烏野さんに新たな出会い
多澤先生から提案された内容は翌日に内宮班の全員に伝えておいた。テストは午前中で終わるので先生達が材料費を負担するから料理を作れば昼飯がタダになるぞってね。厳さんはその場で参加表明してくれたけど、他のみんなは一旦保留中。まあ先の話だしね、慌てる時間では無いさ。雪華にはその日の夜に了承を得てるよ。
そんな事位しか話題が無かった週末土曜に従兄弟と一緒に喫茶店へとやってきた。
「俺んとこは再来週がテスト期間で、それが終われば体育祭だよ。そっちは?」
「へぇ。今月体育祭なんだね。俺んとこは秋にやるんだよ、来月は文化祭があるみたい。テスト期間は同じだね」
「しっかし、真広もこっちに引っ越しかよ。何なんだろうね」
「どしたの?他にも誰か引っ越ししてきたの?」
「ああ。父さん側の従兄弟がここに帰ってきたんだよ」
「へえ。広也の親は両方兄弟がいるから、従兄弟も多いもんね」
「そうだけど、真広だって父方の従兄弟は俺を含めて多いじゃん。母方は一人だけみたいだけど」
「まあね。でも、年齢の近い仲が良い従兄弟っていうのはありがたいよ」
「確かにな。何だかんだ仲良しだもんな、俺らって」
雪華をバイト先へと送った帰り道で母方の従兄弟の鶴崎真広に出会ったのだ。初めて言うけど、俺の母さんの旧姓は鶴崎なんだよ。桃瀬さんの恋人の義斗?義斗の母さんも旧姓は鶴崎だよ。
「あれ?内宮君?」
「お?明槻さんに烏野さんじゃん。二人も昼飯?」
「うん。たまにはここで食べようってなったのよ。土曜限定ランチをさ」
「いいね。良ければ相席する?店員さんよろしいでしょうか?」
「はい。構いませんよ」
席へと案内途中だったみたいなので相席を提案してみると。
「いいの?会話の邪魔にならなければお願いしようかな。ね、眞代ちゃん」
「う、うん」
「真広、俺の隣に来いよ。二人はそちら側に座って」
「「ありがとう」」
俺の前には明槻さんで真広の前には烏野さんが座り、まずは注文を済ませる。そして、この場では全員を知っている俺が紹介をした。
「鶴崎君もあのミステリー小説のシリーズ好きなの?わたしも好きでテレビのドラマ版や劇場版も見てるのよ」
「そうなの?意外な人が犯人だったりするから面白いよね。最後にだけ登場した犯人の時は、何だよそれってなったけど読み返すと作中で名前だけは沢山出てたりするんだよね」
「そうなのよ!特にさ……」
烏野さんと真広はどうやら読む本のジャンルが同じみたいで盛り上がってるな。
「内宮君、相席提案してくれてありがとね」
「どしたよ、急に」
「眞代ちゃん、彼氏と別れたでしょ?納得のいく別れ方では無かったからさ、皆の前では平然を装っていたけど、やっぱ落ち込んでてさ。あんな楽しそうな顔を見たのは久しぶりだよ」
「そうなんだね。気晴らしになっているなら良かったよ」
明槻さんと烏野さんがランチを食べ終わったので店を出ることにする。俺達も追加注文したとはいえ、流石に長居をするのは喫茶店側に迷惑だからな。
「それじゃあ、わたし達は帰るね」
「あ、あの、烏野さん。嫌でなければ連絡先交換してもらえますか?もっと色々な話しをしたいので」
「う、うん。こちらこそ、よろしくお願いします」
烏野さんと真広が連絡先を交換したらお別れ。実は烏野さんの住むマンションと真広が引っ越ししてきたマンションは意外と近いんだよね。それは俺が言う事では無いと思うので黙っておこう。
「それじゃ広也、またね」
「おう。近場に引っ越ししてきたんなら遊べる時は遊ぼうぜ!それと、両親によろしく言っといてくれ」
「ははは。了解だ」
真広と別れて自宅に戻れば、ほっぺを少し膨らませた愛美と朝輝に出迎えられる。そういや、帰ったらブロック遊びしようって言ってから出かけたんだったわ。手洗いうがいをしたら二人の頭を撫でながら「ごめんごめん」と謝っておいたよ。
俺が不在の間は父さんが相手をしていたみたいだけど、俺と遊べないからハードモードでの相手になったらしくソファでぐったりとしているよ。すまんかった。
〜就寝前のいつもの時間〜
「明日は天気だったら潮干狩りだね」
「だな。今回は家族の潮干狩りに同行するやつだけどな」
「先生達のはテストが終わった週末に行くの?」
「おう。テスト勉強もちゃんとしてますよアピールで行かないからな」
「あはは。そういえば、そろそろ青梅の時期だよね。今年も梅シロップ作るの?」
「もちろん!キュウリの味噌汁同様、雪華は気に入ったもんな」
「ねぇ、青梅代出すから作る量増やさない?」
甘えた声でお願いしてくるけど。
「その場合、瓶の置き場は雪華の部屋になるぞ?」
「うーっ、考えさせて」
「考えるんかーい」
明日は潮干狩りの予定だ。今年は下処理が臭いツメタガイの捕獲はどうすっかな〜。




