潮干狩り(蔵持先生に献上編)
というわけで、やってきました潮干狩り場。
「皆と来た場所とは違う所だね」
「だな。折角だから別の場所にしてみたよ。ただ、初めての場所だから入場前に色々と確認しておくから」
確認というのはアサリ以外の貝類と生き物を採集して持ち帰ってもいいのかどうかだな。ダメと言われたら、いつもの潮干狩り場に移動するつもりだ。再びバス移動にはなるけど近場にあるからな。
貝類は指定の網袋に、他の生き物もスタッフに確認する必要があるけど、持ち帰りOKみたいだ。残念なのはツメタガイも料金内との事。害貝なんだから無料でもいいと思うんだけど、欲が出ちゃってるのかもね。
「ねえ、ひろ君」
「どうした?」
「ツメタガイばかりでアサリが見当たらないよ」
「元々採る人が少ないのに料金内なら誰も採らないって。しかも放置プレイが好きみたいだな」
「いつもの場所より、やる気の無い潮干狩り場だね」
「だな。俺達も今回限りにしよう。つまらん」
「賛成。沖側に網が張ってあるから生き物の移動も制限されてるみたいでコブシガニやヤドカリ位しかいないしね」
「あの網は何なんだろうな?アカエイとかの阻止とは違うみたいだし、砂場が続いているから危険性も無いと思うんだけど」
「もう来ないんだから、どうでもいいじゃん。アカニシ貝も採れたし戻ろうよ」
「そうするか」
入場料と一緒に渡された網袋なのに、退場する場合にも重量検査があるみたいだ。俺からしたら貝自体が稚貝レべルで小さいのに数も採れ無いらしく、網袋の上部が余っている人が多数だ。
俺と雪華の番になり、重量もアカニシ貝の持ち帰りも問題無いので退場する。飼育用の生き物の採集は残念ながら無かったよ、カニとヤドカリは自宅水槽にいるからいらないし。
「ひろ君、あれ見て」
「なるほどね。小さな貝しか採れないから大きめの貝は買ってもらう魂胆か」
「そうなると、あの網の先には大きめの貝がいるのかもね」
「セコイ潮干狩り場だな。ま、俺達は目的のアカニシ貝が採れたし、いいんじゃないか?」
「だね。この後はどうする?」
「とりあえず駅前に戻ってから考えよう」
「Sain sen」
駅前に戻るバスの発車時刻まで少しだけ時間があるので、砂場が見える場所で雪華と喋っていると。
「これから潮干狩りかい?」
「いえ。終わって駅前に行くバスを待っているところです」
「お土産見ていかないかい?採れたの小さいアサリばかりだろ?大きめのアサリやハマグリなんかも売ってるからさ」
「へえ。どこですか?」
「あそこさ」
そう言って指を指したのは雪華が指摘した店だった。
「残念ですが、あと少しでバスが到着予定の時間なのでバス停に行きますね。それから俺達が採ったのはアサリでは無いので大丈夫ですよ」
「チッ」
あのさあ、舌打ちするならもっと離れてからにしなさいよ。そんな事をしていたら潰れますよ?俺達が行く潮干狩り場とは雲泥の差ですよ?
「何であの人、あたし達に声をかけてきたのかな?」
「何も知らない初心者のカモに出来そうな若夫婦だとでも思ったんじゃないの?」
「やだもう、ひろ君てば若夫婦だなんて照れちゃうよ!」
そう言いながらパシパシと俺の背中を叩きながらクネクネする雪華に癒やされて嫌な気分は無くなったよ。
「結局帰ってきちゃったね」
「駅前付近は見るの無かったから仕方無いよ。先生に貝を渡して帰ろうぜ、キューちゃんも気になるし」
「ふふっ。そうだね」
潮干狩り場の最寄り駅は潮干狩り場へ行くためのバスの発着や快速の停車駅なのもあって店は多いんだけど、全国展開しているチェーン店ばかりだから品揃えはほぼ同じだったよ。飲食店はラーメン屋があったけど、店構えが一見さんお断りみたいな雰囲気だから店内ルールのお作法が厳しい店なのかもしれない。
高校の校門前に蔵持先生はいた。
「先生、お約束したアカニシ貝です。貝殻が大きいので二袋どうぞ」
「ありがとうございます。これだけの為に行ったとかでは無いですよね?」
「違いますって。俺達の収穫もあるので安心して下さい。ところで、今日は飲み会なんですか?」
「明日は学校ですからね。飲み会は休みの前日にするんですよ、翌日の心配しなくて済むので」
「なるほど。では失礼しますね」
「先生、失礼します」
「はい。また明日会いましょう」
「「はい」」
「「ただいまー」」
「「「おかえりー」」」
今日は遊びに行くだけで収穫物は無いのは事前に母さんに言ってあるので問題は無い。先生に収穫物があると言ったのは優しい嘘ってやつだな。
お出迎えしてくれたのは嬉しいけど、それより気になるのは彩夏が両手で持ってるキューちゃんなんだけど?暴れる様子は無く大人しくしているし。
「キューちゃんはご飯も食べて元気よ。人に触られるのも抵抗無いみたい」
母さんからそんな報告を受ける。いつから手に持って遊んでいるのかは不明だけど「まだ赤ちゃんだから、疲れてると可哀想だから休ませてあげよう?」と言ってケース内に入れといたよ。
いくら手乗りにするとは言っても構うのはまだ程々にしとかないとな。




