体育授業
突然だけど、我が高校の体育祭は5月下旬にある。これは、暑さ避けだな。秋には文化祭も控えてるので連続しての学校行事を避ける目的もありそうだけど。
現在体育の授業中。
今はペアになってストレッチ中だ。俺は厳さんと昌史は他クラスに知り合いがいるらしく、その人とやっている。
「ほーら厳さんしっかり!いつも画面上で激しい動きで狩りしてるんだから平気でしょ?」
「てててて。バカヤロウ、キャラと俺を一緒にするんでねえ」
「あはははは。でも、体を伸ばさないとずっと同じ体勢で座りっぱじゃ体に良くないぞ」
「ああ。姉ちゃんにも言われた」
「恋人から言われたなら、尚更改善しないと愛想尽かされて、別れ話になるぞ」
「怖い事言うなよ!長年の想いがようやく実ったんだから」
「そう言う義姉さんも、一緒にプレイしてるんだろ?」
「いてて。ああ、ただ姉ちゃんはヨガ教室に通ってるからさ、柔軟はしてるんだよ」
「じゃあ、義姉さんと一緒に家でヨガやればいいじゃねえか!義姉さん、厳さんと付き合うようになって一人暮らし解消して戻ってきたんだろ?」
「ぐうっ。ああ、そもそも一人暮らしの理由は俺が姉ちゃんの事が好きなのを忘れさせるためだったからな」
「なら、提案してみろよ。義姉さんのイヤ〜ンな格好を間近で見れる大チャンスじゃねえか!」
「いってぇ。お前、嫁さんと絶対何かあっただろ!それとも偽者か?答えやがれ」
ピーー!
「ほら、集合の合図だから行こうぜ」
「まったく」
厳さん、結構凝ってたな。
今日は講堂をネットで仕切って半面ずつ男女での授業になっている。
まあ、雨だから仕方ないね。本来男子はサッカーの予定だったけど、バスケになっている。女子はバレーボールだ。
別のチームが試合中だけど、控え男子の視線は女子側に向いているのがほとんどだ。そんなことを言ってる俺も視線は雪華だけどな。
俺らのチームは俺・厳さん・昌史・別クラスの二人構成となっている。まあ、即席チームだし敗北中ですよ。トーナメント形式ではなく順番での試合だ。
負けたからと言って誰かに八つ当たりする二人でも無いみたいでその辺は安心している。
あ、雪華の試合が終わった。
俺の視線に気付いた雪華が腰の位置で軽く手を振ってるので、俺も軽く振っておく。何だかこういうやり取りっていいよね。
そんなこんなで授業は終了。次は皆さんお待ちかねの昼飯の時間ですよ!
そんな感じで教室に向かう準備をしていると…
「キャーッ」
女子側から悲鳴が聞こえたので見てみると雪華が倒れた?幸いすぐに起き上がり床に座った。まあ、受け身とれるから余程ではない限り心配はしないが。
「雪華」
俺は雪華の元へと駆け寄る。女子側の先生も駆け寄ってきた、授業は終了していることもあり女子側にいる俺への注意はなかった。
「どうした?何があった?」
どうやら、雨の影響かすべったらしい。
「雪華。俺の肩に捕まって足首を見せてくれ」
そう言って雪華には立ってもらい、俺は膝立ちで確認することに。
「歩ける?」
「今はちょっと痛いから長距離は無理かも」
「保健室に連れて行くから、はい」
雪華に背中を向ける。それだけで察した雪華は俺に体を預けてきた。
「ごめんね。助かる」
そうして、おんぶで保健室へと向かった。
保健医の先生に確認してもらったが、今のところ異常はないとのことで湿布を貼ってもらう。
女子更衣室が講堂脇にあるので、おんぶで戻り制服に着替えてもらう。
スカートだと流石におんぶは、と言われたので人が居るところでは体を支えるかたちでそれ以外、特に階段は文句を言わさずにおんぶで教室へと戻る。
お姫様抱っこにするか?と思ったが、先読みした雪華から結婚式でお願い、と言われたらやれないでしょ。
雪華が教室へと戻ると皆が心配して集まってきたその隙に、教室の隅でササッと俺も制服に着替えた。
その後は少し遅れたが昼飯も食べ終え、午後の授業は幸い移動教室もなく過ごし帰る時間となった。
「雪華。病院行くか?」
「ううん。平気だと思う」
「悪いけど、確認させてくれ」
そう言ってイスに座ったままの状態で左足を確認する。今度はスカートだから足首含め全体が見やすかった。
「ありがと。痛みも引いたし歩けるよ」
「よし。じゃあ帰り道はほぼバスだし行くか!ただ、雨だから荷物は全部俺が持つな。あと急に痛みがでたら我慢せずに言ってくれよ?」
「ありがと。じゃあ帰ろうか」
帰宅後、ドラッグストアに行き湿布を数種類購入。夜も痛みを訴えることは無かった。
翌日は普通にしていたし、痛みを隠す仕草もしていないけど念の為に数日は注意しておくことにする。
別クラスの女子達の間で、俺と雪華が夫婦のような信頼関係だと話題になったことを後から鳳来さんから聞かされるのであった。