彩夏の元気が無い原因?
「あやちゃん。今日はこの服のここにお守りが入っているからね」
「何のお守り?」
「昨日、少し元気が無かったでしょ?だから、遊んでも疲れないお守り」
「そうなんだ。ありがとう、おにいちゃん」
今日は彩夏が小学校に着ていく服の左胸付近にあるポケットにキーホルダー型のボイスレコーダーを仕込んでおく。何事も無く杞憂に終わればそれでいいからな、安心材料が欲しいのだ。
「疲れないお守りって何よ?」
「ボイスレコーダー」
「! 彩夏ちゃんに何かあったの?」
「わからん。わからんから調査する。兄の勘が警告しているからな」
「ひろ君の勘て鋭いもんね。最近のあたしはどうかな?」
「要警戒。男性実習生一人に注意せよと感じている」
「ほう。男性というとクラス担当の人?」
「違う、古典の人。恐らく、雪華の容姿が気にくわないんだろうな。実習期間は校内の単独行動は控えたほうがいい」
「わかった!注意する。女性のほうは?」
「授業の参観が少ないからまだ不明。実際に何度か会わないと反応しないからさ」
「なるほどね。でもクラス担当の人が警戒対象じゃないのは意外かも」
「俺も初めは警戒した。イケメンでチャラそうな雰囲気だし、女子人気が高いみたいだからな。だけど反応が薄くなったんだよね」
「へぇ」
「まだまだ序盤だからな、全員に警戒はするけどな」
「頼みますね、未来の旦那様♡」
「おうよ」
実習生の授業参観の場所はその人により異なる。ま、教室後方か前方のどちらかなんだけどさ。古典の実習生は教室後方で参観しているんだけど、列は違うけど俺の前方にいる雪華を気にするような視線をたまに背中に感じるから、ケツがムズムズするんだよね。古典の授業は時間によっては催眠呪文になるから、催眠打破として利用させてもらっているよ。尚、隣の笹嶋さんは夢の世界の冒険が苦戦しているみたいで「ん〜」と苦悶の表情をたまにしている。以前内緒で撮影した動画は陽翔に送信してあり、陽翔のお宝コレクションとなっているんだよね。
そんな古典の授業が終わり、先生と実習生が立ち去ると。
「何だか後方から嫌な視線を感じるんだよね」
「そうそう。多分、あの実習生でしょ?」
「神経質そうな人だもんね」
なんて会話が聞こえてくる。どうやら、気にくわないのは雪華だけでは無いらしいな。そんな人が何で教員免許を取得するんだろうか?疑問である。
◇◇◇
帰宅すると彩夏がいたので、ボイスレコーダーを回収することにした。今日の彩夏の様子は昨日みたいな元気の無い雰囲気と違い、いつも通りなので安心する。
学校という場所の彩夏の様子を兄妹とはいえ確認する罪悪感はあるけど再生を開始する。胸の位置に付けたから彩夏の声もその他の人の声も聞き取りやすいな。
気になった部分以外は早送り再生で聞いているけど、どうやら今日は普段通りの学校生活だったみたいだな。友達との会話も楽しそうだし、意地悪されてイヤがるような事も言ってないので安心する。やっぱ杞憂だったのか?俺の兄の勘も鈍ったか?と思い始めた友達との帰宅中に気になる事を言い出した。
『今日は意地悪言う男の実習の先生に会わなくて良かったね』
『『『うん』』』
『でも、あの先生って高学年担当みたいだから移動教室以外では会わないんじゃないの?』
『だといいけど』
『でも、何で髪が短いといけないのかな?』
『ねー?腰くらいの長さがいいとか洗うの大変だよ。お母さんに手伝ってもらわないと洗えないよ』
『それと、女の子なんだからスカートにしなさいとか意味わかんないよ』
『うん。キツく言われたからさ、少し落ち込んでたからおにいちゃんに心配させちゃったよ』
『彩夏ちゃんのお兄さん優しいもんね。お兄さんみたいな人が実習の先生なら良かったのにな』
『『ねー』』
『そうだ!スカートと言えばあの先生ね、階段の下から女の子のスカートの中見て笑ってたんだって。だからじゃない?』
『『『へんた〜い』』』
おいおい。それってマジもんのへンタイじゃないかよ!そんな人を実習生として招いて大丈夫なのか?
いや、まてよ。高学年なら、そんな事をしているのを知られたらここの地域に住めなくなる人の子供がいるな。しかも女の子だからバレる可能性は高そうだ!
よし!彩夏のほうはこの人以外は問題無さそうだし、少し安心かもな。念の為に今週中はボイスレコーダーを付けておこう。
彩夏が落ち込んだ原因が判明して少しだけ安心する。ただ、へンタイが学校内にいる事の不安も確かなので複雑な心境で風呂に入った。
そして俺は知らなかった。頭の後方の部分の髪の毛が少し抜けた事を。




