帰宅
入学式も無事終わり、現在帰宅中。
やはりというか、なんというか、帰るときに雪ちゃんのほうはカラオケやファミレスとかに誘われていたが、全部断っていた。その理由の中で「久しぶりに遠距離恋愛だった恋人と再会したから今日はごめんねー」などと言い放った為に男女問わず騒がれた。
彼女がちやほやされる理由はその容姿だろう。
曽祖母がフィンランド出身の方で、隔世遺伝したのか、濃く受け継いだのか、綺麗な銀髪なのだ。曽祖母の血縁関係以外は日本人なので、もちろん?黒髪も部分的に多少混じっているから全部が銀髪ではないけどね。
ちなみに瞳は黒よりの灰色なので、どこか不思議な雰囲気がある。
まあ、性格的にクラスカーストの陽キャ連中にはならないだろう。
そんな彼女とは物心がつく前からの幼馴染で、小学5年までは一緒にいたけど、6年に上がる春休みのタイミングで彼女の父親の転勤の影響で離れることになった。
だから、引っ越しする前に告白して恋人に。
その後もビデオ通話とメッセージやメールのやり取りで密に連絡して、無事に疎遠になる事を回避して現在に至るというわけだ。
「この後どうする?昼めし食べてからまた会う?」
「ん?このまま、ひろ君家に行くから平気だよ」
「そうなの?親は?」
「帰ったんじゃないかな。まだ、引っ越しの片付けもあるだろうし」
「そっか」
まあ確かに、ここまで一緒に帰宅してきたから今さらだけどバスも含めて方向がずっと同じだもんね。
目的地は俺の家なのはいいけど、雪ちゃんはどこに引っ越ししてきたのかな?
その後も色んな話で盛り上がる中、自宅に到着する。
「ただいまー」
「おじゃまします」
「お帰りー、昼はラーメンよ」
出迎えたのは母さんだ。キッチンからいいニオイもする。
先に雪ちゃんに洗面所を案内して、手洗いうがいを済ませてダイニングに行く。
「良く帰ってくるのがわかって準備してたね」
麺はまだ茹でてないみたいだけど。
「雪華ちゃんから連絡があったのよ。広也にもスマホ買ったんだし、連絡できるでしょ」
「そうだった、忘れてた」
俺ら家族もあの後引っ越ししたのは雪ちゃんも知ってるけど住所だけだもんなと思って深く考えていなかったや。
ルート検索して近所になったら連絡していたとは恐ろしい子!
「ひろ君、スマホ持ったんだ!連絡先交換しよ」
「悪い。どうやんの?」
「んもう。仕方ないんだから、貸して」
「お願いします」
遅れてると思われるかもだけど、今までスマホを所持していなかったからなあ。正直必要なかったし。
え?雪ちゃんとのやり取りはどうしてたのかって?家族共用のタブレットとノートパソコンで事足りてたし。
「ほい。できたよ」
「キートス」
「ふふ。olet tervetullut.」
おっと、思わずフィンランド語が。雪ちゃんが小学生の夏休みの宿題の課題にした事があって一緒に興味でたんだよね。
尤も俺の場合は単語のみだけどな。皆だって“ありがとう”を英単語の“サンキュー”って言う事あるだろ?それと同じさ。
さてと、麺も茹ではじめたし雪ちゃんには悪いけど部屋着に着替えさせてもらおうかな。
「雪ちゃん悪いけど着替えてくるね」
そうして二階の自室へと向かった。