連休明け
連休が終わり教室に行けば会話の内容は休みの予定から中間テストの話題となっている。だけど俺には確認しておきたい事があったので釣り倶楽部のメンバーとHR前に話しをする。
「今更の確認で申し訳ないけど、タイの調理大丈夫だったの?笹嶋さんと桃瀬さんは問題無いのは知っていたけど」
笹嶋さんの両親は調理系の仕事らしく、魚を捌くのに慣れているのを知っているし、魚種についての値段含めた知識があるのも最近知った。そんな笹嶋家と仲の良い桃瀬家は捌いてもらう事も可能だろうしね。
鳳来「うちは大丈夫だったよ。あれ以上の大きさは出刃包丁が無いから無理みたいだけどね。タイは刺身じゃなくて天ぷらで食べたんだけど美味しかったな。頭や骨もアラ汁にしたしね」
烏野「わたしの家は千奈津ちゃんのお母さんが捌いてから持ってきてくれたので問題ありませんでした。その他の魚は捌けるので大丈夫ですよ」
明槻「今、眞代ちゃんから報告があったように捌けるから大丈夫だよ」
「なるほどね。なら、今後もあの程度の魚を釣っても問題無さそうだね」
鳳来「今から言うのも何だけどさ、夏休みの水曜日は毎週じゃなくてもいいから釣りに行けないかな?バイト組は皆で釣りが出来るのは店休の水曜日だけだしさ」
「俺は構わないけど、烏野さんもいいの?その、彼氏とのデートの予定とかあると思うんだけど」
烏野「わたしは実は彼氏が遠方に引っ越ししたので破局したんです。遠距離は無理だからって言われて」
「ご、ごめん。知らなかったとはいえ配慮が足りなかった」
烏野「いえ、大丈夫です。遠距離になる程度で別れる選択をする位の薄い愛情しか持たない男だって知れましたからね。気にしないで下さい。なので、釣りには行けますよ」
「わかった」
烏野さんの様な素敵な人を遠距離になる程度で別れるなんてバカな男だ。手紙のやり取りのみが連絡手段の時代じゃ無いのによ。
明槻「内宮君?わたしには聞かないの?」
「だって明槻さんの場合、家族から推奨されてるじゃん。烏野さん家経由で親に知られたら『どうして行かなかったの?デートなんて他の日にしなさい!』って言われると思うよ?」
明槻「うーっ。本当に言われそうなセリフだよ。はい、わたしも行きます」
鳳来「決まりね。内宮もゆきちゃんも申し訳ないけどお願いね」
「わかったよ。笹嶋さんや他の皆にも一応声はかけるからね」
「「「うん」」」
明槻「別な意味で地獄の夏休みかもしれない」
そんな明槻さんのセリフはHRを告げるチャイムと同時に教室に入ってきた先生達の挨拶の声の中でもハッキリと聞こえてしまうのだった。
授業も終わった放課後に珍しく多澤先生に呼び出された。テスト前週間からテスト終了までの期間は職員室への入室は出来ないけど、今はまだ大丈夫なので声をかけてから入室する。
「多澤先生、お呼びでしょうか?」
「放課後にごめんなさいね、実は頼み事があるのよ。今度の調理実習の時に他の先生方の分も作ってもらえないかしら。昼食にしたいって要望があるのよ」
「まだ、作る料理決まってませんけど?」
「それでも構わないわ。安中先生が「内宮君の班の料理はすごく美味しいのよ」って熱弁しちゃって」
ふと、近くにいる安中先生を見れば片手を上げて舌をぺロッとお出しになった。あの先生?そんな先生と生徒のラブコメ作品のヒロインみたいな態度やめてくれませんかね?俺には雪華がいるんで主人公にはなれないっすよ?
「なら先生。俺からの提案なんですけど、テスト終わりの金曜の放課後に調理室の使用許可をお願いします。流石に授業中に俺の班の料理を他の先生方にも振る舞うというのは、よろしくないと思いますので」
「確かに。内申点稼ぎと思われる可能性もありますね」
「はい。クラスメイトだけで無く生徒全員の反感を買う可能性もあるので、材料費は先生達の負担で俺らは料理を作るだけで内申点とかの考慮はされないとかであれば検討します」
「そうですね。もう一度話し合ってみますね。今日のところは以上になります」
「わかりました。では、失礼します」
今日の雪華は夕方からバイトなので先に行っているから、教室には内宮班もいないので職員室から直接俺も帰ることにする。
今日の事はまだ決まったわけでは無いけれど明日にでも内宮班の皆に話しておこうかな。材料費先生持ちで調理したら、昼飯をタダで食べられるぞって言えば手伝ってくれるかなあ?




