ペアリング
「すみません。ペアリングを見せて下さい」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
俺が、今日このアクセサリー店に来たのはペアリングを購入するため。いつかはキチンとした婚約と結婚指輪を購入するけど、まだ学生。だけど、少しばかりの俺の本気の気持ち。
ポカンとしている雪華の手を引いて、店員さんの後をついて行く。
「こちらになります」
見ると、とてもシンプルなデザインの指輪がある。飾りもないし、もちろん宝石なんてあるわけない。だけどこれなら学生らしいし、学校の規則にも抵触しないだろう。
「このシンプルなやつが欲しいのですが」
「では、こちらでサイズ測定させていただきます。どちらの指になさいますか?」
「右手薬指でお願いします」
これは、事前に調べたこと。ペアリングは右手につける人が多いらしい。いずれ本物を左手につけたいから、と。
俺も同じ気持ちだ。雪華は値段の上下にこだわることは無いと信じたい。が、やはり俺にとっての最高なものを贈りたい。だから、今回は右手で。
まだ、状況が飲み込めていない雪華の右手薬指のサイズと俺の右手薬指のサイズを測定してもらう。その後、在庫確認してもらうと二つともあるとのことなので、購入する。値段?ペアリングだしそこまで高額じゃない、とだけ。
雪華を連れて、屋上へ。ここは結構見晴らしがいい。
「雪華。これは俺の今の気持ち。だから、着けて欲しい」
「ずるすぎるよひろ君。お願いします」
そう言って、右手を差し出してくれる。その薬指にはめた。
「今度はあたしの番」
そう言って俺に指輪をはめた。
「何だか、結婚式ごっこみたいだね」
「そうだな。でも、ごっこが取れるように、雪華に愛想を尽かされないように頑張っていくよ」
その先も、ずっと。
「うふふ。期待してます」
「じゃあこの空気はこれでおしまい。はいこれ、指輪のケース。校内で、はずすことが多いだろうから持っといて」
「んもう。もうちょい浸っていたかったのに。そんなんじゃ、愛想尽かしちゃうぞ?」
「でも、俺達らしくないだろ?」
「だね。仕方ないから、ソフトクリームにたこ焼き追加ね」
「おいおい。流石に帰えれば夕飯だぞ?」
「これとそれとは別腹よお。たけのこご飯大好きだし、お残しはしませんでぇ」
「あはは。んじゃフードコートに行きますか」
「うん」
そう言って俺達は手を繋ぎ向かうのだった。若干の夕日を背中に受けながら。
〜雪華side〜
ひろ君に連れられてきたのはアクセサリー店だった。
あたし達にしてみれば、一番縁遠い場所。
そこで、ペアリングを購入するという。
その上では無いとはいえ、これを買う気持ちがどういうのかわかる、わかってしまう。だって幼馴染で大好きな人だから。
あれよあれよと右手薬指のサイズを測られて気付けば購入して屋上へと来ていた。
そして、指輪の交換。
「何だか、結婚式ごっこみたいだね」
「そうだな。でも、ごっこが取れるように、雪華に愛想を尽かされないように頑張っていくよ」
あたしもひろ君に愛想を尽かされないようにしなくちゃね。
「じゃあこの空気はこれでおしまい。はいこれ、指輪のケース。校内で、はずすことが多いだろうから持っといて」
そんな事言いながら恥ずかしいのはわかるんだから!若干夕日だけど、その顔は夕日のせいじゃないって!でも、あたしも同じだろうから乗らせてもらう。
「んもう。もうちょい浸っていたかったのに。そんなんじゃ、愛想尽かしちゃうぞ?」
「でも、俺達らしくないだろ?」
「だね。仕方ないから、ソフトクリームにたこ焼き追加ね」
「おいおい。流石に帰えれば夕飯だぞ?」
「これとそれとは別腹よお。たけのこご飯大好きだし、お残しはしませんでぇ」
「あはは。んじゃフードコートに行きますか」
「うん」
夕飯が帰ったらすぐなのは知っている。だけど、もう少しだけこの余韻に浸っていたい、だから半分こずつのちょっとだけ甘い空間に持ち込めば平気。
そうして、差し出された右手を握るのだった。今、着けたばかりの指輪の感触を感じながら。




