ホワイトデー
今日はホワイトデー。
クラスで唯一無二の俺達おバカ組はバレンタインにスキー場でお知り合いになったおネエさん達と暑い夜を過ごしたみたいで、今日は気合いが入っている。自分達から他の女子に告白して成功したら、おネエさんと円満に別れる事が出来ると思い込んでいるらしい。
情報通の鳳来さんによると、俺達おバカ組の一人の父親にとっておネエさんの一人は会社の取引先の重役の息子みたいで自分の息子を献上したらしいのだ。そんで、そのお仲間達も一緒に…って事らしい。他クラスや他学年にも彼らの悪評は広まっているらしく、女子からの評価は最低なんだとか。なので、成功することは無いらしい。残念。
俺は内宮班の皆に、取り寄せした少しお高めなクッキーをバレンタインのお返しに渡した。登校前に準備していると、雪華が「うー」と唸り声をだしたけどこれには雪華と仲良くしてもらっている感謝の気持ちもあるから勘弁してくれ。
そんな朝のHR前の時間を過ごして、授業に突入する。個人的には早く二年の科目書を受け取り、予習課題の範囲を知りたいんだけどなあ。春休みは遊びで忙しいのよ?俺は。
そんな中、家庭科目で最後の授業で調理実習があるとの連絡があった。今回はスイーツを作るみたいで、これは卒業した三年含めて全学年共通で学年最後の調理実習はスイーツ作りと決まっているとのこと。雪華を含めたバイト組を除く内宮班女子から放課後に何を作るか話し合いをしたいと言われたがお断りした。今日はまだ保育園でお返しを渡すミッションが残されているからな。なので、話し合い出来るメンバーで複数の案を考えてもいいんじゃないかなと伝えて一旦帰宅する。
帰宅後に昨日作ってラッピングしたクッキーを持って保育園へ向かう。事前に担任と副担任の先生に女の子に手作りクッキーを渡したい事を伝えていたので、別室に愛美と朝輝と同じクラスの女の子のみ集められていた。
「先月はチョコレートありがとう。お返しにクッキー焼いてきたから食べてね」
園児の目線になるように立膝姿勢になり、クッキーを渡していく。愛美と朝輝は兄姉がいる影響もあり喋る機会が自宅でも多いので滑舌はいいほうだけど、中にはまだ少しだけ舌っ足らずな子もいて可愛い。クッキーを受け取ったら必ず抱きついてくるのは何でだろうね。俺が迎えに行くと保護者がいるにも関わらず俺の足にしがみつく女の子がいるんだけど、その子は別クラスなので後で渡すことにした。お迎え前に渡したので、保護者の方達からもお礼を言われ、アレルギー持ちの親御さんには去年同様感謝されたよ。
「おにーちゃんだ」
愛美と朝輝と一緒に保護者控え室にいると、最後に渡す女の子が来たのでクッキーを渡す。
「ありがとっ」
そう言って背中に抱きついてきた。すると、愛美と朝輝が「むう」と言ってほっぺを膨らませた。どうやら兄の背中は自分達のものだと主張したいらしい。
女の子とその子の母親にバイバイと手を振って保育園を後にする。帰りの道中で愛美と朝輝を交代でおんぶしながら帰宅することになったのは当然の流れだよな、と笑う。
就寝前は歯磨き後なので、晩飯を食べて片付けが終わったら一旦俺の部屋に行く。
「雪華これ、バレンタインのお返しのマカロン」
「ありがと。ねえ、最初の一個だけは口移しで食べさせて?お願い」
「わかった」
包装紙を雪華が丁寧に剥がして、マカロンを一個取り出して俺に渡してくる。
「愛してるよ、雪華。 んっ」
右手は雪華を支えるために背中に回したんだけど、雪華さんてば左手を掴んで自分のおムネに誘導したのですが?触らせたらそのまま軽く上から自分の手を添えてきましたけど?何故か磁石でくっついたみたいにおムネから手を退かす事が出来ません!
その様な状態が口移しで渡したマカロンを食べ終わるまで続きました。雪華の積極攻勢がパワーアップするのかと思うと戦慄するんだけど!とりあえず一個だけ食べて残りは後で食べるとの事なので、俺の部屋を出てリビングに向かう。
リビングでテレビを見ていた愛美を俺の足の間に座らせ、愛美の背中を俺のお腹に預けさせる。バックハグの体勢で愛美のお腹に両手を添える。座っていたソファから降ろした時は「おにいちゃん?」と困惑した声を出したけど、自分が好きな体勢になった事で今は喜んでいるよ。
何でこんな事をしているのかだって?兄モードになって落ち着くためだよ!俺だって健全な男なんだから、あんな事をされたらそれ以上雪華を求める欲求が出てしまうんだよ!
テレビ番組を見ながら、愛美の体温を感じていると兄モードになり、落ち着いた。最低二年は我慢しないといけない俺の気持ちも考えて欲しいよ、まったくもう。
就寝前にスマホを確認すると、鳳来さんから窓際オネエ組が玉砕したとの連絡が来ていた。
ところで、調理実習のスイーツ決めはどうなったんだろうね?




