洋菓子店の記念セール 2日目
「これでセッティングは完了。あとは乾いたら霧吹きで水をかけるんだよ」
「うん。しいたけ・なめこ・えりんぎ・えのきたけ・ぶなしめじ・ひらたけ・たもぎたけ、なんだよね」
「そう。一応、後ろに種類の箱を切り取ったのを置いとくけどね。それと、きのこ栽培は夏の暑さに弱いから飼育部屋で栽培するけど、いつも通り部屋に入るときはお兄ちゃんかお母さんかお父さんと一緒だからね」
「はーい」
「夏休みの自由研究にするの?」
「しないよ。セミの羽化にするんだ。だからね、つかまえるの手伝ってくれる?」
「もちろんだ」
「ありがと、おにいちゃん」
昨日、俺が洋菓子店の臨時バイトに行っている間にきのこ栽培キットが到着していたので、朝食後に彩夏と一緒にセッティングをした。実はマイタケの菌床も購入してしまったんだけど、発生条件上マイタケは庭で栽培することになっている。
それと、今年の彩夏の夏休みの自由研究はセミの羽化の観察のようだ。自宅近辺にいるセミの種類はアブラゼミ・ニイニイゼミ・クマゼミ・ツクツクボウシ・ミンミンゼミ・ヒグラシの6種類だから全種類コンプリートさせてあげたいな。
彩夏が飼育部屋から出たのを確認して。
「ここ、きのこに占領されちゃったね」
「だよな。想定外だよ」
「ここには何を置く予定だったの?」
「シジミチョウの仲間とキリギリスの仲間」
「あー。でも、去年キリギリスは和室に置いてたじゃん」
「今年はキューちゃんがいるだろ?そろそろ言葉を教える時期になるから、余計なのは置きたくないんだよ」
「なるほどね」
彩夏が観察しやすいようにきのこ類は上段に置くからこの棚じゃなく、中段と下段のある棚を父さんと夏休みの最初に作製しよう。水槽は設置しないから自作で大丈夫だし。そうすれば予定していた虫類も置けるしな。
「「おはようございまーす」」
雪華と一緒に洋菓子店の事務所へと出勤する。今日のセール品はケーキ類の人気商品のショートケーキとチーズケーキとなっている。前に話したかどうか忘れてしまったけど、この店はチョコレートを使用した商品は冬期限定。なので、チョコレートケーキは今は置いていない。もちろん、誕生日ケーキとかの特注の場合は作製するんだけどね。
雪華が着替えの為に更衣室に入っていったのでソファで寛いでいると、姉御先生の子供の奏汰君が両手を広げて抱っこを要求してきたので抱っこをしてあげる。
「重たくなったね〜」
「キャハハハハ」
「ごきげんでいいね〜」
「マンマ」
「姉御先生、ごはんですって」
「いや、それ、わたしの事でママなんだよ」
「じゃあ、ごはんのマンマは?」
「マンマ、だな」
「……。ママはまーまーだよ。まーまー」
「マンマ」
「姉御先生、パパはどうなんですか?」
「ぱー、だな」
「ま、10か月ならこんなもんだったかな?これから色々と覚えようね〜」
「にーにー」
「姉御先生、これは、まさか」
「残念だが、多分ネコの事だな」
「そうなんすね」
そんなやり取りをしていると、雪華達バイト組が着替え終わり開店時間が近づいてきたので、奏汰君を姉御先生に渡してブラインドを上げに行く。今日は残念ながら開店待ちの人達はいなかった。
「姉御先生。残念ながら開店待ちの人達はいませんでした」
「そうか。 では、今日は当初のシフト通りでお願いします。もし、混雑した場合は待機組も対応して下さい」
「「「「「はい」」」」」
「へー。シュークリームは昨日セールだったのに、いつも通りの売れ行きなんだ」
鳳来「そうなのよ。根強い人気よね」
明槻「ところで、このフライドポテトは何?」
「フライヤーを貸してもらって揚げたんだよ。ほら、甘い物を食べたら塩気が欲しくなるじゃん」
鳳来「姉御先生!こんなの許していいんですか?」
「いや、その、わたしも食べたから」
「そういう鳳来さんだって食べてるじゃん」
「はっ。手が勝手に」
昼すぎまでは普段通りだったみたいなんだけど三時のおやつ目的なのか、その位の時間に混雑があった。とはいえ、外に行列は出来なかったけど店内が落ち着くまでは俺も外で待機していたんだけどね。
店長「昨日のシュークリームほどではありませんが、ケーキもご好評をいただき普段よりも売れました。そして、いつも通りの完売となりました。明日はセール最終日ですが、引き続きよろしくお願いいたします」
「「「「「お疲れ様でした」」」」」
「ひろ君聞いたよ。事務所で随分と寛いでいたみたいだね」
「雪華みたいに時間給は無いし、外の対応が無ければ寛いでいい条件なんだから」
「それもそっか」
「俺の目的は少し豪華な昼飯の奢りとバイト中とはいえ、雪華の近くにいる事なんだから」
「んもう」
記念セールは今日も無事終了。




