オープン初日
洋菓子店のオープン初日。開店は11時となっていて、現在の時刻は10時55分。店内の冷蔵ショーケースには商品が並べられている。
実は2種類だけ雪華提案のフィンランドのスイーツが販売されることになった。
フィンランドのスイーツといえばシナモンロールを思い浮かべる人が多いと思うけど、違う。
一つ目はブルーべリーパイ、フィンランドではムスティッカピーラッカ(mustikkapiirakka)と呼ばれている。
雪華曰く“ママの”と呼ばれているパイ生地仕様のを提案したそうだ。“元祖”のほうは洋菓子店より菓子パン屋のほうがいいとのこと。
二つ目はキーッセリ(Kiisseli)。これは見た目ゼリー状の食べ物。ただ、片栗粉で作るためゼリーのような固さは無いので新鮮に感じるかも。店長である姉御先生の旦那さんも「新食感でいいね」と言ってくれた。今回は冷凍のべリーミックスを使用している。こちらは見た目詐欺になる可能性もあるため、試食を用意している。
どちらも様子見で採算次第では定番化はせずにオープン限定の商品になるかもしれない。恋人の提案だから売れて欲しいとは思うよね。
まあ、俺の場合は雪華に作ってと頼めば作ってくれるので関係無いけどさ。
さて、開店となりました。
売場には雪華と烏野さん、俺は一応呼び込みという名の警備。昌史と明槻さんは事務所待機中。
結局、個人の店舗規模なので警備員の派遣は無し。業務妨害は警察へ即連絡することに。姉御先生は何で警備に力を入れようとしたのか謎だ。
個人経営の洋菓子店の客入りがどんな感じなのかは不明だけど、店内に一人はお客さんがいる状態が多い。商品は一部を除いて売り切れ御免となっている。
そんな感じで開店から2時間になったのでお客さんもいないし、雪華達に声をかける。
「ふう、外は暑いぜ。売れ行きはどんな感じ?」
烏野「お疲れ様です。シュークリームの桃クリームは売り切れたので、もう一度作るそうです。他はご覧の通りですね」
お〜、中々売れているのでは?こういう店はリピート客が重要な気がするからな。是非、美味しさを知ってまた来て欲しいな。
「雪華提案のキーッセリは売れたのか?」
雪華「二つ売れたよ。ブルーべリーパイは何と完売!」
「スゲーじゃん。あれだけブルーべリーが大量に乗ってれば人目を引くか」
確かにブルーべリーパイの陳列場所には〘本日完売〙の札が置いてある。
外に戻ろうとしたら昌史に声をかけられる。
「内宮、交代して昼飯にしてとのことだ」
「了解だ。外はかなり暑いから注意しろよ?ファン付き服にしといて正解だったよ」
「マジかよ」
そう言葉を交わして店側から事務所に入る。
「お疲れ様です」
「おお。内宮、お疲れさん。問題はあったか?」
「姉御先生が何に対して警戒しているのかはわかりませんが、問題はないですね」
「そうか。妊娠中なのも影響してなのか警戒心が高くなっていてな、勘弁してくれ」
「そういう事でしたか。何でも産前ガルガル期と言うそうですね。一番下を妊娠中の母親の付き添いで一緒に行った産婦人科で聞いたことがあります」
明槻「へえ。そんなのあるんだ」
「うん。男の俺にはわからないけど、自分以外の命を宿してるからだろうな」
「なるほどね。ところでお店はどう?私も石嶺さんと交代するんだ」
「一人は店内にいる時間が多いな。雪華提案のブルーべリーパイは完売したし、シュークリームの桃味は追加するそうだ」
「好調みたいで嬉しいね。じゃあ売場頑張ってくるね」
そう言って店内へと向かった。
「じゃあ、これ弁当な。内宮は外だし水分補給もしっかりな」
「ありがとうございます。では、いただきます」
そう言って事務所にあるソファーテーブルで食べ始めると雪華も来たので、雪華と姉御先生と一緒に雑談しながら食べる。
三時のおやつの時間付近になると周知されてきたのか客足が増えて次々に完売していき、夕方17時30分頃に早いけど今日は閉店となった。




