ショーコ先生再び
登校する前、母さんに呼び止められる。
「広也。昨日言い忘れていたんだけど、保育園の双子の副担任の先生から『話が通りましたのでお連れして大丈夫です』と伝えて欲しいと言われたけど何なの?」
あ、通ったんだ明日行こうかな。
「母さん、今日先生にさ『大丈夫なら明日来ます』と伝えてくれる?何かは帰ったら話しするから」
「わかったわ。じゃあ気をつけて行ってらっしゃい」
母さんに見送られて家を出る。雪華もどうしたのか心配したが「保育園の先生に頼みごとしただけ」としか言わなかった。
帰宅後、母さんから明日大丈夫だってと確認がとれたので、明日は俺が保育園に双子のお迎えに行くことを伝える。母さんも薄っすら感づいたみたいだ。
〜翌日〜
「それじゃ母さん、今日の双子のお迎えは俺が高校帰りに行くから先生によろしく言っといて」
「わかったわ。お願いね」
「雪華。今日、双子のお迎えに保育園行くから一緒に来てくれるか?今後も一緒に行けるようにしておきたいから」
「わかった。昨日の話ってそれだったのね」
「そゆこと」
〜放課後〜
「それじゃ雪華、帰ろうか」
「うん」
調理実習はまだ先なので、昨日班員になった女子からも打ち合わせとかで呼ばれることも無く、普通に帰宅する。
この後の計画を悟られないように、話しを盛り上げつつ保育園に向かった。
「ちょっと待ってね」
雪華に断りを入れ、いつも通り保育園のインターホンを押す。
『はい』
「内宮です。双子の愛美と朝輝のお迎えに来た、兄の広也です。あと、先生に確認済みの女性も一緒です」
『少々お待ち下さい』
『お入り下さい』
無事ロックが解錠される。
入園すると、ショーコ先生が出迎えてくれる。隣には副担任の先生も一緒だ。
「ショーコ先生、先日ぶりです。今日は会わせたい人を連れて来ましたよ。石嶺雪華、ゆきちゃんです」
「ほら、雪華覚えてない?俺らが保育園時代に二人してお世話になったショーコ先生だよ」
「まあ、あのゆきちゃんなの?幼い頃から可愛かったけど、今はすごく綺麗になったわね」
「え?ショーコ先生ですか?お久しぶりです!」
うんうん。二人とも驚いたみたいだな?ただ、リアクションが小さいのが残念だ。二人が昔話をしているので、俺は副担任の先生に声をかける。
「先生、要望を聞いて下さりありがとうございます」
「まあ、先生が昔に世話した子供ということもありましたからね。それに広也君が一緒なら何かあった時の対処も可能だろうとの判断です。双子ちゃんは呼んできても大丈夫ですか?」
「はい。お願いします」
雪華もショーコ先生も盛り上がってるな。
あ、他のお迎えに来た保護者の迷惑にはならないようにしてるから安心してくれ。
☆☆☆
「雪華、そろそろ帰ろうか。ショーコ先生も仕事があるだろうし」
双子はお迎えが兄であることと、雪華もいることに嬉しさ爆発といった感じだ。
「そ、そうだね。ごめんなさいショーコ先生」
「いえ、私も懐かしい気持ちで一杯なのは同じですから」
「雪華、身分証を先生に提示して。今後、俺と一緒ならという条件付きで来園できるから。またショーコ先生と話せる機会もあるよ」
これは、さっき聞いた話。俺と一緒なら同行者として来園が許可された形だ。
「本当に? これ学生証なんですが、一緒のほうがいいですか?」
「では、念の為に両方コピーを取らせていただきます」
対応してくれているのは、副担任の先生だ。
今回の窓口的な感じなのかもしれない。尚、コピー機は職員室入口すぐなので監視することは可能だ。
「ありがとうございました。お返ししますね」
そう言って身分証を雪華に返却している、その間に…
「ショーコ先生。俺達今、付き合っていて恋人同士なんですよ」
「それに関しては、驚きませんね。あの頃からあなた達はラブラブでしたから」
「ちぇ。つまんなーい」
「うふふふ。また遊びに、と言うのも変な言い方ですが、ゆきちゃんと一緒にお迎えに来て下さいね」
「はい。もちろんです」
「「せんせい。さよーなら」」
元気な双子の挨拶と一緒に俺達もペコリと頭を下げ園外へと出る。
帰りに雪華から「あたし達の子供もショーコ先生にお世話頼みたいね♪」なんて言われて返答に困った。




