雪華とデート
みんなでテスト終わりの打ち上げでもするのかなと思っていたけど、体育祭の後にまとめてやることになった。
鳳来さんと烏野さんへの簡易料理教室も含まれている。連休中のお礼もしたいしね。
今日は日曜。今は雪華と電車でとある場所へ向かっている。
「今日行くところはまだ秘密なの?」
「もういいかな。この展示即売会に行くんだよ」
そう言って1枚のハガキを雪華に渡す。
「山野草展?」
「うん。毎年この時期にこれから開花する種類の夏の即売会があるんだよ。ちなみに商業ビルのイべントスペースでやるんだけど、秋には同じ場所で多肉植物の即売会もあるぞ」
「それってまさか!」
「ああ。雪華の好きなコノフィツムも販売されてるな」
「うわー。早くバイト始めてお金貯めないと」
「焦って変なのには応募するなよ?」
「そうだ!バイトと言えばね、桃瀬さんから実家の桃農園で期間限定で働かないかって言われたんだけど、どう思う?」
「仕事内容は聞いたのか?」
「ううん。拘束時間と日給だけ」
「鳳来さんと烏野さんも誘われてるの?」
「うん。二人は日給いいし、乗り気みたい。他にも笹嶋さんと下津木さん、明槻さんも誘われてるね」
「なるほどね。現時点で言うと俺は反対」
「どうして?」
「肝心の仕事内容が不明だからだよ。桃ってな俺も育ててるし、買ってもいるからわかるんだけど、繊細な果実なんだよ。少し触っただけで果肉の部分は赤茶色に変色する位なんだ。そんな果実を仮に知識がない人達が無造作に触れば損害になるだろ?弁償してバイトを辞めても、相手はクラスメイトだから登校が憂鬱になる可能性もある。桃には触らない作業ならいいとは思うけどな、例えば農園の下草刈りみたいなさ」
「確かに。食べるのに皮をむいて少し置いただけでも赤茶色に変色するね」
「だろ?だから反対。それに言い方を変えれば単発仕事だから継続して収入を得たいなら別なのを探すべきだと思うぞ」
「鳳来さんと烏野さんと話し合ってみる」
それでバイトに関する話は終了。その後は山野草の話へと変わり、最寄り駅に到着。少し歩いた場所にある商業ビルのエレべーターで会場に。そこでさっき雪華に見せたハガキを受付に提示して入場する。
「結構、大規模なんだね」
「そうなんだよ。コノフィツムの時も期待しておけよ?」
「うん!で、今日は何買うの?」
「今日はラン類限定で購入する。ただ、雪華もいいなと思うのがあれば言えよ?値段にもよるけど購入するから」
「でも、持って帰るの大変だよ?」
「心配無用!あそこで自宅への配送手続きができるからな。購入量が多くても問題無い」
「そうなんだ」
そんなわけで見て回る。ランと言っても豪華な洋ランでは無く、地味な色合いの野生ランだけどな。当然だけど採集禁止とかの違法な植物は一切ないから安心して欲しい。
「ひろ君。これ葉っぱが綺麗だね」
「これは海外産のジュエルオーキッドと呼ばれてるランだね。日本にも自生している一部も同じ呼ばれ方をしているんだ。こっちにあるミヤマウズラなんかがそうだね。これもミヤマウズラだけど品種改良された園芸品種になるんだよ」
「へえ〜」
どうやら気に入ったみたいだな。値段は六千円か、買ってあげよう。
「すみませんこれ下さい。あと、そこにあるのも一緒にお願いします」
「ひろ君、いいの?」
「いいよ、プレゼントしてあげる。これからコノフィツムは休眠期に入るからね」
「ありがとう、ひろ君」
そう言って抱きつこうとするのを制する。
「他のお客さんの迷惑になるから、家でね」
「あ、ご、ごめん」
そんな事もありつつ買い物は順調に進み、雪華にも追加でいくつか購入してあげて、最後に配送手続きをして会場を後にする。
「この後、昼過ぎでいい感じだから昼飯食べて帰ろうか」
「うん。あ、あそこにラーメン屋さんあるよ?少し並んでるけどどうする?」
「前回来た時には無かったな。でも、止めておこうよ」
「どうして?」
「最近のラーメン屋さんてさ独自ルールが多いだろ?高級レストラン並のお作法が必要な場合もあるし、初見殺しの場合は俺達が迷惑客になるから俺がいつも行く定食屋にしとこうぜ」
「あるね、そういうとこ。じゃあ、ひろ君オススメの定食屋へ行こうか」
昼飯を終えて帰宅する。
雪華のご褒美タイムはランが到着した後日にたっぷりと堪能させていただきました。




