ダブルデート
雪華の誕生日も終わり、テスト期間も終了した。雪華のバイト先の洋菓子店もクリスマスケーキの予約受け付けを終了。あとは冬休みを待つばかりの週末にデートをする事になっている。桃瀬さんと義斗の付き添いデートだけどね。
陽翔と笹嶋さんは文化祭の後に二人だけでデートをしたらしい。陽翔曰く親密度は上がったと思うとの事なので、よきよき。そのまま愛を育んでくれ。
俺と雪華と桃瀬さんは最寄り駅で待ち合わせをしてから電車に乗り、目的地のある駅へと向かう。
今日のデートプランは義斗と合流したらまずは昼飯、その後に開催中の全国物産展を見て回る予定だ。デートで物産展巡りかよ、と思われるかもしれないけれど二人は農園を経営している家庭育ちだから、あまり旅行には行けていないらしい。なので、物産展巡りはプチ旅行気分を味わえるとのことだ。共感できる部分があるというのはいいと思うんだよね。
文化祭の時に顔合わせは済んでいるし、連絡先を交換してやり取りしているとはいえ実際に会うのに多少緊張気味の桃瀬さんと三人で雑談をしていると。
「みんな、お待たせー」
と義斗が来たので早速、物産展が開催中の建物にあるレストランフロアへと向かう。
フロア案内板の前で何を食べるか、あーだのこーだの言った後に向かったのは和食系の店。和食系と言っても洋食メニューもあるしね。
テーブル席では無く座敷席を希望した桃瀬さんに合わせて座敷席へと案内してもらう。
まずはタッチパネル式端末で注文してからドリンクバーでそれぞれ飲み物を持ってきた後に。
「それじゃ、ひとまずカンパーイ」
「「「カンパーイ」」」
と軽く飲み物の入ったグラスを持ち上げる。
「義斗はテストのほうはどうだったんだ?」
「返却されたけど問題無いよ。逆に赤点あった場合は怒られるよ、クリスマスに向けて1回目の繁忙期中だからさ」
「確かにな」
「ひろ君。1回目、というのは?」
「まずはクリスマスケーキに使用する為だよ。それで次はイチゴ狩りの観光関係だな」
「あー。なるほどね」
「イチゴ狩りは予約制なの?」
桃瀬さんの質問に。
「団体さんは予約制だけど、家族連れは当日平気だよ。ただ、広也んとこみたいに子供が多い場合は予約欲しいけどねー」
「それを言うなら義斗んとこもだろ!子沢山な家系なんだから」
「だよねー」
と二人で笑いあう。
注文していたのが届いたので。
「「「「いただきまーす」」」」
と食べ始める。一応義斗の食欲を桃瀬さんに伝えておく。
「桃瀬さん。見ての通り義斗は結構食欲旺盛なんだ。これは俺らの母方の家系全員に言えることなんだけれどね。ただ、食い尽くしとかの行儀の悪い行動はしないから安心して」
「そうなんだね。内宮君が良く食べるのも同じ理由なの?」
「そうだね。母さんの腹ペコ遺伝子の影響だね」
「雪華ちゃんの家もなの?」
「雪華の場合は特殊なんだよ」
「へー」
俺の口からはこれ以上は言えない。雪華は知っているのか不明だけれど、雪華の食欲には俺の母さんが関係しているのだ。
「やっぱり寒い時期には、お鍋だねー」
自分のを食べ終えた義斗が思わず、といった感じで言う。
「そうだね。美味しいよね」
「「ねー」」
お。義斗と桃瀬さんがお互い共感しあっているではないか!
和やかな雰囲気で食事は終了。食後のデザートを堪能した俺達は店を出て、物産展の会場へと向かう。
「そんじゃ、ブラブラしながら見て回りますか。桃瀬さんはどうする?義斗と二人で見たいなら別行動にするけど」
「少し離れた位置で付いて来てくれる?二人だけで居るのはまだ慣れないし。義斗君ごめんね」
「気にしないでいいよ。気持ちはわかるから」
「ありがと。嫌じゃなければさ、手を繋がない?ほ、ほら人が多いしさ」
「う、うん」
ぎこちないながらも手を繋いで歩き出す二人の後を俺と雪華も恋人繋ぎをして付いていく。
会話の内容までは聞こえてこないけど、笑みを浮かべながら見て回っているので順調そうだ。
俺と雪華も、ちょっとした小物や漬物、定番お土産のお菓子なんかを買いながら楽しんだ。
日暮れが早いので少し明るい内にデートは終了。その辺は義斗も理解しているので大丈夫。
義斗とは待ち合わせたこの駅で別れ、俺達三人は一緒に自宅のある最寄り駅へと戻る。桃瀬さんに義斗の印象を聞くと好印象との事でホッとする。
最寄り駅に着いた俺達は駅で別れて、それぞれ帰宅する。桃瀬さんも義斗も家に着いたとのメッセージが来てこの日のデートは無事に終了する。
〜桃瀬side〜
今日は文化祭の時に内宮君から紹介された義斗君とのデートだ。文化祭の時に連絡先を交換して毎日少しは連絡する仲だけど、本格的なデートは今日が初めてだから緊張する。
目的地に着いてまずはお昼ご飯にするから店を選ぶ。和食系の店になったから、座敷席を希望させてもらった。家ではテーブルじゃないから慣れているのもあるからさ。
義斗君は意外と食べる人だった。内宮君曰く、母方の家系は食べる人が多いらしい。ただ、食い尽くしみたいな行儀の悪いことはしないから安心してとも言われた。確かに量は食べるけど、他の人のを欲しがったりしないし、食べ方もキレイだった。一応、二人きりの場合とかも見極めようとは思ったけどね。
目的の物産展では義斗君が小物を買ってくれたし、家族のお土産にってお菓子も買ってくれた。
家に着いたのを全員に報告した後に、義斗君から正式にお付き合いして欲しいと電話が来たので「はい」と返事をする。
こうして、わたしも彼氏が出来た。見てなさいよ佳奈!わたし達だってラブラブになってみせるんだから!




