内宮家の台所事情(雪華side)
あたしは封筒を持ってダイニングテーブルでタブレットで動画を見ている凪咲さんに声をかける。
「凪咲さん、寛いでいるところすみません。これ、両親からこちらでお世話になる今月分のお金です」
そう言って封筒を渡す。
中身を確認して、5千円を抜き取る。
「これは、水道光熱費として受け取るわね。だから、雪華ちゃんもお風呂での体の手入れや洗濯なんかは遠慮しないで頂戴。いいわね」
「はい。ありがとうございます」
「残りは食費にするけど、いいかしら?」
「はい。あたし良く食べるので」
「広也。ちょとこっち来てくれる?」
何でひろ君呼んだのかな?彼は今、彩夏ちゃんとクイズ番組を見ている。
「ん?何?」
「これ、雪華ちゃんの今月の食費。これからは7人分だからしっかりね」
「ちょっと!2万入ってるけど?一日当たり約7百円だけど?」
何を驚いているのだろう?外食すれば一食分より少ない気がするけど。
「受け取りなさい。これは、あちらの親御さんと相談して決めた事。お昼のお弁当も含めて三食分作ることになるし、調味料だって僅かではあるけど今までより早く減るのよ?」
「それにこうゆうのはね、お金を渡したほうが生活しやすいの。自分も負担しているから食べたい物も言えるし、自分で作る事もできる、我儘が言いやすいの。だから広也も雪華ちゃんが食べたいものを作ってあげなさい」
「そういう事なら、わかったよ。余ったお金はどうする?」
「うちと同じように使っていいわよ。青梅で作るシロップやおやきとかだって雪華ちゃんも口にするんだから」
「わかった。なら米代もここからでいいね?多分今まで通りだと何キロか足りなくなるから、玄米か精米したのかはまだわからないけど、確実に買うことになるから」
「ええ、それでいいわ。雪華ちゃんの分で括らずにうちの食費と合わせて全員分の食費換算でいいわよ」
「そういうことなら、使わせてもらうね」
そう言うと引き出しから財布を取り出し、お金を入れた。同じところに戻したら洗面所に行った。彼の性格上、手を洗いに行ったのだろう。
「あの凪咲さん。なぜ、ひろ君に?」
「ああ。うちの食費はあの子が管理してるの。料理も私よりもするかもね」
ええっ。ひろ君がキッチンにいる事あるけど配膳の手伝いかと思っていた。
「じゃあ、日々の献立も?」
「だいたいはね。うち冷蔵庫が2台あるでしょ?大きいシルバー(約600L)のと黒い(約350L)の。大きいほうは少し期限まで日にちがあるのと、私でも自由に調理可能な食材。冷凍室は食材関係。黒いのは、広也が味付けとかの仕込み中で食卓に出すのが決まってるから勝手にイジるのは駄目なやつと期限が短いやつね。あと開封した飲み物。冷凍室はアイスと冷凍の取寄せ品、保冷剤なんかのちょっとしたもの」
何かこの数年ですごくなってない?あたしも凪咲さんの手伝い出来るように同居することにしたときから、お母さんに教えてもらってたけどさあ。ここまでじゃないよ?
漫画やアニメで良く見る、彼女が彼氏に料理を教えるときに不意に密着する嬉し恥ずかしのシーンが無いじゃないのよおぉぉぉ。
『雪華ちゃんてば両手で頭抱えてどうしたのかしら?』
その後、冷蔵庫を見せてもらったら保育園と小学校の給食予定表が扉に貼ってあった。
昼と夕飯が被らないようにするためと内容を参考にするためだって。
凄すぎて、すごいねしか言えないよ。うん。




