穴釣り
「皆との釣りも楽しいけどさ、ひろ君と二人での釣りデートもしたいな」
恋人からデートの誘いがあったのなら快く行くのが男ってもんだろ!
「今回はゴロタ石の場所じゃ無いんだね」
雪華から釣りデートのお誘いがあったので、蔵持先生への献上ギンポも狙える穴釣りへとやってまいりました!
「だな。海水温も上がってきたから、折角なら色々と狙おうと思ってな」
「いいね!」
「ここでの注意はイセエビがいる可能性が高い。やつは当然だけど密漁対象だから、引き上げずにバラして欲しい」
「いい感じの岩組みだもんね、わかった」
「それと、タコも対象だから注意な。釣っていいのは魚類とショウジンガニだけ」
「アイアイサー」
そう言って右手の甲をおでこにつけるポーズをしなさった。
「それじゃ、足元に注意しながら始めるぞ」
「うん!」
「何だかギンポの溜り場みたいだね」
「だな。ウチと蔵持先生へ献上する分は釣れたから、ギンポの場合はリリースしよう。こういう場所は大切にしたいからな。ただ、変わった体色は持ち帰りで」
「うん」
「ひろ君待望の魚が釣れたよ」
「マジで?何?」
「こちらネンブツダイです」
「おお!群れで泳ぐ魚だからな、俺も一緒に狙おう。飼育用に持ち帰りじゃーい」
「釣り人なら普通は食べられる型の良い魚を喜ぶんだけどなあ」
「な〜にを今更言ってんだか」
ところが、追加で一匹釣れただけだった。
「ひろ君、これって」
「ああ。この二匹は産卵の為に群れから外れたペアの可能性が高いな。今回はこの二匹だけにしよう」
「Kyllä」
「今度は夏休みに皆と一緒の釣りだね」
「だな。でも、明槻さんと雪華が同じ休みの土曜か日曜があれば砂浜での釣りをするのもいいかもな。キスの時期だし、ただ雨天中止だけどな」
「他の皆は?」
「まだ遠投は難しいよ。防波堤での釣りに慣れてもらったほうがいいって」
「確かにね。そういや去年釣ったキスも元気だよね」
「そんなすぐに死ぬような飼育はしませんて」
「頼もしい、素敵」
「はっはっはっ」
帰りの電車内で次回の釣りの予定の話しになった。梅雨入りして雨天の場合は釣りには行かないのが俺達だ。正直、雨の日の外出は面倒臭いのもあるし、台風以外でも雨の場合は海が荒れるときがあるからさ行かないんだよ。それに、7月は期末テストがあるから、皆と釣りに行くようになるのは夏休みになってからだな。
夏休みか〜。今年も雪華とガサガサに行くのが楽しみだぜ!ただ、チョウチョウウオを含めて採集するのは少なくなりそうだけどな。同種同士はケンカする種類も多いから一匹いれば十分なんだよね。
最寄り駅に到着したら、今度は高校の校門前に向かう。
「蔵持先生待望のギンポになります。それと、ムラソイですね」
「ムラソイは嬉しいですね」
「喜んでいるところ申し訳ないんですが、究極の選択をしてもらいます!」
「何ですか?突然。怖いのは嫌よ」
「ショウジンガニとカメノテ。どちらかを選んで下さい」
「んなっ くっ」
そんな、胸を撃たれた人みたいな苦悶の表情しないで下さいよ。雪華なんて笑いをこらえてるんですから。
「では、カメノテで」
「流石先生、お目が高い。ま、ショウジンガニは夏休みの磯遊びで捕まえてきますから」
「それを早く言いなさいよぉ。ところでカメノテは大丈夫なのですか?その…」
「ああ。大丈夫ですよ。採集しても問題無いのは確認済ですから」
「そうでしたか」
「その辺の事はひろ君はキチンとしてるので安心して受け取って下さい」
「わかりました。今日の飲み会も楽しくなりそうですよ! では、週明けに学校で会いましょうね」
「「はい!」」
自宅に戻り、今日食べる分の下処理中に。
「どうして先生に選択を迫ったの?」
「どっちを取るか興味が湧いたんだよ。それに、俺達だって美味しいものはいくらでも食べたいじゃないか」
「んもう」
ま、先生がどちらを選ぼうとウチの分は両方確保済なんですけどね。
調理をしながらリビングを見れば妹弟達がキューちゃんと遊んでいる。餌やり以外にも構ってる時間が長いからか、人の肩に乗っても大人しくしている手乗り九官鳥となっているキューちゃんなんだよね。
「ご飯できたからキューちゃんをケージに戻して、手洗いしてきなよー」
「「「はーい」」」
キューちゃんと遊んでいても、ご飯はまだいらないとは言わないんだよね。キューちゃんとは遊べなくすると言った事は両親も俺も無いのにさ。ま、腹が減ってるだけの可能性が高そうだけどね。
さて、今日の晩飯はムラソイの刺身にカサゴの唐揚げ、カメノテの海鮮づくしとなっておりますので、ご飯のおかわりは多めに用意してありますから安心して下さい。




