開店二日目(前編)
洋菓子店のオープン初日は商品が完売したので予定時間より早く閉店となった。
今はバイト全員と姉御先生で休憩しながら軽く食べ物をつまんでいるところだ。店長は今日の売れ行きで気付いたことがあるのか、明日の仕込みをしている。
「姉御先生、昼の弁当だけでなく、おつまみまでありがとうございます」
今日は鳳来さんが休みだからね。代表して面識のある俺がお礼を言う。昌史はホラ、無口なタイプだからさ。
「いやいや。初日なのに完売したんだ、皆の働きがあったからこそだよ」
烏野「でも、15時過ぎ位のピークは焦りましたね。自動精算レジで無かったらお釣りを間違えてたかもしれません」
明槻「私も商品をキレイに箱詰めするのに神経使ったな」
雪華「外で店内は数名ずつのお客さん対応で済むように誘導してくれてた、柳原君とひろ君には感謝だよ」
「「確かに」」
昌史「いや、俺一人だったら無理だよ。機転を利かした内宮のおかげだ」
「まあ、嬉しい悲鳴ってヤツでいいじゃんか」
そう言いつつフライドポテトを口に入れる。
姉御先生「本来明日は休みだったのに急遽来てもらうことになった人には申し訳ないが明日もよろしく頼みます」
「「「「「はい」」」」」
そうなのだ。明日は烏野さんと明槻さんは休みの予定だったけど、出勤することになった。
明日はローテーションで売場を回すらしく、開店から閉店まで事務所待機も含めて店に居ることになった。
みんなして用意してくれたおつまみを食べ終えて店を後にする。鳳来さんには共有されるだろうけど、義姉さんには厳さん経由で伝えてもらおうと思い帰宅したら連絡することにした。
〜店からの帰り道〜
「雪華提案のも売り切れて良かったな」
「うん。店長から提案された時には色々と悩んだけどね、いつでも作れるけど季節限定なのが多いからさ」
「例え定番化しなくても俺には季節限定含め色々と作ってくれよ?」
「Tietenkin」
俺の部屋でならキスの場面だけど、外だからしない。雪華もそれを理解しているので残念そうだ。
帰宅後、俺は彩夏と朝輝に、雪華は愛美に抱きつかれた。甘いニオイがするらしく、食べてはいないけどズルイの合唱がおきたので明日はお土産として購入できないか店長と交渉してみよう。
〜翌日〜
今日も開店からバイトだ。愛美と朝輝は遊べなくて残念そうにしているが仕方ない。夏休みになったら遊んでやるから我慢してくれ。
そう思いながら雪華と共に店へと向かう。
「今日はどんな感じになるかな?」
「正直わからんな。将来的には常連さんになったリピート客が中心になるだろうけど、今は珍しさによる集客もあるからな。日によっての客入りはかなりの変動があると思ってる」
「確かに、飲食店とは違って常にお客さんがいる必要は無いもんね。極端に言うと商品が売れて値引きや廃棄が無ければいいわけだよね?」
「そうゆうこと。後はその商品を多く売れるかの勝負だろうしな」
俺達が経営している訳では無いし、経営については無知であるけど気になるよね。
そんな事を話しながら店に着く。
「「おはようございます」」
「内宮、石嶺さん、おはよう。今日もよろしくな」
事務所に入ると姉御先生に迎えられる。
「内宮君、おはよう。久しぶりね」
声をかけてきたのは厳さんの義姉で恋人の花穂さんだ。
「お久しぶりです。紹介しますね、俺の恋人の石嶺雪華です。雪華、こちら厳さんの恋人の花穂さんだ」
そう言ってお互いを紹介する。
「初めまして、ひろ君の恋人の石嶺雪華です。厳田君とはクラスメイトとして仲良くさせてもらっています」
「初めまして、泰蔵の義姉の花穂といいます。これからバイト仲間としてよろしくね」
お互いの挨拶が済んだところで姉御先生が声をかけてくる。雪華は着替えのため、更衣室に向かった。
「何だ? 初めましてなのか?」
「ええ。高校の体育祭の時にお互い居たのですが挨拶してなかったですから、研修?の時も会ってなかったみたいなんで」
「そうなのか。明槻さんと烏野さんは顔見知りになっているから鳳来が来たら紹介頼むよ」
「わかりました」
その後に鳳来さんにも花穂さんを紹介する。
今は軽くミーティング中。その間に店内の準備をして最後にブラインドを上げて驚いた。開店待ちの人がいるのだ。
事務所に行き姉御先生に報告する。
「姉御先生。開店待ちの人がいるので、最初は全員で対応お願いします」
「何だって?人数は?」
「6人はいました」
「わかった! では皆さん、最初は全員で対応お願いします。その後も臨機応変にいきましょう。今日も一日頑張りましょう」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
6人なら店内べンチで済むから暑い中待たせる必要無いなと思いつつ。昌史と一緒に対応に向かうのだった。
尚、厳さんは戦力外通告をされている。義姉さんによると狩りに出かけたそうだ。




