双子のお迎え
時刻はもうすぐ16時。そろそろ双子のお迎えに行く時間だ。
「父さん、母さん、今日の(双子の)お迎えどうする?散歩がてら雪ちゃんと行こうと思ってるのだけど」
「えー!あやかと遊んでほしいなー」
不満な声をあげるのは彩夏だ。どうやら、雪ちゃんと遊びたいらしい。
「じゃあ、あたしは彩夏ちゃんと遊ぶよ。いきなり知らない人が来たら保育園側も警戒するだろうし、また今度にするね」
「やったー」
遊んでくれるとわかった彩夏は嬉しそうだ。
「じゃあ、俺だけで行ってくる。ついでに飲み物も買いたいし、雪ちゃんは何か飲みたい?」
「冷たいのは何があるの?」
「麦茶と作ればほうじ茶、それと乳酸菌飲料の原液だな。炭酸が無いから買いたい」
あとは甘酒かな。うちは全員で飲むからノンアルのだから安心して欲しい。
「じゃあ、ひろ君と同じのでいいよ」
「クゥンノッサ」
普段なら絶対に使わないのに、自然と言葉に出るな…。やはり、彼女の容姿が異国情緒だからなのか?
「行ってきます」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
雪ちゃんに見送られて外に出る。
まずは、コンビニで炭酸を購入。買ったのは、そのコンビニ会社限定の新商品。やっぱ新商品って気になるよね。次に向かうはスーパーだ、今日は甘酒のみを購入。今日のおかずは必要ないし明日の朝食と弁当分は冷蔵庫と冷凍庫にある。
保育園に到着。まずは門にあるインターホンを押して知らせる。
『はい』
「内宮です。双子の愛美と朝輝のお迎えに来ました、兄の広也です」
ここの保育園は上空から見ると“コ”の字形をした建物になっている。園庭が直接見えないようにしているのは防犯のため。左側も隣接している建物の関係で侵入不可だ。
『おまたせしました。中にどうぞ』
入口のすぐそばが職員室なので無事、中に通される。
ちなみに入口は右側“|”の部分の下側だ。
そして、中に入れば待合室風の広さが確保されているので、お迎えの保護者で混雑する事はない、普通ならね。
(よかった。今日は大声でしばらく滞在する迷惑オバンと取り巻きはいないみたいだ)
後から聞いた話だと理由が不明な転園をしたとの事。で、親分を失った取り巻きはすっかりおとなしくなったそうだ。新入園の保護者に変な人はいないといいけど。
「今、呼んできますからお待ち下さい」
そう言って去って行くのは双子の副担任の先生だ。
(あれ?あの先生ってもしかして?)
一人の先生に目がとまる。間違いでなければ、俺の保育園時代の先生だ。
「「おにいちゃーん」」
双子の声に気付き、立膝ポーズにして出迎える。
二人は俺に走ってきた勢いのまま抱きつく。この時に自分の顔を守る準備と油断は禁物だ!抱きつくというよりタックルだからなコレ。
「こおら、走っちゃダメでしょっ!」
先生、お疲れ様です。
「先生すみません、あちらにいる黒のカーディガンを着た方と少しお話しできますか?」
「どうかされましたか?」
不思議そうな先生に説明する。
「実は自分の保育園時代の先生に似ているんです。当時は隣の県だったので、違う方かもしれないのですが」