洋菓子店の面接
今って梅雨なんだよね?そう思うような天気が続いている。つまり、晴れているってこと。
梅雨入りして数日は確かに雨だったし、雨は降らずとも曇り空ではあった。
俺の保育園時代は毎日、一日中雨が降っていた印象なんだけどな、だって毎日カタツムリを捕まえて保育園に登園していたんだから。
双子の愛美は間違いなく俺と同じ行動をするだろうけど、肝心のカタツムリがいないので登園は平穏だ。
姉御先生の旦那さんが今度オープンする洋菓子店の面接が日曜に決まった。
オープニングスタッフなら新人に意地悪するおばさんもいないだろう。
そんなことを思う教室にて。
厳さん「なあ、内宮知ってるか?今度この辺に洋菓子店がオープンするんだと。そこに姉ちゃんがバイト募集があれば応募するって言っててさ、俺心配だよ」
昌史「心配て何が心配なんだ?」
厳さん「もし、店長がイケメンだった場合に寝取られたらどうしようって」
昌史「呆れた。そんなの物語の中で、現実にはそうそう無いだろ」
厳さん「そんじゃ昌史は義妹ちゃんが他の男に言い寄られても平気なのかよ?」
昌史「平気な訳無いだろ!絶対に許さん」
何だろうこの会話。無自覚だろうけど、放置していたら盛大なノロケ大会に発展して、後から悶絶するんじゃねえか?そろそろ止めてやろう。
「厳さんが言ってる洋菓子店と俺が知ってる洋菓子店が同じ場合、その可能性はゼロだから安心しとけ」
厳さん「何で断言できるんだよ!」
「その店長の奥さんが姉御先生だからだよ」
昌史「姉御先生こっちに戻ってきたのか?」
「ああ。月曜に商店街で会って話したからな、妊娠してて幸せそうだったよ」
昌史「良かったな厳さん。姉御先生が奥さんなら安心だよ」
厳さん「そうだな。他の女性に手出ししたら男じゃなくなってるだろうしな」
「ま、迷惑客が言い寄る可能性もあるから何かしらの対策は必要かもな」
厳さん「それなら俺もペアリングを購入したから牽制になるかもな。内宮の嫁さんは…大丈夫か」
「ついにペアリング買ったのか!昌史も?」
昌史「俺も買った。こっそり指の大きさを調べてな」
どうやって調べたのだろう?自分の指と比較でもしたのだろうか?謎だ。
そんな日々を過ごして洋菓子店の面接当日。推薦者として、俺も同行することになった。
場所は店がオープンするところ。売場側の内装は工事中だけど、その他はほぼ完成している。
ちなみに、店舗兼住宅になるそうで借家では無く購入物件とのこと。駅前含めて本格的な洋菓子店は無いから繁盛するといいな、と思う。
雪華達が面接中に姉御先生から相談があった。
「内宮すまんが開店から数日間、臨時の警備バイト頼めないか?」
「俺一人ですか?」
「いや。警備会社には連絡してあるけど、事務所待機なんだ。店側の列整理とかが必要になった場合に備えてお願いしたいんだ」
「なら昌史、柳原も誘っていいですか?高校でも同級生なんですよ」
「そうなのか!二人がいれば心強いな」
「確認して先生に連絡しますね」
「落ち着いた後は女子に対しての迷惑客とかも心配だよな。私がこの体だし」
「実力行使してもいいなら、俺の恋人の石嶺雪華が護身術の心得ありますよ。関節をキメて相手は泣き叫ぶと思います!」
「それは心強いな」
その後は雑談しながら待っていると面接を終えた雪華達が戻ってきた。
「結果は後日なのか?」
雪華「ううん。全員採用されたよ、開店が夏休みに入ってからだから開店早々テスト期間の休みで迷惑にならずに済んだよ」
「そうか!俺も警備バイトで数日間は働くから」
鳳来「姉御先生。これからバイトとしてお世話になります」
「ああ。皆もよろしく頼むよ」
「「「「はい。よろしくお願いします」」」」
気合い入ってるな〜、と思いながら店を後にする。夏休みが明ければ平日は昼間の時間帯で働ける人を採用しないといけないから高校生の採用は無いかもしれないな。
月曜に昌史にバイトの打診をしたら受けてくれた。厳さんもお願いしてきたから一応は先生に報告しておいたが断られても俺は関係無いぞ。




