烏野さん家にて
遅くなりました。
中間テストも終わり、体育祭も終わり、衣替えも終わった六月の日曜に烏野さん家に来ている。
衣替えに関しては前後一週間の移行期間が設けられている。ただ、肌が弱く長袖を着用したい生徒や理由がある生徒は長袖でも平気。逆に言えば冬服でも学校指定半袖Yシャツ着用可ということ。
漫画やラノべみたいに風紀委員に注意されてから何かしらの問題に発展するということもない。第一、この高校に風紀委員ないし。
さて、今日烏野さん家にお邪魔したのは以前から頼まれていたポタージュ作りのため。本当は打ち上げの時に、と話をしていたけど皆の予定が合わないので単独での開催となった。
来ているメンバーは俺と雪華、鳳来さん、同じマンションに住む明槻さん、食べ物の匂いを嗅ぎつけた笹嶋さんだ。殆どじゃね?と言うツッコミは無しでお願いしたい。
烏野さん家のシステムキッチンがスゲーと関心していたら明槻さんとこも同じだって。同じマンションだし当たり前か。
ウチのは一体型じゃないからね。故障した時どうすりゃいいのよ?とは母さんの言だ。
烏野さん家族が昼飯も終えてから我々はキッチンにいる。
「さて、ではポタージュ作りを開始します。俺のは家庭向きだし、手間をかけてとかの部類でもないけどいいんだよね?」
「「うん」」
実際に作るのは鳳来さんと烏野さんで明槻さんは見学、笹嶋さんは食べる係、雪華は笹嶋さんと動画をみて寛ぎ中だ。
「まずは定番のコーンポタージュだけど、今の時季はとうもろこしが無いのでコーン缶で代用します」
「「へえ〜」」
「とうもろこしから作ると少し手間がかかるけど美味しいから是非作って欲しい。で、一応みんなが食べると想定したから分量はコレね」
人数分の分量にした材料を渡す。
「じゃあまず鍋に牛乳・コーン缶・塩・コンソメを入れて」
そう言いながら俺は手伝わずに二人に指示だけ出していく。スパルタになるのか不明だけど実際に自分で作業したほうが覚えやすいと思うのが俺の持論。
「これで完成。これだけだと簡単すぎるから次のは色々と応用ができるやつね」
鳳来「すっごく簡単で拍子抜けするところだったよ」
烏野「うん」
「今度はさつまいものポタージュね。だけどアレンジして、スーパーで手軽に買えるようになった焼き芋で作るよ。今度はハンドミキサーを使うから、悪いけど烏野さんお願いね」
烏野「大丈夫です。準備してあります」
「じゃあまずは鍋に刻んだ玉ねぎを入れて、飴色になる少し前まで炒めて……」
そんな感じで作業は続いていき、焼き芋ポタージュも完成。コーン缶のポタージュは冷蔵庫で冷やして、冷製ポタージュにしてある。
さて、審査委員長の笹嶋さんの評価はいかに?そう思いつつ笹嶋さんを見てると、オモチャ扱いに気付いた雪華にそっと小突かれた。
明槻「両方美味しいね」
笹嶋「うん。焼き芋は焼き芋の味になってるし、不思議な感じ」
「焼き芋のハンドミキサーの工程とかは他の材料にも応用可能だから、自分の好きな食材で色々試してみなよ」
鳳来「そうする。動画だと待ち時間は飛ばされるからどういう状況にしておけばいいのか不明なのも解消できたし」
烏野「ですね。実際に作るとわかりやすくて、いいですね」
二人にも満足してもらえたようで良かった。そう思いつつ皆で雑談していると。
鳳来「内宮さ、ゆきちゃんから聞いたけど桃瀬さんの農園の手伝いバイト反対なんだって?」
烏野「桃に触る作業だったら後々面倒になるかも、と言ってたとか」
明槻「何それ初耳なんだけど!」
「う〜ん。桃瀬さんがいないここで言うと陰口みたいで嫌なんだけどな。笹嶋さんて桃瀬さんと下の名前で呼びあってるよね。どういう関係なの?」
笹嶋「幼馴染とまではいかないかもだけど、ご近所さん。明槻さんと烏野さんの関係に似てるかも」
「じゃあ、手伝ったことある?」
笹嶋「お小遣い稼ぎみたいな感じで少しだけ。でも、桃に触っちゃってからは…あ!」
「笹嶋さんは気付いたみたいだけどさ、桃が繊細な果実なの知ってる人いる?」
知ってるのは俺と雪華と笹嶋さんだけ、か。
「笹嶋さん。これさ、今話してもいいと思う?」
笹嶋「声をかけたのは女子組だけだし、石嶺さんと内宮君が結託して止めさせてると思う可能性もある。たまに思い込みが激しい時があるし」
「笹嶋さんはどんな作業を頼むか知ってるの?」
笹嶋「多分、というのはある。直接では無いけど間接では桃に触るかもしれないから、あたしはバイトしない」
「じゃあ、桃が繊細な果実というのをこの場の女子は知ってると桃瀬さんに伝えてもらっていいかな?」
笹嶋「その位、お安い御用」
というわけで、桃の果実について説明しておいた。折角の桃を無駄にさせたくないからね。
そんな感じで烏野さん家を後にする。
夜は雪華との時間を大切にしたので不安な気持ちにはなってないから安心してくれな。




