明槻さんとの釣り
「今日はサビキ釣りなんだね」
「うん。潮の干満が少なくなる周期になるから、安定のサビキ釣りにしたんだ」
水曜日のキス釣りをしたところでは無く、俺達にとって良く来る防波堤に今日は来ている。
「水曜のキスとマゴチは大変だったんだからね?特にマゴチ。案の定また頼まれたよ…」
「マゴチも白身で美味いからな。また今度狙う予定だから楽しみにしといてよ」
「うん」
俺達学生は夏休みだけど、社会人の方達は無関係。当然だけどバイト先の洋菓子店は土日のほうが客入りはいいから、今日の土曜日はバイトが休みの雪華と明槻さんのみで釣りに来ている。前回の水曜日は蔵持先生には渡して無いから今日は渡す予定だ。
「今までは釣れて無かったけど背びれとかに毒のある種類も釣れるようになるから注意してね。特にカサゴに似ているハオコゼって種類もいるから」
「わかった。見慣れない魚やカサゴかな?と思ったら聞くようにするね」
俺も含めてだけどトングのような形状の魚つかみを使用しているから直接魚に触れないとはいえ、危険なのは変わらないからな。
「内宮君、ちょっと気味が悪い魚が釣れた」
「アイゴだな。毒があるから処理するから待ってて」
アイゴは背びれ・腹びれ・尻びれに毒があるけどキッチンバサミで切り取ってしまえば問題無い。
「よし、これで毒がある部分の処理は完了。意外と美味しい魚だよ」
「釣っときながら申し訳ないんだけどさ、次から次へと期待の眼差しになる魚はヤメてくんない?」
「それは魚に言ってよ」
それに今日は過去最高の魚種を提供出来る可能性がある。それがウメイロとタカべだ!ウチの全員分はまだだけど雪華が釣ってくれている。俺?俺はサビキで釣ったイワシをエサに青物も狙っているんだよね。
やっぱサビキの数釣りは楽しいな。アジ・イワシ・中サバと釣果も上々。
明槻「またフグだー」
こんな具合にエサ取りも多いけどな。俺も飼育向きの手のひらより小さめのイシダイとイシガキダイを釣ってるしな。あ、去年ガサガサで採集したイシダイは食べちゃいました。カゴカキダイと違って水槽の大きさによる抑制効果が無くて水槽が手狭になったから美味しく塩焼きになりました。養殖場とは違い、一般家庭の飼育環境下の個体は逃がしちゃダメだからね。
「内宮君、何だか青っぽい魚が釣れたんだけど…って、それどころじゃないか」
「雪華、悪いけど明槻さんの魚種判別してあげて。青い魚体なら毒持ちの可能性低いから」
「はーい。 玉網の準備終わってるよ」
「助かる」
イワシをエサにしている竿に反応あり!さーて、何が釣れるかな?
「ひろ君、千奈津ちゃんのはウメイロだったけどそっちは?」
「やったぜ!カンパチの幼魚だ」
「くあ〜。お刺身が楽しみだー」
「あと二匹は釣りたいよな」
「だね。あたしも狙う?」
「いや、雪華は引き続きサビキを頼む。今日のウメイロとタカべはサビキに良く反応しているからさ」
「わかった」
そんなこんなで15時頃、少し早いけど納竿する事にした。結局毒魚はアイゴだけで警戒したハオコゼやゴンズイは釣れなかったので安心する。
「本当にカンパチいらないの?次も必ず釣れるとは言えないよ?」
「うん。色々釣れたから大丈夫だよ。眞代ちゃんにもあげるけど、種類も量もあるからさ」
「わかった。次に優先してあげるから」
雪華「それじゃあ、スーパーではあまり見かけない種類の食べ方は教えたやつでお願いね。それとウメイロの刺身はわけたほうがいいからね」
「わかった。今日はありがとうね。またお願いします」
「千奈津ちゃん。明日、バイト先でね」
「うん。バイバイ」
釣れたカンパチは二匹なので蔵持先生へのお土産にすることにした。もちろんサイズが大きいほうがウチの分だけどな!
「本日の釣果はこちらになりますが、カンパチは捌けますか?」
「この大きさなら、大丈夫ですよ」
「わかりました。では、今日の飲み会は刺身の盛り合わせでお楽しみ下さい」
「もう、めっちゃ楽しみ。特にウメイロの刺身が魅力的で嬉しいですよ」
「わかります、わかります。アラで出汁を取った味噌汁も間違い無いと思いますから」
「ですね」
「では、失礼します」
「先生、失礼しますね」
「気を付けて帰って下さいね」
一旦帰宅してから、蔵持先生へ渡す魚を自宅へと届けた。いつも高校の校門で渡していたんだけど、どうせ自宅バレしているんだからと届けることにした。夏の暑さで魚が傷むのも嫌だしね。
今日の我が家の晩飯も刺身の盛り合わせだ。刺身が提供出来るとわかった時点で母さんに連絡していたから、ご飯のおかわりも問題無いからな。
明日の雪華はバイトだけど、俺と彩夏はまたセミの幼虫を探しに行く。今度はアブラゼミかミンミンゼミで、これは羽化観察後に放虫する予定だ。観察だけだから放虫しても問題は無いから安心してくれな。
〜明槻side〜
あたしは今、お母さんが捌いている魚の切り身をアニサキスライトで寄生虫の有無を確認する作業をしている。実はアニサキスライトは内宮班釣り倶楽部の全員が所持したのだ。そして、お母さんは駅前料理教室の魚の捌き方講座を受講している。そんな本格的にやらなくてもいいのよ?専門学校予定だから勉強熱心は不要とか言って釣りに行く日を楽しみにしないでちょうだい?
「いや〜、今日の刺身も美味いな」
「本当ですね。新鮮な魚を味わえるなんて、釣りを覚えてくれて嬉しいわ」
「よっ!姉ちゃんさすが!」
「次も期待しているぞ!」
えーん。




