月一の恒例
今日は日曜。
朝食の味噌汁には昨日刈り取ったキヌサヤエンドウとジャガイモです。
キヌサヤエンドウは店売りのよりタネを大きくしてから収穫している。なのでつぶつぶ感が味わえる。今日のは最後なので大きさ含めバラバラだけど。
スナップエンドウも茹でて食卓にある。マヨネーズで食べるのが最高!
このマメ類は暑いと生育が悪いから、これからの季節は育てていない。その代わりのウリ類ってわけだな。最近はグリーンカーテンでゴーヤを育てる人が多いけど、ウチは育てていない。
さて、今日は母さんの訓練に付き合う日だ。
午前中のみだから母さんの実家に双子は預けて行く。今回は彩夏も連れて行くそうだ。習うかどうか一度見せるらしい。
「雪華。今から午前中だけ双子以外の皆でジムに行くけど、一緒に行くだろ?」
「何しに行くの?」
「母さんの護身術の訓練相手に行くんだよ」
「あー。あたしも行く」
ジムに到着。ここのジムは俺が良く行く駅前商業ビルの駅を挟んで反対側にあり、三階建ての割と大きなジムだ。
そのジムの畳の部屋にて、俺・母さん・彩夏・雪華はストレッチ中だ。父さんは別のトレーニングに行ったよ。
「広也。そろそろやれる?」
「ああ。大丈夫だ」
「あやちゃん。これから、お兄ちゃんと組み手をするから見ててね?」
「うん」
「雪華、悪いんだけど俺が投げられてるように見えて思わず飛び出すかもしれないから、後ろから抱いててもらっていいか?」
「そうだね。任せといて」
そうして、俺と母さんは対峙する。俺が暴漢役として。
バタン
ドタン
バターン
彩夏はいきなりお母さんがお兄ちゃんを投げはじめたので、やっぱり飛び出そうとしたので雪華が止めている。
「おかあさん、なんでおにいちゃんにひどい事するの!」
彩夏は涙目で母さんに抗議している。
「あやちゃん、落ち着いて。あれはね訓練なの」
「訓練?」
「学校でも、変な人がいるから下校は待ってねと先生が言うことあるでしょ?」
「うん」
「今のはね、護身術と言って変な人から自分の身を護るためのものなの。お母さんもお兄ちゃんもそれを習ったのよ」
「そうだぞ。兄ちゃんもお姉ちゃんも習ったんだぞ。だから、あやちゃんも習ってみるか?」
「そんなこと言われてもわかんないよぉ」
「これから毎月お母さん達の訓練に一緒に来て、やりたいかどうか決めればいいから、ね?」
「うん」
彩夏は理解が追い付かずにいるみたいだ。
俺みたいに明確な理由もないもんな、仕方ないことだろう。
★★★
俺が護身術を習う事になった切っ掛けは雪華と小学校に入学してからだ。
自分達とは違う髪色の雪華は標的となった。だから母さんに相談した。護身術というのを知り教室に入り習った。どんなことからも雪華を護るために。
雪華と遊べればそれでいい小学生時代だった。
例えクラスの男子が女子と遊んでることをからかってきても関係なかった。
そんな雪華も俺と一緒に習いはじめた。だから雪華も心得がある。
その後も雪華と離れ、引っ越すまでの間も誰とも仲良くはしなかった。転校した小学校でも時期的に卒業間近だし、クラス以外で会うことは無かった。
護身術を習って一番良かったのは精神力を鍛えられたことだろうな。
★★★
これが内宮家の月一の恒例行事だ。
流石に母さんも教室に通うのには色々と抵抗があるらしく、感覚を覚えておくために俺が訓練相手となっている。
「雪華もやるか?」
「いいの?彩夏ちゃん、お母さんだけじゃなくてお姉ちゃんもできるんだよ。見ててね」
「うん」
「では。お願いします」
パタン
ドスン
バタン
「ふう。ありがとうございました」
「引っ越ししてからも教室通ってたのか?」
「向こうには無かったから別のをね。でも、体が覚えてるもんだね」
「受け身は大丈夫そう?」
「あー、布団の上でやってた。見つかって柔道教室の受け身練習に行かされた」
「なーにをやってんだよ、まったく」
その後も部屋の制限時間まで母さんの訓練に付き合った。母さんが休憩中は雪華が相手。
俺?俺は相手役だし普段から体力つけてるから問題ないよ。
そんな感じで午前は終了。
雪華も帰ってシャワー浴びたら外出気分じゃないらしく、昼飯の後は双子も一緒にカードゲームやボードゲームで遊んで過ごした。
昼飯で腹ペコ怪獣の三人が暴れた形跡が残されていたのは言うまでもない。




