調理実習に向けた話し合い
潮干狩りの翌日、ハナイカ水槽を確認すると三匹共に元気で一安心。餌は念の為にいつでも好きな時に捕食出来るように大量に入れておく。生き餌だから水質が悪化するような事態にもならないから大丈夫だぞ。
今日の朝食の味噌汁はアサリ。今朝、使用した以外のアサリは殻ごと冷凍保存したよ。2週間位で食べる必要があるみたいだけど、今週中には食べきるから問題無いしな。
「は〜。貝のお味噌汁はやっぱり美味しいわね〜」
母さんのそんな言葉には同意だな。
「おにいちゃん。このカニさんはエビさんみたいに飼えないの?」
彩夏の言うカニさんとはアサリに寄生するピンノと呼ばれるカニだな。アサリと一緒に茹でられて哀れな姿となっている。
「アサリは砂の中に潜っていただろ?アサリの貝殻の中で生活するカニさんだから、観察は出来ないよ」
「そっかー」
残念そうではあるけど、カニは他にも色々と飼育しているので執着はしないみたいだな。
今週はテスト前週間という事もあり、登校すると科目書とにらめっこしているクラスメイトばかりの中で。
厳さん「はあ。来週はテストで、その次は体育祭か。気が重いぜ」
「今年も義姉さんの応援があるんだろ?」
厳さん「まあな。今年も恥ずか死ぬのは決まったようなもんだよ」
去年は出場種目すべてで恥ずか死んでいたからな。厳さんの義姉の花穂さんは高校までは合唱部に所属していたみたいで声が良く通るんだわ。
昌史は義妹ちゃんが同じ学校だから周囲の牽制も兼ねて一緒にいるかもしれないな。
鳳来「それじゃ、調理実習で作る料理を決めちゃいましょうか」
放課後となり、調理実習で作る料理の話し合いをする事に。
鳳来「ゆきちゃんが試食用に作ってきてくれた中から決めちゃおうか?」
厳さん「それでいいんじゃないか?」
まだ話し合い中で完全には決まってはいないんだけど、テストが終わる来週金曜日に一部の先生方に作る料理は何でもいいみたいだからな。今回の調理実習で作るのはフィンランド料理だし問題無いだろう。
「あたしからの提案いいかな?まずはカルヤランピーラッカ(Karjalanpiirakka)というカレリアパイとミートボールのリハプッラ。それにロヒケイット(Lohikeitto)と呼ばれるサーモンスープでどうかな?家庭料理感はかなり出せると思うし、意外と簡単に作れるのもポイントだよ」
雪華からの提案があった。俺は全部食べたことがあるけど、やっぱ出来たての温かいのは美味いから賛成だ。
「俺からも一言。カレリアパイはライ麦生地に牛乳粥を包んだ食べ物だからご飯感覚でいけるし、ミートボールは出来たての中から熱めの肉汁が出てくるのが最高だし、サーモンスープは今週の気温は少し肌寒い予報だからいいと思うんだよ。ただ、カレリアパイもサーモンスープも牛乳を使用するから牛乳が苦手な人がいたら申し訳無いけど」
笹嶋「どれも美味しそう」
烏野「そうですね」
明槻「内宮君さ、満腹感はどうなの?この日って2時限目が体育じゃん。正直言うとお腹が減ってると思うのよ」
「そこは、あたしから。カレリアパイは大きくすれば満腹感は得られるよ、中身はお米だからね。それと、サーモンスープはサーモンをメインにするか野菜をメインにするかでも変わってくるから、トータルで考えると定食寄りに出来るよ」
舞原「なるほどね」
鳳来「検索してみたけど、サーモンスープは定番中の定番みたいね」
その後も「マカロニグラタンが食べたーい」とかの意見も出たけど、雪華提案の三品で調理実習のメニューは決まるのだった。
話し合いが終わり、帰ろうとしたところで。
「内宮君、話し合いは終わりましたか?」
「おや、蔵持先生。どうかしましたか?」
「少しだけお話がありまして」
「空き教室に行きますか?」
「いえ、少しだけなので立ち話しで大丈夫ですよ。んんっ 今年はギンポは無いの?」
「あー。食べたいですか?」
「色々と魚介類を頂いておきながら言うのもアレですが、それはそれ、これはこれ、なのよ」
「テスト明けはアカニシ貝の予定なので、6月の梅雨入り前に行けたら行きますよ」
「本当に?では、お願いしますね」
そう言って、ルンルン気分?で立ち去る蔵持先生。まったく仕方の無いお人ですなあ。
〜最寄りのバス停からの帰宅中〜
「ひろ君?あたしには6月はバイト増やせとか言っときながら、自分はギンポの穴釣りとはどういう事なのよ」
「えーっ。蔵持先生から頼みまれるなんて思わなかったし、行く予定も無かったんだよ」
「でも、行くことになったんでしょ?あたしも行くからね」
「わかったって。ちゃんと連れて行くから、落ち着けって」
プンスコしている雪華を宥めながら、去年雪華が釣って今も元気な白変ギンポの結婚相手が見つかるかな?ペアにならない場合は縄張り争いで激しいケンカになるしなあと考えながら帰宅するのであった。




