鍋パーティ(後編)
乾杯をした後は各班で自由に鍋をしてもらう。一応、肉はすき焼きで魚介類は水炊きにしてもらっている。野菜やきのこ類はどちらでも好きなほうで楽しんでくれればいい。
俺はというと。
「先生方、こちら今日の魚で作った刺身になります。時計回りでウツボのたたき、ブダイ、カワハギになります。カワハギのところにある白い塊は湯通しした肝になるので、肝醤油にして食べてみて下さい」
蔵持先生「カワハギはウマヅラですか?」
「いえ、本物です。インチキはしませんよ。ウマヅラなら正直に言いますって」
蔵持先生「メジナの刺身は無しですか」
「グレしゃぶがあるのでヤメておきました。鮮度は問題無いので刺身としてもいけますよ」
蔵持先生「わかりました。鍋の代金も払いましょう」
「「え?」」
安中先生「どういう事ですか?蔵持先生」
蔵持先生「魚の種類だけでいえば、高級料亭で食べるお鍋ですよ、これ」
鍋と俺の顔を交互に見る先生方。ワイワイガヤガヤしながら鍋の具材を入れていた皆も静かになっちまった。
「魚の代金は不要ですよ。自分で釣ってきたものですから。どうしても、と言うなら往復の交通費をお願いします」
蔵持先生「わかりました。では、交通費は払いますね」
感謝の意味もあるから不要だけどね。受け取っておいたほうがいい場面もあると母さんが言ってたしな。
自分の席に戻る途中で。
舞原「内宮君さ、仮に購入した場合の一番高い魚はどれになるの?」
「カワハギだね、二番目はメジナ。ブダイとウツボはそこまで高くは無いけど、鍋物で提供される場合はそこそこの金額はするかな」
「「「へえ〜」」」
自分の席へと戻り、俺も鍋を堪能する。すき焼きの肉をお高めにするなら卵もお高めにしちゃおうとの少しハイになった影響で卵を購入したからウマイぜ。俺らのところの野菜は水炊きに入っているから出汁の旨みを吸っているしな。あ、ネギはすき焼き側となっております。
鍋の具材は順調に俺らの腹の中へと消えていき、ご飯もおかわりをして食べ進めて〆の段階へと突入する。そう!うどんの時間だ。普通ならすき焼き側にするか水炊き側にするか悩むところだけれど俺は二人前を購入しているので、両方可能なのだ!わはははは。
という事でキッチンを見ると誰もいないので作業をすることに。今日は冷蔵のゆで麺タイプを購入しているから、熱湯を準備してうどんを投入。軽くかき混ぜたらザルに上げて蛇口のお湯で軽くヌメリを取り、水気を切って自分の席へ戻る。戻る前に雪華が来たので鍋のお湯はそのままにしておいた。俺だけが使ったんじゃ、もったいないからね。そこは雪華もわかっているし。
「では、俺は一足先に〆のうどんにさせてもらうぜ」
家族との食卓では無いので一言断りを言ってから席近くのスぺースにうどんを投入。菜箸で軽く馴染ませたら器に移して食べる。
厳さん「俺も、うどんにするかな。内宮みたく茹でる必要あるか?」
「三人がうどんにするならコンロに火を付けて馴染ませれば平気だよ。ただ、蛇口で軽くお湯洗いしてヌメリは取ったほうがいいぞ」
「なるほどな。なら二人を待つか」
昌史「いや。俺は平気だぞ」
新山「ぼくも大丈夫です」
「なら、三人で洗ってこいよ。コンロに火を付けておくからさ」
厳さん「なら行ってくるわ」
女子組のほうも鍋の具材を食べ終えて、うどんの段階になっているみたいだな。炊飯器の中身を確認すると綺麗に無くなっていた。
「残ってるの?」
鳳来さんも気になるらしい。
「ご覧のとおり空っぽ。見た感じ全員うどんも食べるみたいだし、一升じゃ足りなかったかも?」
「うちの班は言葉少なで鍋を食べてたなあ。空気が悪いとかじゃなくて、カニを食べる時は無言になるみたいな感じ?美味しくて夢中だったよ」
「それは何となく感じてた。ガヤガヤしてなかったもんね。ハゼパの時に似てるかも」
「そう!それよ」
鍋の宴も終わり、今は全員で手分けして後片付け中。「食後まったりするのは終わらせてからにしようよ。億劫になるからさ」と誰かの言葉に皆が賛同した形。この辺りが内宮班のいいところだよね。
食器とかの洗い物は棚に戻さずにキッチン近くのテーブルにまとめて置いておき、カセットコンロはガス缶をはずして表面を軽く拭いて畳部屋の座卓にまとめて置いたら片付け完了。
食事時間は長めだったけれど、食べ始めたのが早かったので時間には余裕がある。と、ここで。
「茜ちゃんとぼくの親から差し入れがあります。アイスなんですけど、食べられる人はどうぞ。無理な場合は持ち帰って下さい」
とのアナウンス。結論としては先生も含めた全員が食べましたとさ。
食後の片付けとアイスを食べ終えて、皆でトランプやらゲームなんかをして過ごし、お開きの時間になった。今回もハゼパ同様に雪華以外の女子組は親御さん達が迎えに来てくれたので安心する。そして皆、口々に「良いお年を〜」と言って別れる。
俺はここを借りてくれた多澤先生と一緒に忘れ物や不始末が無いか最終確認をして、先生達と一緒に部屋を出る。そして、別れ際に。
「先生、魚ときのこと野菜の天ぷらです。だいたい三人分入っているので、飲み直すおつまみにして下さい」
多澤先生「わざわざありがとう。ありがたく頂くわ」
「では、失礼します。良いお年を」
雪華「先生。良いお年を」
「「「良いお年を」」」
先生達と別れ、バスに乗り帰宅する。彩夏は起きていたけれど、愛美と朝輝は眠っていた。
明日の朝は、ハゼパの時みたく俺の布団に潜りこんでいるのだろうか?と思いつつ、内宮班今年最後のイべントは終了したのだった。




