顔合わせと提案
雪華大熱狂だったステーキの翌日、バーベキューの班員候補と放課後会うことになった。
え?昨日の雪華の様子を教えろ?
ダメダメ!あれは家族や恋人の前でしかしてはいけない顔だった、とだけ言っておく。あの食欲と顔で恋が冷めた、なんて言うヤツは最初から好きではなかったって事だ。
〜放課後ファミレスにて〜
鳳来「今日は再度時間作ってくれてありがとね。バーベキューの班に加わりたいって人達がコチラです」
そう鳳来さんが言って、自己紹介を促してくる。
「明槻千奈津です。中2の時にこっちに引っ越ししてきました。烏野さんと同じマンションに暮らしてます。タイプの男性は年上で筋肉のある方です」
この子が烏野さんとの知り合いぽいな。
「笹嶋佳奈。調理実習で男子にブチ切れた本人。タイプは甘やかしてくれる人」
何だろう、ダウナー系の臭いがする。親戚のあいつ好みかもしれん。
「桃瀬明海だよ。絶賛彼氏募集中なので男子組でいい人いたら紹介して下さい!タイプは実家の桃農家を継いでくれる人」
明るい人みたいだな。これも、親戚にいるにはいる。農家の三男坊で農家の苦労がわかるやつ。
てか、タイプを言うのが流行りなの?
厳さん「じゃあ、次は俺に相談してきた相手だな。恋人同士の二人だ」
今度は厳さんの番か。
「新山爽太です。〔にいやま〕ではなく〔にやま〕なのでよろしくお願いします。隣は幼馴染です」
ほほう?幼馴染が恋人とは仲良くできそうではないか!
「下津木茜よ。爽太の幼馴染兼恋人をやらせてもらってるわ。よろしくお願いするわ」
うん。キャラ作りご苦労様です。
「自己紹介ありがとう。調理実習の時から実験とかの班行動がある場合はこの班で活動している班長の内宮です。クラスでは雪華の恋人で認知してる人も多いと思うけどよろしく」
「早速だけど、この場が設けられたという事は、俺以外は了承済みって事でいいんだよね?」
鳳来「ええ。ゆきちゃんには事前に許可を貰っているしね。内宮がゆきちゃん最優先なのは何となく聞かされたから」
なるほどね。もしかしたら小学生時代のことに触れたのかもな。
「俺としても問題ないよ。皆が納得しているのであればお飾り班長だしね。じゃあ、俺から次の提案をしようと思うけど皆時間は大丈夫かな?」
聞くと次々、大丈夫との返答があった。
鳳来「提案?何かあるの?」
「ああ。どうせバーべキューをするなら施設側が用意するもの以外に美味しいものを食べたくないか?という提案だ」
笹嶋「何それ!詳しく」
「まあまあ。その前に鳳来さん、俺ら4人以外に同中出身っているの?」
鳳来「いないわね」
「ちょっとだけ同中の人しかわからない内輪ネタになるんだけど、中3の夏休み前に受験に向けたキャンプ合宿が一泊であったんだよ。そこで提供されたのが、8人班に対して3〜4人前位しかない食材だったわけ」
「「「!」」」
「これが、同中出身なら全員記憶にあるキャンプ反乱事件につながるんだけどね」
鳳来「待って。それと今回のバーベキューと何の関係があるの?場所も違うわよ」
「これは先日配布されたバーベキューに関する用紙なんだけど、食材のところに〈肉の串刺し〉とあるけど、串刺し肉で思い浮かぶのは? はい、明槻さん」
明槻「え? えっと、やきとり?」
「正解。多分これ鶏肉のことだと思うんだよ。つまり、牛肉は出ない!」
「「「!」」」
「で、海鮮系は書かれていないのを考えると、これも多分出ない!」
「「!」」
「野菜類はバーベキュー動画に出てくるようなのが書かれているけど何名に対してどの位の量があるのか不明」
「「「「!」」」」
鳳来「まさか、あの惨劇が再びあるの?」
「今回は泊まりではないから大丈夫だよ。ただ、バーベキューで満足する食事をしたいなら自分達の持ち込みが必須かもしれないってことだよ」
「「「!」」」
「考えてみてよ。普通なら施設側が利益になるように追加食材を用意して学生側が買いに行くことも考えられるよね。それなら追加食材のラインナップをここに載せてもおかしくない。それがないってことは仮に追加食材があっても同じものの可能性が高いよね」
厳さん「内宮の言うとおりだ。仮に少ない場合だと昼飯目当ての部分もあるから満足できない。それに追加食材が買えるとしても、観光地価格で高いかもしれないな」
桃瀬「待って、待って。仮に量が十分だった場合は?食材を無駄にするのは農家の娘として見過ごせないよ!」
「そこは大丈夫だ。俺も食材の無駄は見過ごせない。だから当日はクーラーボックスを持参する。食材も生食ではなく火を通す加熱調理だから問題ないしな!最後まで俺が責任を持つからこその提案だよ」
下津木「それで、私達が食材を購入したその費用はどうするおつもりなの?」
厳さんどういう事?ツンデレのツの字もない喋り方なんですけど?今日はこういう感じなの?
「あ、ああ。それに関しては返却するよ。例えば全員から千円分の買い物したら千円返すよ、その代わりに購入した食材は俺が全部持ち帰り自宅で食べて処理する」
雪華「ひろ君は食べる量が多いから大丈夫だよ。それにお金に関してもキッチリしてるし信用してあげて欲しい」
笹嶋「あたしはその提案受け入れる。美味しいもの食べたい」
「笹嶋さんありがと。じゃあ提案者の俺はトイレとドリンクバーで時間作るから話し合いして決めて欲しい」
そう言って席を立った。




