマドレーヌは売り切れたので、追加分を焼いてもらってます」
鳳来「今日からのうちにとってはビックリなんだけど!昨日からの三人は手際がいい気がするしさ」
「そりゃ、昨日の夕方を経験したらそうなるかもな」
鳳来「何それ?」
「経験者の明槻さんから聞いたらいいよ。俺は外にいたからさ。ところで姉御先生、文房具屋さんで買いたいのがあるのですが、経費で落ちますかね?」
「物にもよるな。内宮があったほうがいいと感じるなら、買ってきてくれ。念の為に領収書はもらうように」
そう言って一万円札を渡してくる。
「わかりました。では、ちょっと行ってきます」
外に出て昌史に少し外出する事を伝えて文房具屋に向かう。
目当ての物を購入し、昌史に戻ったことを伝えて事務所に行く。
「ただいま戻りました」
「「お帰り」」
「姉御先生、これ領収書とお釣りになります」
「わかった。何を買ったんだ?」
「実際に見てもらったほうが早いかと」
そう言って明槻さんと鳳来さんが座るソファへと行き、テーブルに購入してきたのを置く。
「ホワイトボードか」
「はい。で、こんな風に品切れ中の商品と次回の焼き上がり時間を書いて、と。これを入口横にこの大型吸盤で吊るしたらいいと思いまして」
「中々いいアイデアだな!早速取り付けてくれ。あと、内宮も外出帰りで悪いが少し涼んだら柳原と交代してやってくれないか?」
「もちろんです」
そういう訳で、少しだけ鳳来さん達と雑談してから昌史と交代するのだった。
今はお客さんはいない。なので昨日同様店内で少し涼むことにする。
「お疲れ〜」
雪華「お疲れ様。暑いから水分補給はしてね?」
「そこは大丈夫、ありがとな。ところで今日の売れ行きは?」
雪華「開店直後のお客さんはシュークリーム目当てだったみたいで完売したでしょ?あとは、あたし提案のも珍しさもあって昨日同様売れてるよ」
「おお。いい感じだな」
この店のシュークリームはコンビニに比べると小ぶりだけど、中身はギッシリ詰まっているし味も四種類ある。
定番のバニラとカスタード、季節限定の桃と青肉メロンだ。
赤肉メロンのシュークリームは見かける機会は多いけど、今日から発売の青肉メロンは少しお高めのメロンを使用しているから美味しいぞ。なぜ、今日からかと言うと材料調達が遅れたため。
そんな事を思っているとお客さんが来店したので、外に行く。
昼休憩も終わり、シュークリームも全種類の補充があった。そして、昨日忙しくなった時間になる。今、冷蔵ショーケースに入っているのが完売したら追加は無しになっている。
昨日は少しの行列が出来たが、今日は行列は無し。ただ、店内にはお客さんがいる状態が続いている。
現在売れ残ってるのがフルーツケーキ。ちょうどいいので事務所で休んでいる店長に相談する。
「店長すみません、相談があるのですが」
「どうしたの?」
「今、残っているフルーツケーキを自分が買ってもいいですか?」
「そんな無理する必要ないよ」
「あ、違うんです。昨日帰ったら甘いニオイを漂わせていたので、妹達にズルイと騒がれたのでお土産として買っていこうと思ったんです」
「そういう事か。なら、割引するから買うといいよ!後日妹さん達の感想教えてね」
「はい!では、閉店作業に移りますね」
「よろしくね」
売場に行きフルーツケーキを全部箱詰めしてもらう。全員ウチの家族人数を知っているので、数に疑問は抱かれなかった。
その後は閉店作業。先に外側のシャッターを降ろして、店内と冷蔵ショーケースの掃除をすれば終了だ。
最後は俺が購入したとはいえ、二日連続の完売はいい感じなのでは?そう思いつつ事務所に行って雪華の着替えを待つ。
〜帰宅中〜
「今日も忙しかったな」
「そうだね!明日はどうなるのかな?」
「初めての平日だから予想出来ないよな。でも、明日は夕方からシフトだろ?」
「うん。でも、昨日今日みたいに閉店が早いと閉店作業だけになりそうだよね」
「でも、そこは了承済みなんだろ?個人店だし仕方無いよ」
「だね。夕方からも長く働けるようにお客さんがたくさん来るといいな」
店は現在水曜が定休日となっている。ただ、客足が鈍い曜日を定休日に変更することも考えているそうだ。
晩飯後のデザートで、購入したフルーツケーキが出されると彩夏と愛美と朝輝は喜んだ。
でも、一番大歓喜したのは母さんだった。常連になる日は近いのかもしれない。




