カーリカーリュレート
春キャべツが旬の季節到来!三月の上〜中旬は出回り始めだから少しお高めだけど、下旬からはセールで安く販売される事もある。
そんな春キャべツがいつものスーパーで安く売られているので、丸ごと一個買う事にした。明日の土曜日はたけのこ掘りに行くから、ロールキャべツや餃子の具材になるし。そう思っていたら。
「ねえ、ひろ君。カーリカーリュレート(Kaalikääryleet)を作ってもいいかな?」
と、一緒に買い物に来ていた雪華に提案された。
雪華によると、カーリカーリュレートというのはフィンランドのロールキャべツみたいだ。ただ、日本のロールキャべツは煮込み料理なのに対して、カーリカーリュレートはオーブンを使った焼き料理との事。あとは、甘いのも特徴らしい。尚、現地の味を完全再現という訳では無く、俺ら家族の好みの味へとアレンジした料理にするみたいだ。詳しいレシピは知らないけど、日本では調達出来ない調味料とかもあるだろうしね。
年始の合同家族旅行の時に雪江さんから詳細を聞き、実際に作っている様子の動画を送ってもらいイメトレをしていたんだって。
「いいよ。じゃあ、今日の晩飯のおかずは雪華が担当で。他に必要な具材や調味料とかも買って帰ろうか」
「ありがと、ひろ君。実際に作るのは初めてだけど頑張るね」
両手を胸の位置でフンスする雪華が可愛い。
帰宅後、俺と雪華はキャべツの葉に具材を入れて巻く作業をしている。ロールキャべツなんだから当然だよな。昼飯後すぐに買い物に行って良かったぜ!ウチの場合、ロールキャべツや餃子とかのこういう作業は作る量が多いから時間がかかるから、気軽には出来ないしな。
結局キャべツは中心部の具材を巻くには葉が小さい部分しか残りませんでした。
「おにいちゃん。今日はロールキャべツなの?」
彩夏も春休みになり友達と遊んできて帰宅したら、ダイニングテーブルで作業中の俺達を見て声を弾ませる。
「おかえり。先に手洗いうがいしておいで。説明はそれからだよ」
「はーい」
トテトテと小走りで洗面所へと向かう彩夏。
「今日はね、雪華お姉ちゃんが変わったロールキャべツを作ってくれるんだって。オーブンを使うから、やけどをしないようにキッチンに入ったらダメだよ?」
「はーい」
焼くためのオーブンは250℃とかなりの高温での予熱中なので、手洗いうがいをしてきた彩夏にはリビングで説明する。
母さんが愛美と朝輝と一緒に帰宅して、妹弟三人はソファでテレビを見ている。
「雪華、何か手伝うことはあるか?」
「無いよ。あたしも焼き加減をたまに覗く程度だしさ」
現在オーブンでは150℃で片面づつロールキャべツを焼く作業となっている。
父さんも帰宅して晩飯の時間となり、いよいよ実食のお時間となりました。
「雪華。しょーじきに言ってもいい?」
「う、うん」
「すごく美味しいんだけどさ、これ、晩飯じゃなくて昼飯向きじゃない?」
俺の発言に両親も頷く。妹弟は「おいしー」と言って夢中で食べてるけどね。
「どういう事?」
「具の中身にごはんを入れただろ?それにシロップをかけていたから、甘めだしさ。時間のかかる料理みたいだから、朝食後すぐに作り始める必要あるけど昼飯が我が家ではべストだと思う」
「そっかー」
しょんぼりしてしまう雪華に胸が苦しくなる。だけど、今のうちに本当のことを伝えておく。
「とても美味しいわよ。だからまた作りましょ、ね?お昼ご飯に間に合うように、わたしも具材を巻くのを手伝うから」
「はい」
初めてという事もあり、おかわりが無いのを残念がる彩夏のように妹弟組には大好評なんだよね。雪華はというと「シロップをかけなければコンソメ味だしいけるかな?でもなあ」とブツブツとつぶやきながら食べている。
「雪華ごめんな?折角時間かけて作ってくれたのにヒドイ事言って」
「ううん。合わないものは合わないってハッキリ言ってくれたほうがいいよ。あたしも味付けで頼むこともあるんだしさ。それにこの先、夫婦として長く暮らしていくんだから」
「美味しかったのは事実だから」
「うん。凪咲さんとかいつもよりお漬け物食べていたから塩気が欲しくなったのは理解している。だから、内宮家に合うように改良するから期待してて」
「ああ。試食ならいくらでもするよ」
「お願いね。それとは別に慰めのキスして欲しいな?」
「わかったよ」
最初は短めに、次に少し長めの慰めのキスをする。雪華との時間が終わると。
「おにいちゃん、おねえちゃんとのお話し終わった〜?」
「終わったよ」
「なら、一緒にねよ〜」
「はいよ」
先日、俺から一緒に寝るのを誘った影響で甘えん坊モード中の彩夏と一緒に寝ることにする。
雪華はその後、改良を重ねて甘さと少しの塩気のある雪華流カーリカーリュレートを完成させて晩飯の食卓に並ぶ機会が増えるのだけど、それは少しだけ先の話。




