カレイ釣りと支社長の来訪
桃瀬さんと義斗とのダブルデートの翌週の土曜に俺と雪華は砂浜へとやってきた。
テストの返却も終わり、いつも通りに中の上をキープして何の憂いも無く冬休みを迎える事が出来る。何せ週明けの月曜から数日学校に通えば冬休みになるからな。まあ、冬休みになる日はクリスマスイブなので雪華達バイト組は少し忙しいかもしれないけどな。
今日の狙いはカレイだ。内宮班のパーティに出す魚の見極めも含まれている。今回は鍋パだからな、ウツボは確定だけどメジナにするかカレイにするか悩んでいるのだ。
鍋にカレイ?と思われるかもしれないけれど、カレイは煮付けにするだろ?極論や暴論になるかもだけれど、煮付けで美味い白身魚は鍋でも美味いんだよ。
まずはシロギスの時のように遠投をしてから竿置きに立てかけて様子を見る。アタリが無ければ5〜10分置きにリールを巻いてを繰り返す。投げる場所は雪華が投げた所とは違う場所を狙っている。例えば雪華の投げた場所を中とした場合、俺はそれよりも遠か近といった具合だ。まあ、雪華は中か近が多いから俺は遠担当かな。
今回のエサは青イソメ、釣れずに投げるのを繰り返していると弱ってくるので交換が必要になるから、エサ代の為にも早めに釣れて欲しいと願う。
キャンプ用品売場にあるものより小さな折り畳みイスに座り、保温袋に入れたぺットボトルの飲み物や手を汚さずに食べられるお菓子を食べながら、雪華と雑談しつつアタリを待つ。
そうして最初に釣れたのは。
「雪華、シタビラメが釣れたぞ」
「おー。煮付けで食べる?」
「んー。ムニエルも美味そうだよな」
「じゃあ、数を釣らなきゃだね」
「そこが問題だよなあ」
「だねー」
その後も釣りを続けるが。
「ひろ君。小鯛が釣れた」
「あー。マダイの幼魚か、でもサイズ的にはいい感じだな」
「今日の釣りは安定しないね。肝心のカレイは二匹だけだし」
「だな。そろそろ納竿すっか、俺のを先に片付けるから最後一投していいぞ」
「はーい」
まずは俺のを片付ける。そして、投げたばかりとは違う雪華のも片付ける。俺らの周囲にゴミが無いのを確認したら。
「雪華、残念だけど終わろう。一応ゆっくり目に巻いてきてくれ」
「うん」
残念ながら釣れずに終了する。五目釣りとしては楽しかったけど、カレイ釣りとしては駄目だな、パーティの全員分を釣るのは難しいからメジナにしておこう。そんなことを考えながら片付けを終える。
「そんじゃ、帰りますか」
「うん!」
帰宅して、釣ってきた魚の下処理をしていると玄関チャイムが鳴り母さんが対応に向かった。
「あなた。支社長さんがお見えよ」
「何かあったかな?」
父さんが向かって少ししたら。
「広也に用事だって」
「また?」
何だろう、と父さんと一緒に玄関に向かう。
「お久しぶりです」
「久しぶりだね。魚は元気かな?」
「はい。変わらずに三匹とも元気にしています」
「そうか、そうか。実は今日も持ってきたのだが、いるかね?」
「本当ですか?ありがたく頂戴します!」
「こら!広也」
「まあ、まあ」
「では、こちらをどうぞ。前回と同様、このまま差し上げますので」
「毎回すみません。ありがとうございます」
「それと、内宮君にはこれを」
「今回も立派ですね。よろしいのですか?」
「もちろんだとも。では、今年も残り少ないけれど最後までよろしく頼むよ」
「はい」
「では、失礼いたします」
「「お気をつけて」」
今日は父さんと一緒に見送る。そして、ダイニングテーブルに座っているであろう雪華に声をかける。
「雪華ごめーん。玄関のカギ閉めてくれるかー」
「はーい」
トタトタと来た雪華に玄関のカギを閉めてもらい、とりあえず貰った発泡スチロール製のボックスを飼育部屋に置きに行く。
そして、キッチンに行くと。
「広也、これはヒラメかな?」
「ヒラメだね。俺らが釣ってきたのは明日にして、ヒラメの刺身にする?」
「そうしましょ。血抜きや内蔵も取り除かれているから美味しいわよ、きっと」
と、いう事で今日は急遽ヒラメの刺身に決定。骨の部位は今から出汁を取ると遅くなるので明日にする。ヒラメやカレイの場合は五枚おろしになる。念の為にアニサキスライトで調べて寄生虫がいない事を確認して刺身にする。やっぱヒラメの刺身は美味いね!少ししか食べられないけれど、えんがわもコリコリして最高だしさ。
生かしたまま貰った魚は前回同様、赤っぽい魚だった。ヒラメ釣りから考えると多分ハナダイの仲間だろう。今回は五匹なのでハーレムの可能性あり、寝る時間まで慎重に水合わせをしてから水槽に導入する。今回もこのグループのみで飼育するんだけど、海水魚水槽がかなり増えてしまったので何かしらの対策をしないといけないな。
雪華は自分達が釣ったのと支社長に貰ったヒラメを比べて少し落ち込んでしまったけれど、相手は船釣りなんだから比べたら駄目。楽しく釣りしたのは間違いないんだからさ、そんな風に慰めてチュッチュしておいた。




