鍋パーティ(前編)
今日は内宮班のパーティ当日だ。とはいえ、集合は昼過ぎなので朝食後は雪華と一緒にダイニングテーブルで自宅課題をすることに。折角なので彩夏も誘って三人でお勉強。
彩夏の宿題は夏休みとは違い少しだけ。俺がいない時も少しづつ進めていたらしく、終わりが見えていた。それと、わからない部分は飛ばしていたので教えてあげる。
俺と雪華の課題もそれほど多くは無い。三学期は中間期末テストが無い代わりに2月に学年末テストがあるので、それに向けて復習しとけみたいな課題だけどな。何度も言うようだけど、俺達が通うのは進学校では無いので冬休み中も勉強机から離れられないなんて事は無い。三年になれば、進学クラスがあるみたいだけどね。
彩夏の宿題を教えつつ、課題を進めて時間は昼飯の時間になった。父さんは仕事だし、愛美と朝輝は保育園なので昼飯は4人だけ。彩夏に何が食べたいか聞くと“焼きそば”との事なので、お好み焼き風も加えた焼きそばにする。
食後の片付けとひと休みをしたら雪華と一緒に出かけることにする。外は寒いけど保冷バックに食材は入れてあるし、赤ねぎも持った。
「それじゃ母さん行ってくるね」
「凪咲さん、行ってきます」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
「行ってらっしゃ〜い」
彩夏にも見送られて玄関を出る。しばらくの間、彩夏は友達とは遊べないらしい。年末年始の旅行や大掃除で家で遊ばれるのが嫌とかだろうな。彩夏にはそれとなく外で遊んで風邪を引いたらダメと伝えてあるしな。
皆と合流するのは高校の校門前。ここで多澤先生に連絡して、レンタル部屋の場所とカギを受け取る。
「多澤先生、忙しい中抜けてもらってすみません」
「平気ですよ。今回は鍋パーティとの事なので、前回のキッチンよりも広い部屋を確保しておきました。カセットコンロもあるので確認しておいて下さい」
「わかりました。先生達の合流は何時頃になりますか」
「17時〜18時頃ですね」
「わかりました」
職員室へと向かう多澤先生を見送っていると、続々と内宮班の皆が集まり、全員集合したので。
「じゃあ、まずは部屋に行こうか」
ゾロゾロと移動を開始する。
部屋は前回と同じ建物。ただ、フロアが違ったけどね。
部屋の内部は前回同様、広めのキッチンに宴会場のような畳の部屋だった。確かに鍋ならこちらのほうが食べやすいな、と一人で納得していると。
「へえ〜。レンタルキッチンてこんな感じなんだ」
「前回はテーブルだったよ。料理教室みたいな雰囲気があったし」
「確かに、そんな感じだった」
初めての舞原さんに説明しているみたいだな。そういう俺達も二回目なのにね。そんな事を思いつつクスッとしながら冷蔵庫に持参した魚を入れていると。
「内宮自慢の魚を見せてよ」
と鳳来さんがやって来た。昨日の話しを聞いて興味があったのだろう。
「いいぞ。まずはこれがブダイだな」
そう言って説明を始めると、何だ何だ、と皆が集まって来るので説明が楽しくなってきた。
「最後にこれが、とっておきのウツボだ!」
そう言って取り出したのは一応捌いてきて切り身とかにしてあるウツボ。すると。
「ウツボってニョロっとしたアレ?食べても平気なの?」
疑問を口にしたのは舞原さん。
「ウナギだってニョロっとしているだろ?ウツボは鶏肉に似た味だし、食べず嫌いはもったいない美味さだよ。少しだけ食べてみて無理そうならヤメてもいいからさ、出汁だけでも十分美味いから。これから試食で“たたき”を作るよ」
こんな事もあろうかと準備しておいたのだ。
切り身をフライパンで軽く焦げ目が付くくらい焼いて、ひと口サイズに切り分けて小皿に乗せたら皆に配る。
「本当に鶏肉っぽい」
「あ、美味しい」
とかの声が聞こえてくる。厳さんと昌史もごはんが欲しくなると言っているな。
「こんな味だけど、無理な人いる?正直に言って欲しい」
そう言うもみんなの意見は〈大丈夫〉みたいだな。
「それじゃ、先に買い物に行きましょ。のんびりワイワイするのは買い物終わらせてからのほうが楽だしさ」
鳳来さんの意見にみんなが賛成でスーパーに向かう。
再びゾロゾロとスーパーに移動して、とりあえず野菜ときのこ類を買い物カゴに入れる。厳さんと昌史が買い物カゴを乗せたカートで女子の後を付いている形だ。
「すき焼きのお肉はどうする?」
「この国産牛の肩ロース肉はどうかしら?お母さんがすき焼きなら肩ロースがいいわよって言ってたのよ」
「そうなの?値段もプチ贅沢向けだね」
「じゃあ、この3〜4人前を男子もいるから5パック買おうか」
「あたし、鍋に貝入れたいな」
「魚は内宮君のがあるからいらないしね。エビは?」
「すき焼きの肉もあるし、いらないんじゃない?ハマグリは高いから、この冷凍ホタテでいいんじゃない?徳用だから一袋で十分だしさ」
「そうしよう」
「すき焼きには豆腐」
「お鍋にはしらたき」
「「〆のうどんははずせないよね〜」」
「お茶と紅茶はティーパックで、ジュース類はぺットボトルのでかいやつでいいよね」
「だね」
「お菓子類は小さめでも量が多いのを選んでいこうか?」
「でも、お鍋が中心だから軽く食べる程度じゃないの?お鍋が食べられなくなったら本末転倒だよ」
「そうだね」
俺が野菜ときのこ類を選んでいる間に各所では様々なやり取りが行われていた。
会計の時に利用できるポイントカードを持っている俺が一旦全額支払い、ポイントを付けさせてもらった。12人で割るけど一人の負担額はそれなりの金額になってしまった。一応、想定内の金額だから問題は無いだろう。
会計はセルフレジだし、会計済の商品は流れ作業で袋詰め用の作業台に持っていっているし、レジも空いているから他のお客の迷惑にはなっていないからな。
男子組が重い物を中心に持って部屋に帰ってくる。先生達の到着まで時間はあるし、のんびり寛いでいますかね。




