家族旅行(一日目)
「それでは、全員揃ったようなので旅館へと向かいます。高速や途中の道の駅で小休憩はする予定ですが、お子様の車酔いやおトイレ等は遠慮なくお伝え下さい」
との、ありがたい言葉とともに旅館へと出発する。
長時間のドライブは愛美と朝輝は初めてなので少しだけお腹が空いた状態で乗せている。俺達含め現地に到着したら、本格的に昼飯にする予定だ。
結局は高速で二回休憩しただけでトラブル無く旅館へと到着する。
「母さん、ロビーが豪華でかなりの予算みたいだけどいいの?」
「まったく、この子は。心配しなくても大丈夫だから楽しみなさい」
なら、遠慮なく楽しみますか。愛美と朝輝は口を開けてポカンとしているし、彩夏はパンフレットを見ていて全員おとなしくしている。
さて、旅館の仲居さんに案内された部屋は俺達は温泉の内風呂付き客室で雪華の両親は内風呂はない普通の客室だった。両方共に畳部屋でべッドでは無く布団を敷いて寝るかたちだ。
部屋に荷物を置き、フロントに部屋のカギを預けた両家は遅めの昼飯を食べるために外出する。車内でも軽く見ていたけど旅館の外は温泉街といった雰囲気だ。この辺の宿泊施設の浴衣を着て散策する人達もいる。
俺達が入店したのは一見普通のレストラン。ただ人数が多いから一緒には食事できないので、一旦別々に食事する。雪華は積もる話もあると思うから両親と一緒。
「晩飯の量ってどの位なのかな?少し抑えたほうがいいの?」
「一応は追加の別注料理は頼んであるけれど。足りない場合は旅館内にも売店があったから何か買いましょ」
「そんじゃ俺は旅館の人おすすめの特製味噌ラーメンの大盛りと餃子とライスのセットで。愛美と朝輝は俺達のを分けてあげればいいだろ、晩飯が食べられなくなると可哀想だし」
「そうね。あやちゃんは夜ご飯が食べられるように食べなさいね。残しても、お兄ちゃんが食べてくれるから」
「うん!」
「そうだぞ。旅館の美味しいお食事があるからな」
「うん!楽しみだね」
温泉街に来てまで味噌ラーメンかよ、と思われるかもしれないけれど、この食事処は地元の手作り味噌を何種類かブレンドした、こだわりの味らしいのだ。そして、到着したラーメンは中太麺でスープに絡み美味い!ごはんにも良く合うのでスープまで完飲してしまったぜ。
会計を済ませて店外に出る。
「ひろ君は何頼んだの?」
「仲居さんおすすめの味噌ラーメン。すげえ美味くてスープも完飲してしまったよ」
「そうなの!?あたしは朴葉焼き頼んじゃったよ。失敗した〜」
「まあまあ。明日食べればいいじゃん」
「そうだね。明日も泊まるんだもんね」
「おうよ。美味いもんをいっぱい食べようぜ!」
「おー!」
そう言いつつ、自然と腕を組んでくる雪華を何とも言えない複雑な顔で見ている雪華の父とそれを見て笑っている雪華の母に俺が気付くことはなかった。
遅めの昼飯から戻って現在は広めの内宮家側の部屋に雪華の両親も一緒に寛ぎ中。愛美と朝輝は移動の疲れもあるのかお昼寝中で彩夏は部屋を探索中だ。
「やっぱ、蒸したての温泉まんじゅうは美味いな。この温泉玉子の塩気とのバランスが最高だよ」
「本当だね。この緑茶も美味しいね、ここの売店で茶葉売ってないかな」
雪華と二人でお土産屋さんで購入してきたのを食べて感想を言いあっていると。
「広也君も雪華もそんなに食べて晩ご飯は入るのかい?」
雪華の父さんが心配そうに聞いてくるけど。
「大丈夫ですよ。こんなの軽すぎるおやつですから」
「そうだよお父さん。晩ご飯まで時間あるし、余裕だよ!」
そんな返答に苦笑いしている。
俺と雪華と彩夏はトランプで盛り上がり、愛美と朝輝はテレビに夢中。俺の両親と雪華の両親が話しで盛り上がる中、食事の時間となった。
部屋食にするといくら広くても雪華の両親とは別々になることを伝えられていたらしく、広間での食事となった。広間へと着くと食事の準備がしてあり。
「おお。陶板焼きがあるぞ」
固形燃料タイプのコンロが二つあり、一つが別注料理の牛のステーキみたいだ。猪肉と迷ったそうで、明日は猪肉を提供する店に行ってみるらしい。
俺達が座布団に座ると仲居さんが固形燃料に点火してくれたので焼き上がりを待つ間に野菜ときのこの天ぷらとかの他の料理を食べる。座卓の近くには、おひつがありご飯のおかわりは自分達でするんだけど陶板焼きを食べる時点でご飯が足りなくなり、雪華の両親のおひつも完食してしまった。
内風呂のある部屋なので他人に気兼ねする事なく風呂に入れるのはいいよね。母さんは彩夏と一緒に入り、俺と父さんが愛美と朝輝と一緒に入る。その後に石嶺家の皆も俺らの内風呂に入浴する。雪華は流石に両親もいるし、父さんと一緒に入っていたので風呂場に突撃してくる事は無くて安心した。
風呂上がりには売店で購入したアイスを食べてから寝ることにする。雪華は両親と一緒の部屋なので旅館内とはいえ部屋まで送っていく。
部屋へと戻り、内側からカギを閉めて布団の中に入る。両親はもう少しだけ起きているそうだ。
夢の世界に行く直前に彩夏が俺の布団の中に入ってきたので、そのまま一緒に寝ることにした。
明日も楽しみだぜ。




