桃農園の探索
「ひろ君、左耳あたりの毛が抜けてるよ」
「ハゲてるってこと?」
「少しだけね。1円玉位の範囲かな」
母さん「ストレスによる脱毛かしら」
「心当たりはあるな」
今日は土曜日で雪華と一緒に桃瀬さん家の桃農園に探索に行く日の昼飯後に脱毛している指摘を受けた。最近はストレスでの脱毛症になる関係性は少ないとされているけど、俺の場合は実習生関連だろうな。
「雪華、脱毛部分目立つか?」
「あたしも今気付いた位だからそうでも無いよ。不自然にならない位に周囲の髪の毛を伸ばしておけば平気じゃないの?」
「わかった」
散髪する時に脱毛が続いているようなら隠れるように伝えておこう。
「桃瀬さん、今日はよろしくお願いします」
「うん。あたしも同行するけどね」
桃瀬さんの農園へとやってきた。去年は毎週桃を購入していたけど観光桃狩りはやらなかったので農園内には入ってないので楽しみではある。
「もう袋かけしてるんだね」
「うん。実は義斗君にも手伝ってもらったんだ。恋人とは紹介しないで学校の課外授業って名目でね」
「そうなんだ。で、どうだった?」
「最初は手こずってたけど1本終わる頃には慣れていたよ。両親も手際がいいと言ってたし好感触かもね」
「そっかー。良かったよ」
そんな会話をしながら根元付近を確認していると桃の幼果が落ちているのに気付く。
「桃瀬さん。この落ちてる幼果は貰っていいかな」
「いいけど、虫がいるよ」
「その虫が目当てだから」
「変なの」
雪華「農家さんにとって変でも、ひろ君にとってはお宝だから勘弁してあげて」
「うん。内宮君の恋人が雪華ちゃん以外は無理な理由がわかる気がする」
「でしょ」
雪華と桃瀬さんが何やら話しているけど、桃の幼果を確認する。ガの幼虫の可能性もあるけど“モモチョッキリ”の可能性もあるからだ。
モモチョッキリとはゾウムシのように長い口吻が特徴のオトシブミの仲間で赤みのあるメタリックボディが美しいとこの界隈では人気の甲虫だ。俺も専門家じゃないから不明だけど幼虫の形状や桃の落とし方からモモチョッキリと判断することにした。こいつは幸先がいいぜ。
その後も農園内ではあるけど、草地になっている場所でヒメジョオンが咲いているから確認すると小型ハナムグリ類が大量にいたので捕獲させてもらう。雪華もトカゲとカナへビを捕獲したけど厳選した一匹ずつを持ち帰ることにする。この草地は薬剤散布はしないみたいだから害虫駆除の為にも残してあげようとの結論になったからだ。
「自分とこなのに恥ずかしいけど、この農園てこんなに生き物いるんだね」
「そうだね。俺達みたいに好きな人にとっては探す場所がわかってるからさ」
桃農園に来るから予習しておいた害虫がいるんだけど、幸いその形跡は無かったので安心する。モモチョッキリも農家さんにとっては害虫だけど特定外来生物のクビアカツヤカミキリ、テメェだけは駄目だ!
探索に満足したら時間はおやつの時間となっていた。夢中になっていると時間経過が早いや。桃瀬さんには退屈させてしまったかと思っていたけど何かしらの作業をしながら一緒にいたみたいで大丈夫と言われて安心する。
そして、探索を終えて三人で駐車場近くの作業場で休憩していると。
桃瀬「内宮君さ、去年アイスの販売しようと言ったの覚えてる?」
「覚えてるよ」
「今年はやれないかな?今から準備すればいけるんじゃない?」
「それなら、専門家に任せるのはどうかな」
「専門家って?」
「雪華や鳳来さん、明槻さんに烏野さんが洋菓子店でバイトしているのは知ってるよね?」
「うん」
「そこの店長に頼んで、ここの桃を使った商品を店で販売してもらうんだよ」
「そんな事出来るの?」
「うん。何度かA品の桃も購入していったでしょ?あれ、洋菓子店の店長に試食してもらってたんだよね。だから大丈夫だよ」
「去年は何で提案してくれなかったの?」
「出来たばかりで売れるかどうかわからない店に卸すのも不安でしょ?今は地元の人気店になってるし、もうすぐ開業一周年て事でタウン誌の取材もあるみたいだから両親にも説得出来るんじゃないの?」
「説得してみる!」
「なら、これ店の名刺。洋菓子店の店長には俺から話しておくから、後の商売についての話し合いは大人のみなさんでって事で」
「わかった。ありがとう」
「今年も毎週買う予定だから、収穫始まったら教えてね」
「うん!」
「じゃあ、バスの時間だから帰るね。今日は本当にありがとう!雪華、行こうか」
「うん」
バスに乗り込み後部座席に座って見送ってくれている桃瀬さんに手を振りながら帰路につく。爬虫類のエサになるような虫もいたけど、薬剤散布があるから体調面を考えて捕獲はしない事を雪華と事前に話し合っていたから、今日の収穫は俺が捕獲した甲虫類と雪華が捕獲したトカゲとカナへビ。
「また、薬剤散布前に探索させてくれないかね?大型のクワガタ欲しい」
「桃瀬さん次第だね。少し呆れてたし」
「だよなあ」
桃農園の探索は終了したのであった。




