日曜の朝
『クゥ、クゥ』
「はいはい。お前もご飯にしような」
九官鳥をお迎えした翌日、起床後にいつも通りの飼育部屋での作業を終えて和室に来ればキューちゃんがエサをねだってきた。
九官鳥のエサは粒エサなんだけど、俺達がさし餌で与える場合は水で軽くふやかしてから与える。
文鳥の場合は喉元近くにあるそのうを見れば足りているかどうかがわかるんだけど、と思いながら口を開け無くなるまで与えておいたよ。
朝食の準備が終わり、リビングでテレビを見ながらまったりとしていると、トタトタトタと愛美と朝輝がやってきて俺を見るなり「「キューちゃんは?」」と尋ねてきた。
「こら。まずは、おはようでしょ?」
「「おにいちゃん、おはよー」」
「おはよう。キューちゃんは日向ぼっこしているから、ママと一緒に顔を洗っておいで」
「「うん」」
次に彩夏がやってきた。
「おにいちゃん、おはよー」
「おはよう。今日は早いね」
「うん。キューちゃんが気になって」
「そっか。まずは顔を洗っておいで」
「うん」
うんうん、わかるわかる。新しく迎えた生き物がいると気になって早起きするよね。ま、だいたいが三日坊主だろうけど。
俺達が朝食中、キューちゃんは現在リビングの窓際で日向ぼっこ中だ。静かな環境のほうがいいのでは?と思うかも知れないけれど、手乗りにするから賑やかな場所で俺達を仲間として認識してもらおうと考えている。
「おにいちゃん。キューちゃんにご飯は?」
朝食を食べ終わり、後片付けをしていた俺に彩夏が聞いてきた。
「どうだろう?フタを開けてみるか」
「うん」
俺がさし餌をしてから時間が経っているからな。欲しければ口を開けるだろう。
『クゥ、クゥ』
「口を開けてるよ?欲しいのかな?」
「よし、今度は虫を与えてみるか」
「うん」
おいおい、ヒナ鳥に虫なんて与えるなよと思うかもしれないけれど、野生では虫を与えているんだから問題は無いぞ。飼育下のべニスズメとかもヒナ鳥には虫を与えているからな。おっと、スズメと名前にあるけれど飼育をしてはいけない野生のスズメとは別種だからな!フィンチ類の和名には小柄の種類には○○スズメと名前があるのが多いんだよ。これらは飼い鳥として販売されている種類だから違法では無いからな、念の為。
持ってきたのはジャイアントミルワームとして販売されている種類だ。普通のミルワームよりもかなり大きいので、九官鳥のヒナの体格ならばこちらのほうがいいだろう。買ったのは生き餌として販売されているのでは無く、生タイプとして袋詰めされて販売されている死んでいるやつだ。
「食べたけど、もう口を開けないね」
「小腹が減ってただけかもな、終わりにしよう」
「うん」
一匹だけ与えたら満足しちゃったみたいだ。ジャイアントミルワームを嫌がる感じでは無かったから、単に甘えただけの可能性もあるな。
妹弟達はテレビを見ながら、チラチラとキューちゃんを見ている。窓際だけど、暑くならないようにして日向ぼっこ中のキューちゃんは寝てるけどな。
「ジャイアントミルワームは生タイプだけにするの?」
「わからん。成鳥になって生きている状態のを欲しがったら考える。正直、普通サイズのミルワームよりもジャイアントミルワームは維持管理が面倒臭いんだよ。だから生タイプのみが理想なんだよね」
「確かにね〜」
そんなのジャイアントミルワームの今後について雪華と話していたら、今度は母さんが。
「キューちゃん大人気ね」
「触って遊べるかもしれない生き物は愛美や朝輝にとっては初めてだし、彩夏にとっても文鳥以来久しぶりだろ?気になるのは仕方無いよ」
「それもそうね」
「愛美と朝輝は触れ合いのときには力加減を教える意味でも、俺達のいる前でのみにしたほうがいいな。彩夏は文鳥で経験しているから問題無いだろうけど、逃げられると困るからな」
「そうしましょう」
母さんの話しだと、愛美と朝輝は今朝は起こす必要が無かったらしい。「いつまで続くかしら?」と聞かれたから「ま、長くて1週間位じゃない?すぐに落ち着くさ」と答えておいたよ。「次に早起きするようになるのは喋りだしたときかもね」とも言っといた。
「そういえば文鳥飼ってたね」
「雪華とも一緒に遊んだよな。少し早めの寿命で旅立っていったけどさ」
「あの子以来、文鳥は飼わないの?」
「俺の予定は無いよ。インコ同様、彩夏達が飼いたいと言った場合に残してあるからな」
「そっか」
今は俺の自室にいるんだけど、少しだけしんみりした空気になってしまった。雪華は俺の肩に頭を乗せて、お互い無言の時間になったし。
そんなしんみりした空気を振り払うように。
「さ、これから潮干狩りに行くから準備しようか」
「だな」
さ、九官鳥の世話は母さん達にお願いして俺達は潮干狩り場へと向かいますか!蔵持先生のためにだけどな!




